『よるのおむすびや』
リレーでビリだった夜,ぼくは,家からひとつ角を曲がった先に,小さな店を見つける。夜だけひらく,名前のない,おむすび屋。こんぶ,うめぼし,おかか──店のおばあさんが握るおむすびは,どれも,10個の夜をぼくに連れてくる。うまく変われない自分を,だれかと比べてしまう自分を,店の灯りは急がせない。「急がないと,出ないものがある」。昆布から出汁が出るように,ぼくの中の何かも,ゆっくり変わっていく。
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