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「ずっとお前が好きだった。でもこういうの初めてだしどうすれば良いのかわかんなくて……。だけど新庄がお前に告ったって聞いたら居ても立ってもいられなくなった」
「急すぎて何が何だかさっぱり……」
「凛はさ、俺のこと嫌い?」

 私を見つめる拓真の視線が痛い。
 
「……嫌いじゃない」
「じゃあ、好き?」
「ちょ、ちょっと待って何その聞き方」
「好きかどうか聞いてんの」

 拓真のことが好きかって?
 そりゃあ好きに決まってる。
 でも拓真はモテるのだ。今後もその悩みからは解放されることはないだろう。
 荒波の中に飛び込んでいく勇気はなかなか出ない。

「……好き。でも、付き合えない……と思う」
「はあ? 意味わかんね。好きなら付き合えば良いだろ!」
「だって、拓真モテるじゃん。私と付き合っても寄ってくる女子はいっぱいいるだろうし、いちいちヤキモチとか焼いたりしたくないんだよね……」
「俺今までの告白、ちゃんと断ってるよ。思わせぶりな態度とか取ったことない」
「それはわかってる……」
「なあ、頼むよ。今もこれから先も凛のことしか見てないから。何か嫌がらせされても絶対俺が守るし」

 縋るような拓真を前にして、私の中から断るという選択肢は消え失せてしまったらしい。

「……わかった、わかったから離して」
「嫌だ。すげーいい匂いするし、抱き心地良すぎて離したくない」

 そう言うと拓真は私の首元に顔を埋めて、すんと匂いを嗅ぎ始めた。

「ちょ、やだ! やめてよ変態っ……んっ……」
「まじ? お前そんな声……無理、止まんない」
「やだ、拓真! んんっ」

 拓真は両手で顔にかかった私の髪の毛をかきあげると、そのまま頭を押さえつけてキスをした。
 少し暖かくて、カサついた唇は戸惑うように私の唇をゆっくり啄む。

「やっ、んっ……」
「ああもう、可愛すぎ」

 ぎこちない拓真のキスは、やがて激しいものへと変わっていき。
 いつのまにか口の中へ入り込んでいた彼の舌は獣のように動き回る。

「はぁっ……。なあ、凛……やっていい?」
 
 唇を離して燃え上がるほど熱い瞳でこちらを見つめる拓真の姿は、高校生とは思えないほどの色気を醸し出している。

「えっ……何言ってんの、ここ私の部屋で下にお母さんいるんだけど」
「おばさんなら出かけるって言ってたよ」
「で、でもゴムもないし……」

 生まれてこの方彼氏のいない私が避妊具を用意しているはずがなく。
 だがそんな私に拓真は一瞬目を見開くと、そのあと吹き出すようにして笑った。

「なんだよ。気にするところ、そこ?」
「だって……」
「ゴムなら俺持ってる」
「なんで!?」
「いつ凛とそうなってもいいように。それに、今日ここ来るときにそうなったらいいなって」

 つまり元々拓真は私とやるつもりだったと言うことか。

「……やりたいだけ?」
「なわけねーだろ! お前何年俺と幼馴染やってんだよ……結構ショックなんだけど」
「ごめん」

 拓真は私のおでこにコツンと自分のおでこをぶつけると、再びこう尋ねた。

「なあ、やっていい? 俺凛の初めてもらいたい」
「……拓真っ……」
「ちなみにさ、俺も初めてだから」
「え、嘘……」
「ほんと。だからさ、俺の初めてもらってくれる?」

 結局私は再び流されるようにして頷いてしまったのである。
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