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本編
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突然の口づけに驚き、リリーは小さく口を開いてしまった。そんな瞬間を逃さずに、アルバンはリリーの口内に自らの舌を差し込み、そのままリリーの口内を舐め上げていく。その行為は、リリーにとって気持ちのいいものではなかった。
「んぅ……!」
リリーの口内を蹂躙するのは、アルバンの舌。アルバンはリリーのことを愛おしいとでも言いたげに、何度も何度も口づけを施してきた。時には触れるだけのものを。時には舌を差し込んだ深いものを。そんな時間が永遠に続くかと思ってしまったリリーは、大粒の涙をこぼしてしまう。
「……リリー。どうして、泣いているのですか?」
リリーが、泣いている。
それに気が付いたアルバンは、口づけを止め、リリーの頬を伝う涙を拭っていた。しかし、どれだけ優しくされたところで、前までのようにときめくことはない。無理やり自身に覆いかぶさり、口づけをしてきた相手にときめけという方が無理だった。
「だ、だって! なんで、なんで……! こんなことを、するんですか……。触らないで……!」
そう半ば叫ぶようにリリーは言葉を発すると、アルバンを強くにらみつけた。アルバンは、自分の婚約者でも夫でもない。だから、触れるなんてことはマナー違反を通り越して犯罪だ。そう、リリーは思っていた。そのため、涙目で強くアルバンを睨みつける。
そんなリリーの態度を見たアルバンは、小さく「どうして」と言葉を零していた。瞳に籠められた感情は、本当に「どうして拒絶されているのかが分からない」とでも言いたげで。リリーは軽い違和感を覚えてしまう。どうして、この人はこんな表情をするのだろうか。ショックを受けているのは、裏切られて、騙された自分だというのに。
「リリー。貴女のことを、俺はずっと見ていたんだ。いつか俺と結婚してもらう。そう、願っていたのに。貴女は……俺の運命の人なのに」
「い、意味が、わからな――」
「リリー。好きですよ、大好きです、愛しています。だから……大人しく、俺と結婚してください」
アルバンはそう言うと、リリーの唇にまた口づける。リリーだどれだけ拒否しようとしても、拘束魔法の所為で全く身体が動かない。唯一動くはずの手は、しっかりとアルバンによって寝台に縫い付けられている。それが、リリーの恐怖を加速させた。
「いやっ! こんなことをする人と、結婚なんてしたくない!」
しかし、リリーは折れなかった。きっと、普通の女性ならばこんなことになってしまった時点で、絶望してすべてがどうでもよくなってしまうだろう。だが、リリーは違った。ただ、自らの意見をアルバンにぶつけ続ける。自身を強くにらみつけ、敵意を隠さないリリーにどれだけアルバンの心が乱されているかなんて、リリーは想像もしていないだろう。
「……リリー。どうして、どうしてわかってくれないんですか! 貴女を幸せにできるのは俺しかいないはずなのに! あんな男から解放してやろうとしているのに! ……あぁ、分かりました」
アルバンの心は、乱されていた。
リリーに拒否されたこと。
リリーに拒絶されたこと。
リリーに睨みつけられたこと。
リリーに敵意を向けられたこと。
そのすべてが、アルバンの心を蝕んでいく。アルバンは、リリーが欲しかった。リリーだけが欲しかった。ずっと見つめていたのだ。明るくて、笑顔の可愛らしいリリー・ドーレスという子爵令嬢を。
「貴女の行動だって、好みだって、苦手なものだって、俺は全部把握している。そんなのは俺だけなんだ。婚約を破棄されて、ようやく機会が巡ってきたと思ったのに……。貴女は、俺のことを拒絶するんですね」
アルバンはそれだけを言うと、リリーの髪を優しく手で梳いた。その手つきはとても優しいものであり、リリーのことを大切に思っているということが伝わってくる。しかし、その行動さえもリリーにとっては恐怖を煽るものでしかない。
「……リリー。俺は貴女を愛している。ようやく、手に入ると思ったのに。心も身体も、全部、全部ようやく手に入るはずだったのに……。リリーも、俺のことを受け入れてくれると思っていたのに……」
「う、受け入れられるわけが、ない、の……」
「……もういいです。俺を拒絶する貴女の言葉なんて、聞きたくない」
それだけを言ったアルバンは、リリーに口づけを一度だけ施すと、リリーの身に付けているドレスに手をかけた。抵抗するすべのないリリーは、ただその場で怯えることしか出来なかった。
「リリー、俺は貴女が好きだ。大好きだ、愛している。……でも、貴女は俺のことを愛してくれないんですね。でも、大丈夫。今から、俺がどれだけ貴女を愛しているかを教えてあげますから。そして、俺のことを好きになって。俺なしじゃ生きることが出来なくなって、俺に依存してください」
