【完結（続編）ほかに相手がいるのに】

～困惑～

キス

「　…　まで　…　」

「えっ…　？」

杉崎さんが、私の耳元で何か囁いた…。

何…　なんだろう…　
私は杉崎さんの方を見つめる。

「　…今日は…ここまで…でも、このまま…もう少し、抱き締めてて、いいかな…　」

「…　…え　…　」

　どうして…　　

　　なんで…　なんで、　途中で…　？
　　
私は…　私の…　準備は出来ている…

欲しい…　　
杉崎さんが欲しい…　
今すぐ、　して欲しい…　くらいなのに…　　

　　　　　なのに、なんで…　

私は困惑する…。

何がいけなかったのか、わからない…　　

私の何が…どこが…　杉崎さんにこんなことを言わせたのか、わからない…。

「珈琲、飲みたいってお邪魔しただけなのに…こんな、強引なことをして…申し訳ない…また…落ち着いた頃、ゆっくりお邪魔するから…」

杉崎さんが、優しく囁きながら、私の髪をゆっくり撫でさする…。

「…　い、え…　…そんな…　」

なんで…　どうして…
こんな…中途半端な状態で、私を放り出すの…？　

だって、杉崎さんも…　
杉崎さん自身も、こんなに、堅く張りつめているのに…私には既に、その熱が伝わっているのに…
なんで、ここでやめてしまうのか、わからない…　

絶対…私には口に出して言うことはできない…言葉…
　
私はしたい…　今夜は、このまま抱いて欲しい…　
そんな、希望の言葉と…

それとは、まるで真逆の…　　
まるで、杉崎さんの判断に対する苦情にも似た言葉を、今にも発してしまいそうになる…。　

「あっ…　んう、っ…　ん…　」

考えている最中…
指で、そっと顎を上げられ、いきなり唇を塞がれる…　
杉崎さんのしっとりとした舌が私の舌に絡められ、びくんと震える…。

「んっ…　…　んう、…　」

意味が、分からない…　なんで、キス…　するの…　？
わからない…　杉崎さんがわからない…

こんなキスを…こんな…深くて情熱的な…甘すぎるキスを私に、しておいて…　

あんなに…滅茶苦茶に…愛撫して、感じさせておいて…

セックスは、お預け…だなんて…　

これまで…　
私は一人しか、しらない…
拓海としか比較はできないが、
これまでに、こんなことは一度もなかった…。

私に…女としての魅力がないのだろうか…　
何か…  私の…身体が、駄目なのかな…
理由を聞きたい…　　

本当は、なんでやめてしまうのかと、問い詰めたい…

でも、私にはできない…　
今の私の立場で…杉崎さんに、そんなことを問い詰めることなんてできない…

理由もわからず、　今にも泣きそうだ…　　苦しい…　　　

　　　でも、泣いちゃダメだ…　

「んっ　…　」

私はやっとのことで泣くのを堪えながら、戸惑いつつも杉崎さんのキスに応じた…。