6 / 26
6
しおりを挟む
オフィスにあるホワイトボードには、課のメンバーのスケジュールがわかるようになっている。加藤の欄が有給やら出張やら会議とあるとすごく嬉しいのだが、反対に望月や佐々木が不在となるとテンションが下がってしまう。会社を休みたくなる程に。
今日のホワイトボードをみてみると、望月の欄には『午前中会議』の文字が。そう、望月がいないのだ。そんな日は決まって、加藤の罵声が飛ぶ。
(あ~もうまじ、メンタルやられる……)
聞いているだけで、神経がすり減ってしまう。白目をむいてしまう程精神的にやられている瀬戸だが、しかしそんな自分よりも、もっと懸念されるのは……
(佐々木さん……今日も応接室連れてかれてたな……)
怒鳴られている張本人の、佐々木だ。
相変わらず標的にされており、自分だったらとっくに辞表を出していると思う程、酷い扱いをされている。以前、辞めたくならないのか聞いたことがあったが、まだそこまでの暴力は受けていないから、と自傷気味に言っていた。言葉の暴力だって耐え難いと思う。
何が気に食わなくて佐々木を標的にしているのか。どんなにパワハラをしても、いつも笑顔だから?仕事ができて、周りから信頼を得てるから?いくら考えても分からない。瀬戸は胃が痛む、と、休憩室に逃げ込んだ。
休憩室に入ると、偶然佐々木がいた。
「佐々木さんっ……」
「あ、ごめ……」
椅子に座っている後ろ姿に思わず声をかけたが、佐々木は泣いているようだった。瀬戸に見られまいと、ハンカチで涙と鼻水を拭いていた。
(そうだよな……あんな仕打ち受けて辛くないわけが無いよな。)
そんな佐々木をみて、思わずその場に立ち尽くしてしまう瀬戸。望月のように抱きしめられれば良かったが、そんな事する勇気もなく。でも、それでも少しでも励ませればと佐々木に近づく。
(……え?)
近づいた際、たまたま見えた携帯画面には、笑っている望月がうつっていた。そう言えば、以前パワハラを受けていた時も携帯を見ていたが、望月の写真を見ていたのかと合点がいった。
「佐々木さん……あの……大丈夫ですか?」
佐々木は携帯を胸のポケットへしまい、瀬戸へ一言。
「大丈夫だよ。」
ニコッと微笑み、その場から立ち去ってしまった。ここで、追いかけて抱き締めればいいのか?とも思うが、恋愛経験の少ない自分にはわからない。かける言葉も見つからない。
そして結局、瀬戸は1歩も動けなかった。
あの笑顔が、もう追いかけてこないでと言っていたようで……。
残された瀬戸はぼんやり思った。
(佐々木さんは望月さんが好きなんだ……)
疑惑が確信に変わった。
(なんでショック受けてんの俺……)
励ますことも慰めることも、何も出来ない自分にショックを受けたのもあるが。それ以上に自分の気持ちは……。
あーそうか、俺は佐々木さんのことが好きなんだな、と自分の気持ちに気づいてしまった。
今日のホワイトボードをみてみると、望月の欄には『午前中会議』の文字が。そう、望月がいないのだ。そんな日は決まって、加藤の罵声が飛ぶ。
(あ~もうまじ、メンタルやられる……)
聞いているだけで、神経がすり減ってしまう。白目をむいてしまう程精神的にやられている瀬戸だが、しかしそんな自分よりも、もっと懸念されるのは……
(佐々木さん……今日も応接室連れてかれてたな……)
怒鳴られている張本人の、佐々木だ。
相変わらず標的にされており、自分だったらとっくに辞表を出していると思う程、酷い扱いをされている。以前、辞めたくならないのか聞いたことがあったが、まだそこまでの暴力は受けていないから、と自傷気味に言っていた。言葉の暴力だって耐え難いと思う。
何が気に食わなくて佐々木を標的にしているのか。どんなにパワハラをしても、いつも笑顔だから?仕事ができて、周りから信頼を得てるから?いくら考えても分からない。瀬戸は胃が痛む、と、休憩室に逃げ込んだ。
休憩室に入ると、偶然佐々木がいた。
「佐々木さんっ……」
「あ、ごめ……」
椅子に座っている後ろ姿に思わず声をかけたが、佐々木は泣いているようだった。瀬戸に見られまいと、ハンカチで涙と鼻水を拭いていた。
(そうだよな……あんな仕打ち受けて辛くないわけが無いよな。)
そんな佐々木をみて、思わずその場に立ち尽くしてしまう瀬戸。望月のように抱きしめられれば良かったが、そんな事する勇気もなく。でも、それでも少しでも励ませればと佐々木に近づく。
(……え?)
近づいた際、たまたま見えた携帯画面には、笑っている望月がうつっていた。そう言えば、以前パワハラを受けていた時も携帯を見ていたが、望月の写真を見ていたのかと合点がいった。
「佐々木さん……あの……大丈夫ですか?」
佐々木は携帯を胸のポケットへしまい、瀬戸へ一言。
「大丈夫だよ。」
ニコッと微笑み、その場から立ち去ってしまった。ここで、追いかけて抱き締めればいいのか?とも思うが、恋愛経験の少ない自分にはわからない。かける言葉も見つからない。
そして結局、瀬戸は1歩も動けなかった。
あの笑顔が、もう追いかけてこないでと言っていたようで……。
残された瀬戸はぼんやり思った。
(佐々木さんは望月さんが好きなんだ……)
疑惑が確信に変わった。
(なんでショック受けてんの俺……)
励ますことも慰めることも、何も出来ない自分にショックを受けたのもあるが。それ以上に自分の気持ちは……。
あーそうか、俺は佐々木さんのことが好きなんだな、と自分の気持ちに気づいてしまった。
応援ありがとうございます!
8
お気に入りに追加
12
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる