【完結（続編）ほかに相手がいるのに】

～智花～

彼

・・・　ピンポーン　・・・


もう一度、ベルが鳴る…。

きっと、…　　…　ドアを開けたら彼がいる…。

　　　　　　　「…　…　…」

無言で、ドアスコープを覗くと、予想通りの人影があった。

　　　　・・・ガチャ・・・

ドアを開けると同時に声を掛ける。

「…　あのね…　今、夜の10時なんだけど…　」

「は～い、もちろん、わかってますよ～」

ニコリと笑う彼…　
やはり、三橋君だった。
手に、何か袋を下げている…。

「…　ん…　お酒、くさい…　また、飲み会…？」

「は～～い、そうですよ～　ちょっと飲み過ぎたみたいです～…」

「…それはいいとして…なんで、飲み会帰りに…　こんな時間に、ウチに来るかな…？」

「…　あれ～～　足が勝手に向かっちゃったんですよね～　」

「勝手にって…　…　」

「林さ～ん…　ともかさ～～ん…　酔い覚ましに、あっつい珈琲飲ませてくださいよ～これ、お土産のケーキ！コンビニのですけど、結構おいしいですよ、これ～」

「はあ…　…　全く、もう…　…どうぞ…　」

「やったね…　あざ～～っす！」

飲み会帰りに、三橋君を家に上げたあの夜…　
彼に、強引に迫られ、身体を重ねて以降…

彼は時々、私の家にこんな形で来るようになった。

ほとんどは飲み会帰りに、いきなりの訪問…　べろべろに酔っている時もあれば、しらふの時もある。

「今日は何の飲み会だったの…？」

「ん～～　…今日はですね～…　まあ、　言ってみれば合コン、みたいな…　」

「…　へえ…　合コン…　…　」
彼は彼女がいながらも、平気で合コンに行くタイプの男。

世の中には色々な男がいるものだと、最初は驚いたものだ…。
しかも、そのことを隠したりもしない…。
ただ、本命の彼女には内緒にしているようだ…。

「…今日はですね～かなり期待して行ったんですけど、なんか、会話がイマイチ噛み合わない感じ…全然だめで…」

ふうっと、大袈裟にため息をつく三橋君…。

「…　　そう…　…　

いつものことだ。続きは特に聞きたくないし、興味もない。

私は掘り下げて聞くことをせず、足早にキッチンへ向かう。

三橋君は少しよろけそうになりながらも、私の後ろをついてくる。