真っ白子犬の癒やし方

雨宮くもり

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2 赤い雫

2-4 好きだぜ、もふもふ

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「ごめんなさい。ふだんは出さないようにしてるんです。でも感情が荒ぶるとつい……」

「好きだぜ、もふもふ。二人っきりのときならモロ出しのままでいいぞ」

「はうッ!」

 ほっぺを真っ赤にさせたテルは再びビクンと震え上がった。
 とっさに頭に手を当てて耳の出現こそ死守したが、ホコリまみれのしっぽがローブの下から見事にこぼれた。


「また荒ぶっちまったか?」

「荒ぶっちまいました。……う、嬉しくて」

 テルは恥ずかしすぎて今にも死にそうだという風にくちびるを噛む。

「ぼく……なにからなにまで未熟で本当に恥ずかしいです。変なやつで……ごめんなさい……」

「そんなことねぇよ。他の部屋にいるヤツらだって特殊だぜ? 黒魔道士志望なのに雷が怖くて雷属性断固拒否してるヤツとか、経験値稼ぎで見つけたはずの銀色のスライムを溺愛して飼ってるヤツとか……」

 なんとか励まそうとしたのだが、テルは押し黙ったまま返事をしてくれない。


「よしよし」


 うつむく頭のてっぺんにオレは思わず手を置いていた。

 息を飲むほどサラサラした髪だった。
 オレのボッサボサの黒髪とはわけが違う。まるで上質なシルク糸のよう。
 もし悪い奴らに目をつけられたらバッサリ切られて高値で売買されるかも──そんな不安が脳裏をよぎってしまったぐらいの美しさ。

 なにより、いい香りがする。
 焼き立てのパンを頬張ったときに似た、甘くて優しいちいさな幸せが胸の奥をくすぐる。ふわっと包み込まれるような癒やしだった。
 どこかで嗅いだことがあるような──。

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