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~就寝~
境界線
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「… … … … 」
駄目だ…
全然、眠れない…。
「… … … 」
私は拓海に背を向けたまま…ベッドの真ん中に少しの距離を保ったまま…何度も眠ろうと目を閉じる…。
だけど、全然眠りにつけない…
「… はあ… 」…ごろんと静かに、仰向けになる…。
いつもなら…
いつものように、この家に一人なら…
こんな風に眠れない夜、私は直ぐに起き出し…無理に眠るのを諦めて温かいミルクを用意する…。
ホットミルクを飲みながらぼうっとソファに座っていれば、そのうち眠気を催して…再びベッドに戻るのが常だ…。
いっそ、起きようか…
だけど今、再びベッドから身体を起こすことで…拓海が起きてしまっても困る…。
私はもう一度、目を閉じる…。
「… 眠れないのか … ?」
横から拓海の小さな声がして、ハッとした…。
拓海が起きていた…
最初から…?
それとも私が布団の中でもぞもぞしたせいで、起きてしまったのだろうか…。
「… 葉月…? 」
「… うん、ちょっと、…眠れない、かも… 」
天井に目を向けたまま、小さく答える…。
「…そっか… 俺も… … 」
「…ホットミルク…作ろうか…?」
「… ん… いや、… いい … … 」
「… そ… … 」
シンとした、室内…
眠れない理由は、お互いにわかっている。
途端に、何を話せば良いのかわからなくなる…
この状態で、別れ話の続きをするわけにもいかない…
ちらりと拓海の方を見ると、暗闇の中に…拓海の眼が光っていた…。
私の顔を…じっと見ているような気がして、思わず視線を逸らす…。
豆電球の小さなオレンジの光のせいで…私の方を見ている拓海の表情が嫌でもわかってしまった…。
笑ってはいない… いつになく無表情な、拓海だ…。
「… …あの… 拓海… 明日は、何時… 」
「 … ん… ?」
「… …あ … 」
沈黙に耐えかね、何時の飛行機で帰るのかをいつものように尋ねそうになり、私は思わず口をつぐむ…。
そんなことを聞けば、早く帰ってくれと言わんばかりで、拓海が更に不機嫌になるのが目に見えている…。
「なんだよ… 何時の…?」
「あ… あの、朝ごはん、何時くらいにしよっかなって…」
「…ああ… 別にそんなん、何時でも…適当でいいよ…起きてから考えれば…おまえも、出張帰りで神経疲れてんだろうし…ゆっくり寝るといい…」
「ん… そう、だね…じゃあ、起きてから考えよっと…」
「… ああ …おやすみ、葉月… 」
「おやすみ、拓海… 」
暗黙の了解のように…どちらも、別れ話には言及しない…。
私は再びごろんと横向きになり、拓海に背を向ける…。
本当は…
拓海が近付いてきはしないかと…
ベッドの中で…これまでのように身体に触れてきはしないかと、心のどこかで緊張していた…。
でも…拓海は誠実だった。
私が別れを告げた以上… 今は触れられないと思ったのかもしれない…。
もしくは私が想像していたほどには…拓海は、今回の事態を…そこまで、気にしていない…?
そういえば前に少し、拓海に女性の影を感じたことがあった…
ひょっとして…拓海には福岡に誰か…既にそういう人がいるのだろうか…。
とにかくこの時点では…
私と拓海の間にはもはや、見えない境界線が出来ていた。
でも、その境界線が間もなくして、私自身の不注意で破られることになるとは…
この時の私は、思ってもいなかったのだ…。
駄目だ…
全然、眠れない…。
「… … … 」
私は拓海に背を向けたまま…ベッドの真ん中に少しの距離を保ったまま…何度も眠ろうと目を閉じる…。
だけど、全然眠りにつけない…
「… はあ… 」…ごろんと静かに、仰向けになる…。
いつもなら…
いつものように、この家に一人なら…
こんな風に眠れない夜、私は直ぐに起き出し…無理に眠るのを諦めて温かいミルクを用意する…。
ホットミルクを飲みながらぼうっとソファに座っていれば、そのうち眠気を催して…再びベッドに戻るのが常だ…。
いっそ、起きようか…
だけど今、再びベッドから身体を起こすことで…拓海が起きてしまっても困る…。
私はもう一度、目を閉じる…。
「… 眠れないのか … ?」
横から拓海の小さな声がして、ハッとした…。
拓海が起きていた…
最初から…?
それとも私が布団の中でもぞもぞしたせいで、起きてしまったのだろうか…。
「… 葉月…? 」
「… うん、ちょっと、…眠れない、かも… 」
天井に目を向けたまま、小さく答える…。
「…そっか… 俺も… … 」
「…ホットミルク…作ろうか…?」
「… ん… いや、… いい … … 」
「… そ… … 」
シンとした、室内…
眠れない理由は、お互いにわかっている。
途端に、何を話せば良いのかわからなくなる…
この状態で、別れ話の続きをするわけにもいかない…
ちらりと拓海の方を見ると、暗闇の中に…拓海の眼が光っていた…。
私の顔を…じっと見ているような気がして、思わず視線を逸らす…。
豆電球の小さなオレンジの光のせいで…私の方を見ている拓海の表情が嫌でもわかってしまった…。
笑ってはいない… いつになく無表情な、拓海だ…。
「… …あの… 拓海… 明日は、何時… 」
「 … ん… ?」
「… …あ … 」
沈黙に耐えかね、何時の飛行機で帰るのかをいつものように尋ねそうになり、私は思わず口をつぐむ…。
そんなことを聞けば、早く帰ってくれと言わんばかりで、拓海が更に不機嫌になるのが目に見えている…。
「なんだよ… 何時の…?」
「あ… あの、朝ごはん、何時くらいにしよっかなって…」
「…ああ… 別にそんなん、何時でも…適当でいいよ…起きてから考えれば…おまえも、出張帰りで神経疲れてんだろうし…ゆっくり寝るといい…」
「ん… そう、だね…じゃあ、起きてから考えよっと…」
「… ああ …おやすみ、葉月… 」
「おやすみ、拓海… 」
暗黙の了解のように…どちらも、別れ話には言及しない…。
私は再びごろんと横向きになり、拓海に背を向ける…。
本当は…
拓海が近付いてきはしないかと…
ベッドの中で…これまでのように身体に触れてきはしないかと、心のどこかで緊張していた…。
でも…拓海は誠実だった。
私が別れを告げた以上… 今は触れられないと思ったのかもしれない…。
もしくは私が想像していたほどには…拓海は、今回の事態を…そこまで、気にしていない…?
そういえば前に少し、拓海に女性の影を感じたことがあった…
ひょっとして…拓海には福岡に誰か…既にそういう人がいるのだろうか…。
とにかくこの時点では…
私と拓海の間にはもはや、見えない境界線が出来ていた。
でも、その境界線が間もなくして、私自身の不注意で破られることになるとは…
この時の私は、思ってもいなかったのだ…。
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