【完結(続編)ほかに相手がいるのに】

もえこ

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~杉崎~

脱線

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俺は…それでも、なんとか言葉を続ける…。

「… …そう…そんなに、仲良し、なんだね…」

恐らく、その子に会う機会はないと思う…などと…そんなことを言えるはずもない…

だからこそ、そんな風に…復唱をするかのような返事をするのがやっとだった…。

「そう…仲良し…なのよ…その子も…私を姉のように、慕ってくれてて…なんだか、嬉しくて…」

「へえ… お互いに…貴重な、存在なんだね… 」

「そうなの… それで、その子… 好きな人がいて… それが… 」

「… うん …」
智花の話が少しずつ…脱線…しかけているのに気付く…。

「…どうやら、状況的に手が届かない人…らしくて…なんてアドバイスしたらいいかわかんないのよ…いまだに…」

「そうか…それは、難しい問題だね…」

俺は、その女性の細かな状況を聞いていないにも関わらず…その場しのぎの返答をする…。

今…俺は…
俺たちは… 一体、何の話をしているのだろうか…

    はたと、我に返る…。

いつまでもこの調子では…
この調子で、他人の噂話や…世間話ばかり、していれば…
大事なことを、言えなくなってしまう…。 

大事な話をするために…そのためだけに…俺は、ここ…福岡まで来たのだ。

「食後の珈琲とデザートをお持ちしました。」

突然舞い降りて来た女性の声に、ドキリとする…。

テーブルに…香り立つ珈琲と…美しいフォルムのガトーショコラがセットされていく…。

    もう、覚悟を、決めよう…。

お茶の、時間だ…
やっと、本題を話すべき、時間だ…。

「では、ごゆっくり、お寛ぎください」

店主の妻であろう品のある女性が、静かに礼をしてその場を去った後…

「智花…そろそろ、話…しても、いいかな…」

   俺はやっと、重たい口を開いた…。














 
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