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135 適材適所というものもありまして

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…‥‥日々気温が低下していき、雪の季節になるちょっと前の状態になった今日この頃。

 結局、あのメタリックスライムが分解され、液体金属流体というような代物になったものは、校庭の一角に移され、そこで長期にわたっての分解・再構成の措置がとられることになった。

 やはり混ざり過ぎており、不純物が多すぎて普通にやるとコストが非常に高く、直ぐに処理できるような代物ではなかったらしい。

 だが、一応スライムを生み出した物体でもあるので、錬金術師学科の授業教材として使用され、少しづつ減らしていく方針が決まったらしい。


「一気にやれば非常にコストがかかるけど、微量ずつならギリギリってことなのか」
「そうなりますネ。錬金術師学科の授業教材としても都合が良かったようですし、解決したと言えるでしょウ」

 まぁ、鉱毒等の危険性も考慮して、一応ちょっと工事が施され、簡易的な金属タンクができているが。

 ついでに、色々見つかった書類などによれば、その他に配布されていた形跡があるので、そちらの方でも国が調べることになったのだとか。


 とにもかくにも、処分のめどが立ったのであれば良いであろう。

 量が量だけに、十年単位はあるらしいが‥‥‥‥その頃には俺たちはとっくの間に卒業しているに違いない。

 そう思いつつ、本日の放課後にあった生徒会。

 そこで、俺たちはグラディからとある話を聞いた。

「学園祭?」
「そう、この時期になると開催する行事の一つだよ」
「まぁ、今年は祭りメインだがな。毎年何かを予定しては、迷走するのも名物になっているというべきか‥‥‥」

 俺たちよりも学年は上の方のゼノバースが、その何かの事を思い出したように、遠い目をしながら溜息を吐いた。

―――――――――――――
『学園祭』
適正学園、毎年恒例の行事として行われる、一種の祭り。
テストもちょっとはかねており、生徒たちの成長具合を見るために、毎年その内容が変更されており、他国の適正学園と共同で行う事もある。
昨年度は体力面を見るために、運動会が開催され‥‥‥
―――――――――――――

「‥‥‥学科ごとに競い、不得意分野でもどうやって攻略するのか、教師陣がしっかりと確認する。だがな、その攻略の仕方が滅茶苦茶な時があって…‥‥」

 昨年度、開催された時は運動会‥‥‥要は体育会系の競技メインのもの。

 ゆえに、騎士学科、武闘家学科などの運動系の諸学科は有利であり、魔法使い学科や錬金術師学科は一見不利に思えたらしい。

 だが、そこでどうにか攻略するのも重要だったそうだが…‥‥

「昨年、錬金術師学科とタンクマン学科がやらかしたんだ」

 競技の中にあった500m走で錬金術師学科。大玉転がしの方で、タンクマン学科がそれぞれ盛大にやらかしたそうなのである。

 前者の場合、錬金術で生み出した謎生物が代走で駆け抜けて、何をどう間違ったのか阿鼻叫喚の異臭を放ちまくった。

 そして後者の場合、大玉ではなく学科の生徒たちがまとまり、大きな一つの球として自ら転がりまくり、回転酔いと互いの重さからの苦痛で愉悦に顔が歪み、見るも無残な光景になっていたそうな。

「…‥‥正直アレは本気でトラウマになった生徒が多いだろう。特に後者の方でだ」
「兄上、そう言えば去年数週間ぐらいうなされてましたからね…‥‥」
「うなされるほどの悪夢の行事って…‥‥」

 そんなもの、絶対見たくない。

 というか、タンクマン学科の方は何をやっているんだよ。ドM集団が多いどころじゃないな。


 何にしても、そんな喜劇的というか、悲劇的なことがあったので、今年は体力面で見るような学園祭は行わないことを決定したらしい。

 なので、その代わりになるようなものでありつつ、生徒たちの成長を見ることができるものとして‥‥‥

「教師陣営が話し合った結果、今年は各学科ごとに出店を開くことで決定した。まぁ、学園祭という行事名だけに、大きな祭りを自分たちで開催して見ろと言う事のようだ」
「流石にそれで、変な事をしでかす輩はいないか…‥‥」
「うーん、どうなんだろうね?ちょっと不安しかないような」

