短編集【令嬢の憂鬱】

モモん

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超合金ロボ

アネリサ王女

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「貴族用ですかい」

「ああ、第二王女に渡してやるんだ」



「その、ハサミというのがこれですか?」

「はい、これで布か革を切ってみてください」

「こ、これは!」

サラさんは驚きの声をあげた。

「貴族からの注文は、すべて第二王女を通すよう、全鍛冶職に言ってあります。
これで少しは風当たりもよくなるのでは?」

「信じられません。
このハサミは、女性なら誰でも持ちたがります。
貴族女性の嗜みとして、お裁縫は必須なんですから」

「髪の毛の毛先を整えるときも重宝しますよ」

これも効果があった。
毛先を揃えただけで、第二王女の付き人は印象がアップしたのだ。

「できましたら、第一王女様へはジュリエッタ様からの贈り物として先に用意できませんか?」

「簡単なことですよ」



この騒ぎで、僕とシェラさんの知名度もアップしてしまった。
仕立て屋さんからは、服を作らせてほしいと懇願され、理髪店からは髪を切らせろと矢の催促。
第二王女の側近は増員されて、専用の担当者までできてしまった。

貴族御用達となったおっちゃんは悲鳴をあげているし、化粧箱を作る職人や宝石商も飛び回っている。
一過性だろうが、街に活気が溢れているのはいいことだ。

頃合いを見計らって、第二弾のマヨネーズを投下する。
一発目は第二王女主催のパーティーだ。
ハサミパーティーと銘打って、第一王女も連名にしたパーティーだ。
まだ幼い第二王女を後見する名目の連名であるが、こちらの目論見に乗っかってくれた。

同時に、市場へも投下する。
最初はおしゃれなお店でサラダ用に使ってもらい、食堂に広げた後で販売だ。
これにより、養鶏場、酒蔵、農家が潤うことになる。

騒ぎが大きくなるほどに、面会の申し込みが増えてくる。
経営コンサルタントとして囲おうとする貴族すら現れてくる。
というか、財務大臣本人からの面会申し込みを第一王女が受けてきた。

「困りますよアネリサさん」

「すみません、どうしても断れなくって……」

アネリサさんは17才。シェラさんと同い年だった。
本人にあってみたら、引っ込み思案でおしとやか。美人さんだった。

「エイジさん、そんな事を言ってアネリサを困らせないで!」

王女とシェラさんは、いつの間にかお互いに呼び捨てにするほど仲良くなっていた。

「そうだ、これ試してみて」

クレープを作ってみた。
生乳を分離させて砂糖を加えて角だてる。
フルーツを角切りにして組み合わせれば完成だ。

三人とも放心状態の状況を見れば成功だろう。

「シェラ、エイジさんを譲ってください。
王女の地位と交換しましょう!」

「お・こ・と・わ・り」

「サラさん、みなさんもどうぞ」

「「「いただきまーす」」」

王女二人の前では、側近も遠慮しなくていい。
それが不文律になっていた。
二人を中心に、周囲が活性化していく。いい傾向だった。

しかし、時々困ることが起きる。
王様がのぞきにくるのだ。
そんな時、僕たちは気づかないふりをしてあげるのだが、側近たちはそうはいかない。
食べ物を出した時は、自分たちの分をあげているらしい。
自分の食べる分を失った側近たちの様子は一目でわかってしまう。
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