【完結（続編）ほかに相手がいるのに】

～拓海～

レア

「…　あの、お待たせしました…　珈琲…です…　」

あわよくば…

瑠衣がそのまま、ソファで眠り込んでくれないだろうかという密かな期待を胸に、
俺は珈琲カップを智花の正面に置く。

「ありがとうございます、いただきます。」

　　…　カチャ　…　　

智花が、ほんの少しの音を立てて、カップを手にした瞬間だった。

「っ…　あ～～～　　あぶなっ…　あっぶなーー！！　」

「うっ　…　わっ…　な、…なんだよ、る…　　い…　」

駄目だ…　
いつもの癖で、つい、『瑠衣』と、名前を発してしまう自分を呪う…。

「…　寝ちゃうとこだった～～　やっばい、ヤバい…　せっかくの二次会…レアな二次会！なのに…」

「は…　、　二次会…　？　レア…」どんどんと気分が下がっていく…。

「そうそう！！レア二次会！！」

レア二次会…　　俺は瑠衣を見返す…。
　
「智花さんと拓海くんと私が…3人揃って、この部屋にいるなんてさあ…　完全に、レアじゃん」

「　…　はあ…　？　」

レアというかなんというか…　　

そもそも、おまえがこんな…　わけのわからない状況を作り出したんだろうと嘆きたくなるが、今の俺には何の反論も出来ず、俺は力なく項垂れる。

さあ…　もう、なんでもこいよ…　　

質問でも何でも、受け付けてやる…そんな気持ちでいた俺と反比例するかのように…
瑠衣はご機嫌そのもの…、この部屋に入ってからも…始終笑顔だ…。

「あ、そうそう～溶けちゃう！アイスアイス…普段滅多に買わない高級アイスだよ～～！食べよ食べよ～ね！智花さんも！！」

ガサガサとコンビニの袋の中から、笑顔でアイスを取り出す瑠衣。

「あ…　ありがとう、瑠衣ちゃん」アイスを受け取る智花の横で…

「あ…　拓海君はこれね！チョコチップ～拓海君はいつもこれ、一択だもんね…えへへ、瑠衣ちゃんよくわかってるって褒めて褒めてっ…」

頭のてっぺんを俺の方に向かって、まるでわんこのように差し出す瑠衣に、げんなりしてしまう…。

そちらを見てはいないが…
智花の冷ややかな視線が俺に向けられている…ような、気がする…

　　　　…単なる俺の被害妄想だろうか…