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東の国編
14.守護魔術(※)
しおりを挟む「へえ、一回暴走して回復できなくても、まだ保ってられるんだ? これが天然オッドアイの力?」
また、あの魔術師の声だ。他にも、暴走していない、人工オッドアイの手術を受けていない、まともな魔術師を何人か連れてきているのが分かる。
何度繰り返しても、ルークとミアが暴走状態の魔術師を回復させることはない。ルークが暴走するのを、見るためなのだろうか。隣に居るのが感じられるミアを、暴走させなければそれでいい。
「さあ、オレの仲間を助けるために頑張ってよ」
「ぐっ…」
同じ傷口から、魔力を注がれる。相手の魔力が、ルークの中に増えていく。より制御しにくく、暴走しやすくなる。ルークの中に入ってきた魔力は、やはり一人の魔力とするには違和感がある。この魔術師は、魔力制御に成功している人工オッドアイだ。
当然のように目隠しをされていて見えないが、鈍ったルークの感覚でも気配で分かる。魔術師が、ミアに近づいてる。
「なっ、守護魔術…」
起きたことは、だいたいルークの想定通りだろう。
おそらく、魔術師がルークにしたように、ミアにも傷を作ろうとした。それを、ミアは弾いたのだ。手枷をしている状態でも魔術で跳ね返すことは可能だ。ルークが、ミアに守護魔術をかけているから。
ミアの臍の印は、妊娠を防ぐための印だ。ミアに伝えたことは事実だが、それに加えて、ルークは守護魔術も同じタイミングで掛けた。ルークに何かあっても、ミアを護ることができるように。相当な魔力を入れ込んだから、この一度きりの発動ではないはずだ。
「お前、やるじゃん。もっと、オレの魔力に酔えよ」
「う…」
ルークの体内に入れられる魔力量が増える。ただでさえ、もうルークの魔力の割合は相手の魔力に削られているし、自分を保つための精神も残り僅かだ。辛うじて繋いでいた理性は、すぐに飛んで行った。
☆
ミアは、何も聞かされていなかった。ルークがミアにかけたのは、妊娠しないようにする医療魔術のはず。守護魔術も、かけていたなんて。
「ミアだっけ」
交わりの途中で話しかけられても、そこに向けられる意識は限られている。暴走する魔術師が無理矢理交わってくるその魔力から、自分を保っていなければ、生き残れない。
ルークが暴走状態である今、ミアは何としても自我を保っていないと。解放されてルークと交われる時が来れば、暴走していないミアがルークを助けられる。
「オレ、ミアには触れられねえよ」
「どういうことでしょう」
「ルークがかけてる守護魔術が強すぎる。この子に攻撃はできねえよ。例え魔術であってもな」
「そんな…、ルイス様を以てしても?」
「そうだ。崩すには、人工オッドアイが十人は要る。もっと要るかも」
「十人…?」
「とんでもねえ魔力だよ。一般人が近くにいたら、さっきの跳ね返しでとっくに死んでる」
一人はルークを暴走させた人の声だと思うけど、もう一人は…? 本能のまま垂れ流されてるルークの魔力を浴びても話していられるなら、この人も強い魔術師なのかもしれない。
「…ルイス様、緊急事態です! 国王様がお呼びです!」
「ん、なんだ、とりあえず向かう。お前はミアを部屋に」
「はっ」
うっすら残る意識で、ミアは考える。緊急事態ってなんだろう。魔術師を呼びに来た人は慌てていたけど、魔術師たちは落ち着いてた。
ミアを暴走させることはできないから、磔を解かれて強い結界の生活部屋に戻される。状況を聞く気力はなくて、ミアは生活部屋の扉が閉まると、そのまま寝台へと倒れ込んだ。
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