婚約者の命令により魔法で醜くなっていた私は、婚約破棄を言い渡されたので魔法を解きました

第５話

　婚約破棄を言い渡された翌日――私は馬車に乗って、学園に向かっている。

　馬車の中で１人だけど、屋敷を出る前にお父様とお母様は私を心配していた。

「バハムス様が何か言ってきそうだけど、結果を出せば問題ないはず」

　家族に心配されたことを思い返して、私は呟く。

　私が魔法を独自に作成していたことが判明したり、見た目で目立ちそうでもある。

　それよりも――私としては、学園に１人だけいる友人の反応が気になっていた。

「ジトア様は、今の私を見てどう思うのだろう……」

　カデアノ公爵家の令息ジトアは、私の醜い見た目を気にせず声をかけてくれた人だった。

　ジトアは魔法の実力がとてつもなくて、陛下に慕われている優秀な魔法使いと聞いている。

　私は魔法で醜くなっていたこともあって、学園内での友人はジトアだけだった。

　ジトアが私のような見た目の女性が好きだと、周囲から噂になっていることは知っている。

　確かにそれ以外に理由が思いつかず、それが本当ならジトアは魔法を解いた私と関わらなくなるかもしれない。

　それが不安で――馬車が、学園に到着していた。

■◇■◇■◇■◇■

　学園に到着して教室に向かう間、私は注目されていた。

　生徒達は私の見た目に驚いているようで、教室内でも騒ぎになる。

　そして――私の席にやって来たジトアを見て、私は不安になってしまう。

　ジトアは短い茶髪の穏やかそうな美少年で、表情はいつも通りだ。

　何を言われてしまうのだろうと考えていると――ジトアが、私を眺めて話す。

「ルーミエは、遂に魔法を解いたのか」

「……えっと、ジトア様は知っていたのですか？」

　ジトアの発言に驚き、私は尋ねる。

　冷静に頷くジトアだけど、どうして知ることができたのかわからない。

「知っていた。理由がありそうだから何も聞かなかったが、見た目を魔法で変えて魔法が使えるルーミエは凄いと思っている！」

　ジトアが断言して、私は納得する。

　魔法や魔力のことばかり考えているジトアは、私の見た目より魔法に興味を持っていたようだ。

　今でも私の見た目に変化については何も言わず、魔法の話しかしていない。

　そんなジトアを眺めて――いつも通り話してくれることに、私は安堵していた。