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第一篇
83.掌中の珠 1 ※
しおりを挟む「……本来であれば、《婚礼の儀》の夜を初夜と呼んで、内儀と初めて同じ寝間で一晩を過ごすのだが、翠月とはすでに隣で寝ている」
「緑翠さま?」
寝間にある机で日記をつけていた翠月が、首を傾げながら緑翠を見た。当然だろう。普段なら、翠月が寝ていることを想定して静かに襖を開ける緑翠が、いきなり踏み入ってきたと思えば、翠月に迫っているのだから。
顎に触れ、目線を合わせる。翠月は、逸らせないだろう。
「翠月……、身体を、預けて欲しい。嫌か?」
咄嗟だったのかもしれないが、翠月は頭を横に振った。ずっと床見世を許可しなかったため、宮番や上位芸者には、緑翠の意図が伝わっていただろう。昼間に夜光と会ったばかりで、疲れているかもしれないが、今夜ほど床に誘うことを勢いに任せられる日もない。
「……緑翠さま?」
「怖かったり辛かったら、言え」
戸惑っている様子の翠月に、罪悪感が湧く。翠月が想定していなかったことが明確になったが、戻りはしない。袖に入れていた、芸者にも渡している香油と避妊薬を、枕元に置いた。
(翠月の反応を、見逃さなければいいだけだ。俺が深碧館に来た折とは、異なる)
「御客との床ではない。力を抜いて、俺に任せろ」
口を寄せながら翠月を胡坐の上に座らせ、後ろから着物の襟ぐりを大きく開いた。うなじに口付けながら帯を緩め、着物の中へ手を伸ばす。
「翠月は、どうされたい?」
「んっ…」
(煽ってはみるが……)
翠月の床での好みを、緑翠は全く知らなかった。楼主としての床の知識はあるが、自発的に望んで床に入ろうと思った女はいないし、翠月が見学した床見世も、実際に見たわけではなく、漏れ聞こえた声や音からの想像でしかない。
「っ……」
小柄ではあるが、翠月の胸は柔らかくて、程よい大きさも張りもあって、形もいい。仕事柄、そこに気付いてしまうのは性だろう。
淡雪の座敷で受けていた手技が、翠月の身体をここまでのものに仕上げたのだとすれば、見世以外にも役立つとは思っていなかった。乳首にも触れながら、話しかける。
「ゆっくり進むのと激しいの、どちらが好みだ?」
「…初めてですよ?」
「床は今も見ることがあるだろう? されたいと思ったのは?」
「……ゆっくり」
「怖いか?」
「緊張はしています、んっ」
首から耳へ舌を滑らせると、翠月が震える。そのまま耳を舐めていると、翠月が自身の手で口元を隠してしまう。
「こちらを向いて」
指で唇をなぞってから、口を寄せる。親指で開かせた後、舌を入れ歯をなぞり、追い回す。ここまで濃い口付けはおそらく、唾液が交換されるため妖力の受け渡しにも効果的なのだろうが、緑翠は今まで、してこなかった。
(やはり、翠となら、嫌な気はしない。むしろ、高まってくる)
「んっ…、はぁっ…」
口を離すと、翠月は息を乱して身体を預けてくる。緑翠は、背中からぞくぞくと、身体の中心に何かが滾ってくるのを感じた。小さな身体を支えながら、着物を全て脱がせ、そっと上に乗り掛かる。小さな桃色の主張した頂きに、息を吹きかける。
「んっ…」
そのまま口に含み、少し吸い付いてやると、声が上がる。ちろちろと舌先で、たまに全体で大きく舐めると、翠月の身体が動く。背中を反ったり、膝を曲げ足が上がり、緑翠を蹴ってくる。
「我慢するな。黄玉と違って結界がある。声は漏れない」
「うんっ…」
「痛くないか?」
「ん」
足を開かせ、秘部を確認するように触れると、すでに濡れていた。馴染ませた指を硬くなった蕾に当て、擦ってやる。
「あっ、…んんっ」
「唇を噛むな、傷になる」
翠月の口をこじ開けるように、薬指と小指を横に差し入れる。
「噛みたかったら、噛んでいいぞ」
「んん!」
慌てて首を振ろうとし、翠月はその指を出そうと手首を掴んでくるが、翠月が緑翠に、力で勝てるわけがない。秘部からさらに溢れる愛液を蕾へ塗りつけてやれば、たちまち意識はそちらへ持っていかれるだろう。
「んんっ、…あっ、んっ」
「一度、果てておくか」
「んっ、…あっ、……あっ、んん」
涙目で何かを訴えながら、指を噛んでくる翠月の額に、口を寄せる。手首を握る手にも、力が入っている。
「…んんっ!」
背中を反った後、翠月の身体が脱力する。掴んでいた手も、ただ添えるだけになる。挿入前に果ててしまうと蜜壷は狭まって、受け入れにくくなるとも読んだが、翠月はどうだろう。
翠月が果てるところを見るのは、初めてではない。淡雪の手技を受けた翠月を迎えに行った折に、苦しんでいるように見え手伝った。今回は、それとは全く異なる。緑翠が、挿入することを望み、それを成就させるための、愛撫だ。
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