 そのあたりは厳重注意、時々監査を入れる事でどうにかするらしいという話は聞いた。

 昨年の悲劇をトラウマに刻み込んだ教師たちは多く、自主性を見るような祭りでもあるが、やらかされ過ぎないようにするそうである。

 なら、昨年の方で見ておけよとツッコミを入れたいが、そこは色々と学園の事情があるのだとか。

 なお、生徒会としては特に入れ込みまくる必要もなく、精々会場の警備を行ったり、各学科の予算の確認を行う程度で済むらしい。

「だからこそ、学科の出店に出られないということはないから、安心して欲しい」
「警備に関しては、今年は王城の方からもちょっと出るからな‥‥‥」
「ああ、組織関連だったか」

 頼むから、純粋に楽しみたい時には出て欲しくないな…‥‥あのスライムも厄介だったし、できるだけ出てくんな。

 むしろ、早めに潰れて欲しいのだが…‥‥生憎、まだまだ調査も必要らしいし、潰すまで時間かかるらしい。

 やきもきするような気もするが、こういう点は国へ丸投げしているし、仕方が無い事だと思うしかないか…‥‥




「‥‥‥まぁ、それが昨日の話で、今日学科の授業で話に出たけど、バルンの方は何になった?」
「武闘家学科の方は、各流派拳法取り揃え体験講習会になったな。武闘家と言っても格闘技が違ったりするからなぁ‥‥‥そっちは何になったんだよ、ディー」
「俺の方は、召喚士学科だけあって、模擬戦を魅せたり、各召喚獣の特技を魅せる、召喚獣魅せ大会みたいな感じになったな。まぁ、決まるまでいろいろあったが‥‥‥」

 翌日の昼食時、学園の食堂で俺は悪友であるバルンとそう話し合う。

 昨日の生徒会での話が、直ぐに各学科に出たが、そこまでごたごたしていたわけでもない。

 しいて言うのであれば、魅せるだけではなく触れられるようにしたいという意見も、召喚士学科の方ではあったが‥‥‥いかんせん、触れにくい類もいる。

 鱗ばかりだとか、液体ボディとか、ヌメヌメとか‥‥‥触り心地を考慮すると、かなり差が分かれるのが目に見えている。

 それに、職業を顕現させてそれぞれが召喚獣を手に入れすでに半年以上が経過しており、共に過ごしてきたからこそ愛着も沸きまくり、その他の人に触れられたくないと思うような者も多くなったがゆえに直接触れさせるという事を辞めさせたようである。

 まぁ、俺もその辞めさせた一員ではあるが。というか、周囲が絶対にそれはやばそうと言ったのが一番の要因なのだが…‥‥

「というかそもそも、召喚獣の方の意思決定もあるからなぁ…‥‥彼女達も、命令なら従うつもりはあるけど、流石に赤の他人に触れられまくるような真似は嫌だと言ったからね」
「それもそうだろうなぁ。いやまぁ、あの美女たちと合法的に触れ合いたい輩が暴走する可能性も考えると、かなりの英断だと思うぞ。‥‥‥あれ、ところで気が付いたが、その話題のお前の召喚獣たちは?」

 色々と考えこむような表情をしつつ、今更バルンは気が付いたようにそう口にした。

「ああ、ノインたちなら今、ちょっとルナティアの方へ話し合いに向かったな」
「ん?ルナティアというと‥‥‥森林国からの留学生であり、お前の知り合いだったか?なんでそいつのところへ?」
「さぁ?まぁ、彼女たちなりに親しい仲でもあるし、同性同士、話しやすい事もあるんだろう」

 ノインたちの召喚主とは言え、異性だからなぁ‥‥‥同性同士の方で弾む話題があってもおかしくはない。

 でも、何を話すのやら…‥‥学園祭時の、面白そうな学科の巡り方とかそういうものかな?










