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ー番外編ーヴィオレット*隣国編*
⑥
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ユーロお祖父様からの手紙に、叔父様が孤児院にヴィオラという女性が伺うので話を聞いてほしい。といった内容の手紙を孤児院に送ってくれたらしい。
ヴィオラというのは私の偽名だそうだ。
ウィルトリア公爵家、当主の姪がヴィオレットという名前だと知る者が現れるかもしれない。少しでも危険を排除する為にヴィオラという名前を名乗るように。と書かれていた。
ヴィオラか・・・
その事を話したらお祖父様もお祖母様もケイトも「名前は伏せるべきかもしれませんわね。」「ウィルトリア公爵家の縁者の者が平民にいると知れたら何かに利用されてしまうかもしれないしな・・・」「出来るだけ只の金持ちお嬢様としてこの町に馴染むのがよろしいですわ。」
と言い、私のこれから先名乗る名前はヴィオラになった。
次の日早速私はサンとレイを連れて孤児院に行ってみる事にした。
イブも一緒に行きたいと言っていたなのだが、女性を心底憎んでいる手負いの獣がいる所へは連れて行けないので今回は留守番をしてもらう事になった。
「いいですか。お嬢様彼方からしたら我々はいきなり現れた怪しい者です。いくら公爵家からの紹介だと言っても、上手くいくとは限りません。わかっていますか?・・・」
「大丈夫。一回で上手く行くだなんて思っていないわ・・・話を聞いてもらえるまで諦めない!ヤル気と根性で乗り気ってみせるわ!!」
「お嬢様がヤル気と根性だなんて・・・今ここにケイトさんがいらっしゃってたらお説教ものですね・・・はしたない!と・・・」
「・・ヒッッッ・・・・・た、たとえよ・・・」
「・・・気をつけて・・・・・・」
私がサンの小言を聞いていたら、レイが強張った顔で気を抜くな。と言ってくる・・・
サンもレイもお祖父様からあの危険人物の事情を聞いているからか、暗殺者とかは言わなくなったが、やはり危険だとは思っているみたいで、少し神経がピリピリしている様子だ・・・
先日通った商店を抜けて、真っ直ぐ道を抜けていくと、大きな草原のような所に一件だけ大きな建物がポツーンと建っていた・・・
サンはこの建物の裏側に小さな小屋があり、訳ありの3人が暮らしている。と教えてくれた。
「何だか少し寂しいわね・・・」
「ですが、彼等が安全に暮らす為には必要な場所です。」
昔、別の領地では町中に孤児院があったそうだ。その町はあまり裕福な町ではなかったらしく、仕事にあぶれ、食い物には困り、住人達の心や体は荒れていたそうだ。そこに、自分達より下の立場で、親のいない子供達がいたらどうなるか?
自分達は仕事も食べる物もないのに、最低限の援助を受けている孤児達・・・
恨み妬んだ住人達は日々の怒りや憤りを孤児達ぶつけだした・・・
身元がはっきりしない薄汚い子。何もできない役立たず、町で何かが盗まれると、これだから孤児は・・・と言われ、盗んでいなくても、盗んだだろ!と疑われ決めつけられていた。
それは自分達の暮らしが厳しい中、自分達より下の者にいるべき、いる筈の者達をストレスを発散させる為に口汚い暴言を吐き、限界まで暴行したりなどをして虐げていった・・・
孤児に何をしても助けは来なかった。殴られている人間も、側で見ているだけの人間も声をあげなかった。
何もしようとする人がいなかった・・・だから状況は改善する事もなかった。
それは国が孤児を保護する決まりを作るまで続いた・・・その後孤児院は住民達の居住区から離れた場所に建てられるようになったらしい。
互いに適度な距離感を保った方が精神衛生上良いだろうと判断されたからだ・・・
そして現在、孤児達の人権も表面上守られ、同じ町で他の住民達と暮らしている。
だが実際の孤児は未だまともな仕事にもありつけず半数以上が無惨に命を落として、幸せな人生を送る事ができないでいる・・・
この現状を知った時、私は思った。
少しでも、その現実が良い方に変えられればいい・・・孤児達の命が1人でも救われればいい・・・それが私がこの国でやってみたい事だ
今一度覚悟を決めた私は目の前の大きな建物を見上げた・・・
奥からは沢山の子供達の笑い声や物音が聞こえ、楽しそうだ。建物の右側の草原には大量の洗濯物が一面に干されており、その様子を見ていると、何処か別の世界に迷い混んでいるのではないかと錯覚させられる。
「やっぱり凄い量ね・・・23人の子供がいると・・・」
私が暫く圧倒されて眺めていると・・・
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
私達を遠くから見つめる小さな男の子がいた。
「お客さんが来たぞぉぉぉ!!」
叫びながら此方へと突撃してきた子供をレイがグイッッッと担ぎ上げ「危ない。」と言った
(さ、流石・・・慣れてるわね・・・)
「うわぁぁ。捕まったぁ~!離せぇぇぇ」
5、6歳の男の子だろうか?
