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疑い
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それから数日後、お兄様が王宮へとやって来た。
「―王妃陛下」
お兄様が部屋に入ってくるのを見て私は侍女たちに部屋から出るように命じた。
それから彼らが部屋から出て行き、お兄様と二人きりになったタイミングで口を開いた。
「お兄様、第一側妃のリリア様がつい最近クリスティーナ様に嫌がらせをしたとして追放されたのをご存知ですか?」
「ああ、知っているさ。社交界ではその話で持ち切りだからな」
私の向かいに座ったお兄様は軽く頷きながらそう言った。
やはりもう既に貴族たちにも広まっていたようだ。驚きを隠せない者も多いだろう。リリア様は五人の側妃と愛妾たちの中で最も陛下のお気に入りであると言われていた人物なのだから。
「俺も最初陛下があの側妃を追放したと聞いたときは驚いた」
「私もです」
「分かりきっていたことだが、陛下は相当あの新しい愛妾に惚れ込んでいるようだな」
「ええ、そうですね・・・」
お兄様の言う通りだ。かつては愛した女を容赦なく追放するだなんて。それほどに陛下はクリスティーナ様に骨抜きにされているようだ。
「お兄様、私がお兄様をここへ呼んだのはあることを調べてほしかったからです」
それを聞いたお兄様はニヤリと口の端を上げた。
「ああ、分かっているさ。第一側妃が起こした事件の真相だろ?それならもう既に俺の方で調べが済んでいる」
「・・・!」
さすがはお兄様だ。私のことなら何でも分かっているらしい。
「ありがとうございます、お兄様。それで、どうだったのですか?」
「ああ・・・それがだな・・・残念だが・・・」
私が尋ねると、お兄様は言いづらそうに視線を逸らした。
「―第一側妃の愛妾クリスティーナに対しての嫌がらせは全て紛れもない事実だった」
「そんな・・・!」
実はほんの少しだけリリア様を信じていた気持ちがあった私はそのことを聞いて落胆した。
(本当だったなんて・・・)
何故私がここまで彼女を気にかけているのかというと、私にはリリア様の気持ちが分からなくもないからだ。三年前からずっと陛下を傍で支え続けてきたのに、それをポッと出の平民女に取られたのである。プライドの高いリリア様にとっては耐えられない屈辱だろう。しかもクリスティーナ様に関しては今まで側妃や愛妾として迎えられたどの女よりも陛下の寵愛が深いのだからそうなるのも無理はない。まぁ、そうだったとしてもやっていいことといけないことがあるが。
「では、冤罪の線は・・・」
「ああ、それは俺も無いと思う。あの側妃の性格からして普通にやりそうだ」
お兄様はそう言いながら調査結果が書かれた紙を机の上に置いた。
そこにはリリア様がクリスティーナ様にした嫌がらせが事細かに記載されていた。
(ドレスを切り裂く・・・陰口を叩く・・・紅茶をかける・・・)
どれもリリア様が本当にやりそうなことばかりだった。それからお兄様はハァとため息をついて言った。
「俺も裏に何かあると思ってたんだがな・・・どれだけ調べても出てくるのは側妃が犯した罪だけだった。カテリーナ、どうやら今回の件は本当に第一側妃がやらかしただけのようだ」
「ええ、そうですね・・・」
お兄様はそう言ったが、このときの私には何かが引っ掛かって仕方が無かった。
「―王妃陛下」
お兄様が部屋に入ってくるのを見て私は侍女たちに部屋から出るように命じた。
それから彼らが部屋から出て行き、お兄様と二人きりになったタイミングで口を開いた。
「お兄様、第一側妃のリリア様がつい最近クリスティーナ様に嫌がらせをしたとして追放されたのをご存知ですか?」
「ああ、知っているさ。社交界ではその話で持ち切りだからな」
私の向かいに座ったお兄様は軽く頷きながらそう言った。
やはりもう既に貴族たちにも広まっていたようだ。驚きを隠せない者も多いだろう。リリア様は五人の側妃と愛妾たちの中で最も陛下のお気に入りであると言われていた人物なのだから。
「俺も最初陛下があの側妃を追放したと聞いたときは驚いた」
「私もです」
「分かりきっていたことだが、陛下は相当あの新しい愛妾に惚れ込んでいるようだな」
「ええ、そうですね・・・」
お兄様の言う通りだ。かつては愛した女を容赦なく追放するだなんて。それほどに陛下はクリスティーナ様に骨抜きにされているようだ。
「お兄様、私がお兄様をここへ呼んだのはあることを調べてほしかったからです」
それを聞いたお兄様はニヤリと口の端を上げた。
「ああ、分かっているさ。第一側妃が起こした事件の真相だろ?それならもう既に俺の方で調べが済んでいる」
「・・・!」
さすがはお兄様だ。私のことなら何でも分かっているらしい。
「ありがとうございます、お兄様。それで、どうだったのですか?」
「ああ・・・それがだな・・・残念だが・・・」
私が尋ねると、お兄様は言いづらそうに視線を逸らした。
「―第一側妃の愛妾クリスティーナに対しての嫌がらせは全て紛れもない事実だった」
「そんな・・・!」
実はほんの少しだけリリア様を信じていた気持ちがあった私はそのことを聞いて落胆した。
(本当だったなんて・・・)
何故私がここまで彼女を気にかけているのかというと、私にはリリア様の気持ちが分からなくもないからだ。三年前からずっと陛下を傍で支え続けてきたのに、それをポッと出の平民女に取られたのである。プライドの高いリリア様にとっては耐えられない屈辱だろう。しかもクリスティーナ様に関しては今まで側妃や愛妾として迎えられたどの女よりも陛下の寵愛が深いのだからそうなるのも無理はない。まぁ、そうだったとしてもやっていいことといけないことがあるが。
「では、冤罪の線は・・・」
「ああ、それは俺も無いと思う。あの側妃の性格からして普通にやりそうだ」
お兄様はそう言いながら調査結果が書かれた紙を机の上に置いた。
そこにはリリア様がクリスティーナ様にした嫌がらせが事細かに記載されていた。
(ドレスを切り裂く・・・陰口を叩く・・・紅茶をかける・・・)
どれもリリア様が本当にやりそうなことばかりだった。それからお兄様はハァとため息をついて言った。
「俺も裏に何かあると思ってたんだがな・・・どれだけ調べても出てくるのは側妃が犯した罪だけだった。カテリーナ、どうやら今回の件は本当に第一側妃がやらかしただけのようだ」
「ええ、そうですね・・・」
お兄様はそう言ったが、このときの私には何かが引っ掛かって仕方が無かった。
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