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「君と出かけられるなんて今日はいい日だなぁ」
馬車に乗り込み、向き合って座るフィンは相変わらずデレデレとした表情でリナを見つめていた。
その視線の煩さと軽い発言がなければフィンはもっと女性人気がありそうなのにと、リナは白んだ目でフィンから外へと視線を向けた。
「それにしてもさ」
リナに無視をされている事に不平も言わずに何が楽しいのかリナを見ていたフィンが突然真面目な声をだした。
先程までこちらの耳が腐りそうなほど口説き文句を言っていた甘い声音が掻き消え、リナは不思議そうに首を傾げた。
フィンの特徴ある細い目から黄金色が覗く。
「先輩と仲直りできたの?」
「……まだよ」
「……わぁお」
フィンの言葉にリナはわかりやすく動揺してみせた。
アギロにバレてしまった事で、フィンとゼロは随分と絞られた事を聞いていたリナは申し訳なく思いながらそれでも正直に言えなかった。
フィンもゼロもリナに何か言ってくることはなかったが、トーマスによってこってり絞られたという話を聞いただけに顔を背けてリナは答えた。
あの言い合いとも言えないアギロとの意見のぶつけ合いをしてからリナはアギロの姿を見る事はおろか、声すらも聞いていなかった。
アギロと1日中、口を聞かないことなど殆どなかったリナにとってアギロが自分を避けているのだと気付くのはすぐだった。
トーマスにアギロの事を尋ねても、トーマスはリナに詳細を話してくれなかった。
「お嬢様、アギロ様が屋敷を開けるのは珍しくないですから…」そういったトーマスの言葉でリナはアギロがリナの為に仕事を調整してくれてリナに時間を作っていてくれていた事を初めて知った。
そんな優しいアギロの琴線に触れてしまった事を理解しておきながらリナはアギロに謝るつもりも反省するつもりもなかった。
あの人に認めてもらいたい。
そんなリナの気持ちを知ってか知らずか、こうしていまもフィンもゼロも、トーマスもリナに協力してくれている。
そんな甘やかされているとわかっている環境に身を置きながら危険を顧みようとしないリナはアギロに反対されたとしても、アフロディーテとして振舞う事を止めるつもりはなかった。
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