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異世界旅行編

水泳術自由形と首都船

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「オラッ‼︎」
『ギョポオオッ⁉︎』

 雌人魚の顔面に右拳を叩き込んでやった。
 まさかとは思うけど、高校時代水泳部の俺に水中戦で敵うと思ったのか?
 舐めてっと水中妊娠させるぞ。

『『『キュアアアッッ‼︎』』』
「ジジイの言う通り、こりゃー大漁だなぁー♪」

 一匹殴り倒して、水中をプカプカさせているのに、馬鹿な新手が多数やって来た。
 どうやら俺が水泳部だと知らないようだ。『水泳術自由形』を見せてやるよ。

「スゥー、ハァー! スゥー、ハァー!」

 水中の酸素を錬金術で集めて、風魔法で身体の周りに固定した。これが『息継ぎ』だ。
 テメェらを倒す方法は三千通りあるが、今日は肉体だけで倒してやる。
 魔法使って、熱湯地獄や氷漬けの瞬殺は勘弁してやるよ。

「行くぜ、オラッー‼︎」

 最初から飛ばして行くぜ。これが俺の全力の『クロール』だ。
 両手で水を切り裂き、両足で水を蹴り飛ばす。
 さながら今の俺の姿は超音速魚雷だ。俺に触れたら即爆発だ。

「『切り裂けクロール』‼︎」
『ギョオポオオオ‼︎』

 言ってる側から右手のクロールによって、人魚の右胸から右脇腹までが斜めに切り裂かれた。
 人魚の真っ赤な血が水中を汚していく。俺が女に手を出さないと思っているなら大間違いだ。
 手も足も色々なものも平気で出す男だ。さーて、今日の朝飯は人魚の丸焼きだ。
 不老不死は無理でも、精力増強ぐらいは役立ってくれよ。

「オラオラッ‼︎ クロール、クロール、クロール‼︎」
『『『ギョギオオオオ‼︎』』』

 水中を鳥のように自由自在に泳ぎまくる。殺人ペンギンになった気分だ。
 両手のクロールによって、次々に人魚が一刀両断されていく。これが本当の血の海地獄だ。
 人魚達が得意の断末魔の歌声を聴かせてくれるが、こりゃージャ○アンも真っ青の酷いリサイタルだ。
 さっさと全員ドザエモンにして、リサイタルを終わらせてやんよ。

『ギョ、ギョギョ……』
「あん?」

 心臓をクロールで一突きすると、貝のような弾力しかないおっぱいから右手を引き抜いた。
 接近する少し大きめの魚影がいる。胸を見るとド貧乳だったが、よく見ると顔付きが女じゃない。
 雌の細っそりとした顔ではなく、ガッチリとした四角い顔をしている。
 それに身体も全体に筋肉質だ。間違いない。あの人魚は……

「おいおい、雄人魚もいるのかよ♪」

 猿山のボス猿じゃないが、人魚にもいるらしい。ここは海だから、海中のボス人魚だな。
 とりあえず倒せば俺が新しい群れのボスだ。ボス人魚になれば雌人魚とヤり放題だが。
 悪いな、男珍宝が一ミリも勃たない相手はお呼びじゃない。殺り放題で行かせてもらう。
 雄人魚に向かって全速前進すると、激突する瞬間に身体を素早く一回転させた。

「『白海豚野朗の蹴りドルフィンキック』‼︎」
『ドビウゥ‼︎』

 二本の足が雄人魚の顔面を蹴り砕いた。蹴り砕かれた雄人魚がプカプカ浮いている。
 やれやれ、まだ水泳術を二つしか見せてないのにもう終わりらしい。

『『『ギョア⁉︎ ギョア⁉︎』』』

 雄人魚を殺ったら、雌人魚が逃げ始めた。俺から逃げられる訳ないだろ♪
『水泳術・平泳ぎ』——両手に高速回転する三角形の水槍を作り出した。

「フンッフンッフンッフンッ~~‼︎」
『『『ギョアアアア‼︎』』』

 高速平泳ぎの乱れ撃ちだ。ドリル水槍を次々に人魚に向かって飛ばしていく。
 頭や胴体を撃ち抜かれた人魚が血を撒き散らして死んでいく。
 これが水泳術だ。決して水弾を飛ばす魔法ではない。