アルバンはそう言うと、懐から短剣を取り出し、リリーのドレスを切り裂き始めた。リリーの肌を傷つけないように、丁寧に、ゆっくりと……。
「んぅ……!」
リリーの口内を蹂躙するのは、アルバンの舌。アルバンはリリーのことを愛おしいとでも言いたげに、何度も何度も口づけを施してきた。時には触れるだけのものを。時には舌を差し込んだ深いものを。そんな時間が永遠に続くかと思ってしまったリリーは、大粒の涙をこぼしてしまう。
「……リリー。どうして、泣いているのですか?」
リリーが、泣いている。
それに気が付いたアルバンは、口づけを止め、リリーの頬を伝う涙を拭っていた。しかし、どれだけ優しくされたところで、前までのようにときめくことはない。無理やり自身に覆いかぶさり、口づけをしてきた相手にときめけという方が無理だった。
「だ、だって! なんで、なんで……! こんなことを、するんですか……。触らないで……!」
そう半ば叫ぶようにリリーは言葉を発すると、アルバンを強くにらみつけた。アルバンは、自分の婚約者でも夫でもない。だから、触れるなんてことはマナー違反を通り越して犯罪だ。そう、リリーは思っていた。そのため、涙目で強くアルバンを睨みつける。
そんなリリーの態度を見たアルバンは、小さく「どうして」と言葉を零していた。瞳に籠められた感情は、本当に「どうして拒絶されているのかが分からない」とでも言いたげで。リリーは軽い違和感を覚えてしまう。どうして、この人はこんな表情をするのだろうか。ショックを受けているのは、裏切られて、騙された自分だというのに。
「リリー。貴女のことを、俺はずっと見ていたんだ。いつか俺と結婚してもらう。そう、願っていたのに。貴女は……俺の運命の人なのに」
「い、意味が、わからな――」
「リリー。好きですよ、大好きです、愛しています。だから……大人しく、俺と結婚してください」
アルバンはそう言うと、リリーの唇にまた口づける。リリーだどれだけ拒否しようとしても、拘束魔法の所為で全く身体が動かない。唯一動くはずの手は、しっかりとアルバンによって寝台に縫い付けられている。それが、リリーの恐怖を加速させた。
「いやっ! こんなことをする人と、結婚なんてしたくない!」
しかし、リリーは折れなかった。きっと、普通の女性ならばこんなことになってしまった時点で、絶望してすべてがどうでもよくなってしまうだろう。だが、リリーは違った。ただ、自らの意見をアルバンにぶつけ続ける。自身を強くにらみつけ、敵意を隠さないリリーにどれだけアルバンの心が乱されているかなんて、リリーは想像もしていないだろう。
「……リリー。どうして、どうしてわかってくれないんですか! 貴女を幸せにできるのは俺しかいないはずなのに! あんな男から解放してやろうとしているのに! ……あぁ、分かりました」
アルバンの心は、乱されていた。
リリーに拒否されたこと。
リリーに拒絶されたこと。
リリーに睨みつけられたこと。
リリーに敵意を向けられたこと。
そのすべてが、アルバンの心を蝕んでいく。アルバンは、リリーが欲しかった。リリーだけが欲しかった。ずっと見つめていたのだ。明るくて、笑顔の可愛らしいリリー・ドーレスという子爵令嬢を。
「貴女の行動だって、好みだって、苦手なものだって、俺は全部把握している。そんなのは俺だけなんだ。婚約を破棄されて、ようやく機会が巡ってきたと思ったのに……。貴女は、俺のことを拒絶するんですね」
アルバンはそれだけを言うと、リリーの髪を優しく手で梳いた。その手つきはとても優しいものであり、リリーのことを大切に思っているということが伝わってくる。しかし、その行動さえもリリーにとっては恐怖を煽るものでしかない。
「……リリー。俺は貴女を愛している。ようやく、手に入ると思ったのに。心も身体も、全部、全部ようやく手に入るはずだったのに……。リリーも、俺のことを受け入れてくれると思っていたのに……」
「う、受け入れられるわけが、ない、の……」
「……もういいです。俺を拒絶する貴女の言葉なんて、聞きたくない」
それだけを言ったアルバンは、リリーに口づけを一度だけ施すと、リリーの身に付けているドレスに手をかけた。抵抗するすべのないリリーは、ただその場で怯えることしか出来なかった。
「リリー、俺は貴女が好きだ。大好きだ、愛している。……でも、貴女は俺のことを愛してくれないんですね。でも、大丈夫。今から、俺がどれだけ貴女を愛しているかを教えてあげますから。そして、俺のことを好きになって。俺なしじゃ生きることが出来なくなって、俺に依存してください」
アルバンはそう言うと、懐から短剣を取り出し、リリーのドレスを切り裂き始めた。リリーの肌を傷つけないように、丁寧に、ゆっくりと……。
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