「‥‥‥つまり、弓兵学科用の練習場で、ちょっと模擬戦したいとニャ?」
「正確に言うのであれば、的確に狙うそのコツを、見て覚えたいと思いまシテ」
「遠距離攻撃手段が、私たちには不足してますからね」

…‥‥ディーが想像している丁度その頃、女性陣は話し合いをしていた。

「遠距離攻撃、可能。でも、大雑把で、正確さ、不十分」
「拙者も火炎放射を集中させられるでござるが、一点を正確に狙いにくいからのぅ‥‥‥だからこそ、そう言う狙撃関係に向いているそちらに頼みたいのでござる」
「確かに、弓兵だからこそ狙いを定めるコツとかは教えられるけど‥‥‥何でまた、急に頼みに来たのニャ?」

 彼女達の頼みに対して、ルナティアは首をかしげて尋ねる。

「まぁ、こちらにも色々と事情がありまして…‥‥メイドたるもの、ご主人様の害を消し去るために、研鑽する必要があると考えたのデス」
「もっと正直に言うのであれば、偶然わっちたちのほうで、ダーリンよりも先に情報を得てしまったというべきか…‥‥まあ、手間をかけさせたくないし、学園祭ともなれば面白そうな祭りでもありんすよね?だからこそ、楽しんでもらうために、全員で尽くしたいと思っているのでありんすよ」
「‥すっごい面倒そうな事情が垣間見えたような気がするニャ。でも、真剣な様子だし‥‥‥」

 うーんっと手を組み、考え込むルナティア。

 いかんせん、目的があれどもディーに接する以上、彼女達とそれなりに交流を持たざるを得ず、それでいて自然と仲良くなったのは良いのだが、こういう頼みにはどうしたモノかと考えこむ。

 コツは確かにあるのだが、弓兵の職業ならではのものもあり、召喚獣たちに教えたとしても、きちんとモノにできるのか自身はないのだ。

 というか、それでさらにパワーアップされたら、それはそれで色々と問題になりそうというのが理解できてしまう。近くで見たことが多い分、さらなる強化は想像したくない。


…‥‥とは言え、この国には森林国の友人たちもいないし、適正学園で仲良くしてくれているディーの召喚獣たちには、そう言う事でよりしっかりと交流を深めたいという思いもある。

「‥‥‥わかったニャ。何をどうする気なのかは怖いから聞かないことにして、狙撃のコツなどは教えるのニャ」
「ありがとうございマス」
「ところで、そう言うのなら教員の方がより詳しいと思うんだけど、何でそっちには頼まないのニャ?」

 ルナティアの問いかけに対して、そっとノインたちは目をそらした。

「‥‥‥何ニャ?」
「学園祭というものは、生徒たちを見るテストのようなものも混ざっているらしいからのぅ…‥‥」
「遊ぶだけではなく、教師陣もしっかりと確認、点数入れ、各学科で判断」
「でも、わっちたちのようなもので負担をかけていることぐらい‥‥‥」
「「「「「「自覚、しているの(デス)(ですわ)(でござる)(じゃ)(でありんす)」」」」」」
「…‥‥」

 目を背け、そろって口にしたその言葉に、ルナティアはしばしあっけにとられつつ、直ぐにどういうことなのか理解してしまった。

 それでも、一応気にせずにやってしまえば良いかなと思いつつ、ノインたちの頼みを快く引き受けるのであった…‥‥

「あれ、そういえばリリスの姿だけ無いような気がするのニャ」
「彼女でしたら、自室で籠っていマス。何かやっているようですが…‥‥問題は特にないと思ってくだサイ」
「なんかすっごい気になるのニャ」
「一応、大丈夫と言えば大丈夫ござるよ。…‥‥まぁ、拙者の方は時期が‥‥‥いや、まだ大丈夫だし、あっちも心配しなくていいでござるよ」
「そういうものかニャ?」
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