「さてと、一匹で十分だが……売れるかもしれないな。爺さんに聞いてみるか」

 三十匹以上の群れを一匹も逃さずに全滅させてやった。流石にこの量は食べ切れない。
 浮いている雄人魚と雌人魚の腕を掴むと、二匹を船に連れ込んだ。

「おおぅ、何という事を‼︎」
「何がだ?」

 人魚を見た瞬間、船長がショックを受けたように甲板に崩れ落ちた。
 雄人魚の方は生け捕りが良かったみたいだ。この変態裸筋肉好き爺さんめ。

「人魚は絶対に殺しては駄目なのです! 撃退だけです! 傷付けずに撃退しないと海神の怒りに触れてしまうのです!」
「細けえなぁー。全員殺したから大丈夫だよ。心配なら胃袋の中に証拠隠滅すればいいだろ」
「人魚なんて食えません! 食えば死にます! 早くこの場から逃げましょう! 船に人魚の血の臭いがつくとマズイです!」
「はいはい、分かった分かった」

 やれやれ心配症の爺さんだ。魚ブッ殺しただけじゃねえか。
 白い帆に風魔法で風を当てると船を進ませた。
 朝飯は変更だ。人魚の肉は牢屋の男兵士に毒味させるとするか。
 上半身と下半身の肉で味が変わるのか、地味に気になるんだよな。

 ♦︎

「何だ、普通に島じゃねえかよ」

 首都船が見えてきた。帆船を繋げただけの街かと思ったら、緑色の陸地が見えてきた。
 山も丘もない平べったい島だが、端から端まで四キロメートル以上はありそうだ。
 その上に露店のような小さな建物が並んでいる。

「ジェネ様、あちらに船を停めれる場所があります」
「……分かった」

 もうドサクサじゃない。確信犯だ。
 爺さんが指差す方向に船が曲がっていく。
 しばらく進むと、陸地に丸い窪みが複数できた場所に到着した。
 どうやらこの窪みに船を入れるようだ。すでに帆船が二十隻以上も停まっている。

「よし、朝飯だ。食いたいものがあれば言うんだぞ♪」
「気安く触れるな。お前はこんな事をして楽しいのか?」

 女四天王アルテの腰に左手を回して、船を降りようとした。
 どうやら今日はデートの気分じゃないようだ。

「ああ、楽しいね。お前が笑えばもっと楽しい。家に帰りたいなら笑うんだな」
「……フッ」

 馬鹿にするような笑みだったが、まあいいだろう。デート相手は他にもいる。

「ルビア! ルルカ! 奢ってやるから買い物に行くぞ!」
「えっ⁉︎ 本当ッ‼︎」
「ジェネ様、本当にいいんですか⁉︎」

 馬鹿明るい金髪ロングの十七歳のルビアと、海藻色の髪の元気な十五歳のルルカを呼んだ。
 この二人なら軽く貢いだだけで、すぐに喜んで股開くだろうよ。

「ああ、家でも宝石でも何でも買ってやるよ」
「「やったぁ♪」」
「こほん! では、ジェネ様。私が街案内——」

 おいおい、呼んでない奴が自然に付いて来ようとするな。

「お前は船長だろ。船で留守番だ。それとジェネ様と二度と呼ぶな。分かったな?」
「な、何故ですか⁉︎ この女がよくて、何故私は駄目なのですか⁉︎」

 ルルカと違って、お前がジジイだからだ。

「自分の胸に手を当てて考えろ。俺達が帰って来るまでに答えを用意しておけ」
「そ、そんなぁ……」

 平たい胸に手を当てて落ち込む爺さんを放置して、若い少女二人の腰に手を回した。
 他の奴らは船から下ろした縄梯子で降りているが、俺なら少女二人を抱えて余裕で飛び降りれる。
 甲板から跳ぶと、風魔法で減速しつつ地上に降りた。

「ん? これは……草だよな?」

 近くで見れば緑色の陸地が草なのは分かっていた。
 だが、足で踏むとおかしな感触がした。分厚い畳のような感触だ。

「そうだよ、草だよ。海草という海藻の一種で、それを沢山集めて地面の代わりにしてるんだよ」
「なるほど、草のイカダみたいなものか」

 疑問に思っていると、ルビアが教えてくれた。
 馬鹿っぽいが意外と馬鹿じゃないのかもしれない。
 だとしたら、もう一つ気になる事がある。

「でも、前に船長が船を繋げたのが首都船だと言っていたよな? これはどう見ても草を繋げただけだぞ」
「うん、そうだね。船は海草が何処にも行かないようにイカリ代わりにされているよ。街のあっちこっちに船があって、そこに工場があるんだよ」
「工事ね……とりあえず街を案内してくれ。何が何処にあるのかも、何を何に使うのも分からん」
「了解ぃ~♪ まずは軽く朝ご飯だね。こっちだよ♪」

 ここは適当に歩くよりも、現地民に案内させた方が良さそうだ。
 説明を聞いているだけでは全然分からない。百聞は一見にしかずだな。
 ルビアとルルカの腰から手を離すと、二人に案内を任せた。

 ☆
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