レイの無表情など物ともせず、楽しそうに目を輝かせながらケラケラ笑い、レイの腕の中で暴れていた・・・
「あ、あのね・・・ここに・・・」
私がハシャいでいる男の子の声に負けじと話しかけようと声をあげたその時・・・
「あぁぁ!ソラが捕まってる!」
「皆助けに行くぞぉぉぉ!!」
「ソラを離せぇぇ!」
「「「おおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」
かなりの人数の子供達が此方へと向かってきた
「え、え、えぇぇぇぇぇぇ!!!」
「ち、ちょッッッ!お嬢様ッッッ!」
慌てふためく私とサンをよそに、レイがソッと男の子を降ろして私を抱き上げ避難させた。
「うわッ、ちょ、待ちなさいッッッ・・・そ、そこは止めなさい・・・」そこには、子供達に囲まれて揉みくちゃにされているサンと私を抱えながら子供達に怪我を負わせない程度にいなして相手をしているレイがいた・・・
「やっちまぇぇぇぇ!!!」
「あはははははは!」
「逃げられないんだからなぁ!!!」
「ああー!お姫様が捕らわれているよ!!」
小さな女の子が私を見てそう叫んだ・・・すると・・・
「お姫様を助ける騎士は俺だぁぁぁ!!!」
「僕は勇者になるー!!」
「わ、私はお姫様がいい!!」
「ず、ずるーい!私もお姫様ぁ~」
何故か他の遊びに変わったらしく、役の取り合いになっていた・・・
(お、お姫様?・・・薄いレモン色のワンピースに髪の毛を編み込んだ町娘風なんだけど・・・)
私が困惑していると・・・
「お嬢様・・・似合ってる・・お姫様・・」とレイが言ってくれた。
(え・・・っと、それは今日の服装が似合っているからお姫様みたいに見えるって事なのかな?)
私達は孤児院の入り口付近で子供達が騒いでいるのを見ながら和んでいた。
すると・・・ゾクッッッっと!何かに睨みつけられているような、よくわからない恐怖が全身に駆け巡っていった・・・
ヴィオラというのは私の偽名だそうだ。
ウィルトリア公爵家、当主の姪がヴィオレットという名前だと知る者が現れるかもしれない。少しでも危険を排除する為にヴィオラという名前を名乗るように。と書かれていた。
ヴィオラか・・・
その事を話したらお祖父様もお祖母様もケイトも「名前は伏せるべきかもしれませんわね。」「ウィルトリア公爵家の縁者の者が平民にいると知れたら何かに利用されてしまうかもしれないしな・・・」「出来るだけ只の金持ちお嬢様としてこの町に馴染むのがよろしいですわ。」
と言い、私のこれから先名乗る名前はヴィオラになった。
次の日早速私はサンとレイを連れて孤児院に行ってみる事にした。
イブも一緒に行きたいと言っていたなのだが、女性を心底憎んでいる手負いの獣がいる所へは連れて行けないので今回は留守番をしてもらう事になった。
「いいですか。お嬢様彼方からしたら我々はいきなり現れた怪しい者です。いくら公爵家からの紹介だと言っても、上手くいくとは限りません。わかっていますか?・・・」
「大丈夫。一回で上手く行くだなんて思っていないわ・・・話を聞いてもらえるまで諦めない!ヤル気と根性で乗り気ってみせるわ!!」
「お嬢様がヤル気と根性だなんて・・・今ここにケイトさんがいらっしゃってたらお説教ものですね・・・はしたない!と・・・」
「・・ヒッッッ・・・・・た、たとえよ・・・」
「・・・気をつけて・・・・・・」
私がサンの小言を聞いていたら、レイが強張った顔で気を抜くな。と言ってくる・・・
サンもレイもお祖父様からあの危険人物の事情を聞いているからか、暗殺者とかは言わなくなったが、やはり危険だとは思っているみたいで、少し神経がピリピリしている様子だ・・・
先日通った商店を抜けて、真っ直ぐ道を抜けていくと、大きな草原のような所に一件だけ大きな建物がポツーンと建っていた・・・
サンはこの建物の裏側に小さな小屋があり、訳ありの3人が暮らしている。と教えてくれた。
「何だか少し寂しいわね・・・」
「ですが、彼等が安全に暮らす為には必要な場所です。」
昔、別の領地では町中に孤児院があったそうだ。その町はあまり裕福な町ではなかったらしく、仕事にあぶれ、食い物には困り、住人達の心や体は荒れていたそうだ。そこに、自分達より下の立場で、親のいない子供達がいたらどうなるか?
