真っ白子犬の癒やし方

雨宮くもり

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10 光の矢

10-6 いい返事

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「ずいぶんと口が悪いなぁ、犬。さんざん可愛がってやった恩を忘れたの? 汚ぇ犬のくせに……どこにいっても本当にバカ犬はバカ犬だな……」

 ぼつりぼつりと唾を吐き捨てるようにスフェーンが言う度、テルの震えがどんどん大きくなる。
 顔も青ざめて明らかに様子がおかしい。昨夜、急に怯え始めたときにそっくりだ。

「大丈夫か、テル。一緒に、逃げるぞ……」

 治癒魔法のおかげで体力が少し回復した俺は立ち上がった。縮こまるテルの膝に腕を通し、しっかりと抱きかかえる。

「はいっ」

 テルは俺の首に腕を回し、胸に鼻を押し付けてうなずいた。

「いい返事だ」


 スフェーンから逃れるために走り出した俺の背後から、叫び声とも鳴き声とも言えないけたたましい音がした。金属を狂ったように引っ掻き回しているような──。



『逃さねぇぞおおおおッッッ!!!』


 金属音がかろうじて言葉に聞こえた瞬間、地面が激しく揺れた。おまけに天井からパラパラと砂や石が落ちてくる。
 立ち止まって後ろを確認する余裕は無い。
 テルを落とさないことだけに集中しながら一心不乱に石の階段を駆け上がっていく。

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