上 下
59 / 72

第59話 天使と悪魔

しおりを挟む
 試しに「召喚!」と唱えて、スライムを呼び出してみた。

「おお! 我ぇー、やんのか……」
「えいッ!」
「ぐべちゃ!」

 故障じゃないみたいだ。
 現れたスライムを掴んで、地面に思いっきり叩きつけ倒してやった。
 もしかして、倒したら二度と現れないスライムもいるのかな?

「よし! 次に行こう!」

 気にしても仕方ないので、次だ次!
 今度は天使を呼び出すぞ。きっと優しい天使なら、倒さなくても服従してくれるぞ。
 右手にダイヤの剣、左手にプラチナの剣を装備して、「召喚!」と唱えた。

 魔法陣から金色の髪に白い服を着た、白い翼の白い肌のエンジェルスライムが現れた。
 頭上に浮かぶ光る輪っか、右手には白い弓矢を持っている。
 天使は見たことないけど、これが天使みたいだ。

「ああ、罪深き悪魔よ。私に何の用ですか?」
「えっ? 僕、悪魔じゃ……」
「いえ、答えずとも分かります。悪魔が天使を呼び出す理由は一つです。いいでしょう、相手になります。その愚かさと傲慢さを悔い改めなさい」

 これは悪魔装備で悪魔じゃないのに、悪魔扱いされちゃった。
 エンジェルスライムが弓矢を僕に向けると、光の矢が現れた。これ絶対に射ってくるやつだ!
「覚悟!」とエンジェルスライムが言うと、ヒューンと光の矢が飛んできた。

「あうっ!」

 パァンと頭のダイヤの兜に矢が命中した。
 あぁー、良かったぁー。これ全然痛くないやつだ。
「逆に覚悟!」と突撃開始だ。「やあッ!」と剣を振り下ろした。

「無駄です——《ホーリーレイン(光の雨)!》」

 でも、ウサギみたいに軽やかに、後ろに高くジャンプされて躱された。
 そのまま空中から光の矢を分裂させて射ってきた。

 パァン! パパァン!

「うりゃあぁー!」

 こんなの痛くも痒くもないぞ。
 光の雨に撃たれながらも、エンジェルスライムの着地点に急いだ。
 攻撃は最大の防御だ。天使が降りてくるタイミングに合わせて、両腕を後ろに軽く引いた。

「《疾風突き!》」
「きゃふう!」

 ドォガア! エンジェルスライムの顔と腹に二つの剣先が激突した。
 ヨロヨロと後ろに下がって、大ダメージ確定だ。

「あっ……」

 やっぱりだ。こっちも人形の皮を被った天使だった。
 パラパラと顔が砕けて、中身の青い肌が丸見えだ。

「見ぃたぁなぁ~!」
「ああっ!」

 違った! 天使の皮を被った悪魔だ!
 このエンジェルスライム、絶対にデビルスライムだよ!

「《ホーリーキュア(光の癒し)!》——残念でしたね。私には回復の力があります。どんなに攻撃しても、私に傷一つ付けられません」

 エンジェルスライムが光に包まれると、顔の砕けた部分が元通りになっていく。
 この流れ……最近似たようなのを経験したばかりだぞ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

オカアメフラシのポンバ-巨大ゴーストと魔女鍋

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

あなたの世界で、僕は。

BL / 連載中 24h.ポイント:796pt お気に入り:52

可笑しなお菓子屋、灯屋(あかしや)

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:1

異種族キャンプで全力スローライフを執行する……予定!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,797pt お気に入り:4,743

転生少女は異世界でお店を始めたい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,414pt お気に入り:1,704

処理中です...