自分達は仕事も食べる物もないのに、最低限の援助を受けている孤児達・・・
恨み妬んだ住人達は日々の怒りや憤りを孤児達ぶつけだした・・・
身元がはっきりしない薄汚い子。何もできない役立たず、町で何かが盗まれると、これだから孤児は・・・と言われ、盗んでいなくても、盗んだだろ!と疑われ決めつけられていた。
それは自分達の暮らしが厳しい中、自分達より下の者にいるべき、いる筈の者達をストレスを発散させる為に口汚い暴言を吐き、限界まで暴行したりなどをして虐げていった・・・
孤児に何をしても助けは来なかった。殴られている人間も、側で見ているだけの人間も声をあげなかった。
何もしようとする人がいなかった・・・だから状況は改善する事もなかった。
それは国が孤児を保護する決まりを作るまで続いた・・・その後孤児院は住民達の居住区から離れた場所に建てられるようになったらしい。
互いに適度な距離感を保った方が精神衛生上良いだろうと判断されたからだ・・・
そして現在、孤児達の人権も表面上守られ、同じ町で他の住民達と暮らしている。
だが実際の孤児は未だまともな仕事にもありつけず半数以上が無惨に命を落として、幸せな人生を送る事ができないでいる・・・
この現状を知った時、私は思った。
少しでも、その現実が良い方に変えられればいい・・・孤児達の命が1人でも救われればいい・・・それが私がこの国でやってみたい事だ
今一度覚悟を決めた私は目の前の大きな建物を見上げた・・・
奥からは沢山の子供達の笑い声や物音が聞こえ、楽しそうだ。建物の右側の草原には大量の洗濯物が一面に干されており、その様子を見ていると、何処か別の世界に迷い混んでいるのではないかと錯覚させられる。
「やっぱり凄い量ね・・・23人の子供がいると・・・」
私が暫く圧倒されて眺めていると・・・
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
私達を遠くから見つめる小さな男の子がいた。
「お客さんが来たぞぉぉぉ!!」
叫びながら此方へと突撃してきた子供をレイがグイッッッと担ぎ上げ「危ない。」と言った
(さ、流石・・・慣れてるわね・・・)
「うわぁぁ。捕まったぁ~!離せぇぇぇ」
5、6歳の男の子だろうか?
レイの無表情など物ともせず、楽しそうに目を輝かせながらケラケラ笑い、レイの腕の中で暴れていた・・・
「あ、あのね・・・ここに・・・」
私がハシャいでいる男の子の声に負けじと話しかけようと声をあげたその時・・・
「あぁぁ!ソラが捕まってる!」
「皆助けに行くぞぉぉぉ!!」
「ソラを離せぇぇ!」
「「「おおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」
かなりの人数の子供達が此方へと向かってきた
「え、え、えぇぇぇぇぇぇ!!!」
「ち、ちょッッッ!お嬢様ッッッ!」
慌てふためく私とサンをよそに、レイがソッと男の子を降ろして私を抱き上げ避難させた。
「うわッ、ちょ、待ちなさいッッッ・・・そ、そこは止めなさい・・・」そこには、子供達に囲まれて揉みくちゃにされているサンと私を抱えながら子供達に怪我を負わせない程度にいなして相手をしているレイがいた・・・
「やっちまぇぇぇぇ!!!」
「あはははははは!」
「逃げられないんだからなぁ!!!」
「ああー!お姫様が捕らわれているよ!!」
小さな女の子が私を見てそう叫んだ・・・すると・・・
「お姫様を助ける騎士は俺だぁぁぁ!!!」
「僕は勇者になるー!!」
「わ、私はお姫様がいい!!」
「ず、ずるーい!私もお姫様ぁ~」
何故か他の遊びに変わったらしく、役の取り合いになっていた・・・
(お、お姫様?・・・薄いレモン色のワンピースに髪の毛を編み込んだ町娘風なんだけど・・・)
私が困惑していると・・・
「お嬢様・・・似合ってる・・お姫様・・」とレイが言ってくれた。
(え・・・っと、それは今日の服装が似合っているからお姫様みたいに見えるって事なのかな?)
私達は孤児院の入り口付近で子供達が騒いでいるのを見ながら和んでいた。
すると・・・ゾクッッッっと!何かに睨みつけられているような、よくわからない恐怖が全身に駆け巡っていった・・・
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