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第1章 お見合い相手は同業者!? その場で結婚決まりですか?
第10話
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「も、申し訳ございません。今すぐ、お祖父さまを止めてきます――!」
燎さんにそう告げて、慌てて駆けだそうとする私。けれど、燎さんはそんな私の手首をつかんでこられた。
驚いて、彼のほうに視線を向ける。彼の目には、とても温かい感情が宿っているようだった。
「……あんたは、俺との結婚、嫌か?」
「……え」
唐突にそう問いかけられて、私がきょとんとする。燎さんは、ただ真剣な面持ちで私のことをじぃっと見つめていらっしゃった。
(嫌なわけ、ないじゃない……)
もしも嫌だったら、私は結婚を前提に付き合うことに、了承したりしない。
そう、そうで――。
「嫌なわけ、ないじゃないですかっ……!」
彼の目をしっかりと見つめて、そう言う。すると、彼は肩をすくめられた。
「じゃあ、別に止める必要はない」
その言葉の意味がわからなくて、私はきょとんとする。燎さんは、私の唇をその指でなぞった。
……少しささくれた、男の人の指。……私の胸が、ドキッとする。
「俺は、あんたと今すぐにでも結婚していいって、思ってるから」
ふっと口元を緩めて、色っぽい表情で燎さんがそう言ってくださる。
……ドキドキと、早鐘に鼓動が鳴る。もう、私の顔は真っ赤で見るに堪えない状態だろう。
それは、わかる。
「……わ、わたし、は」
正直なところ、まだ全然知らない人との結婚に、不安がないわけじゃない。もしかしたら、これは燎さんの表の姿で、裏の姿は全然違うかも――とまで思って、私は彼を見つめる。
彼の目は、真剣だった。……このお人は、私の気持ちを弄んでいるわけじゃない。瞬時に、それが伝わってくる。
私の手が、自然と私の唇をなぞる彼の指を掴む。私のとは全然違う指。……なんていうか、触れているだけでドキドキする。
「私も……その、別に、大丈夫、です……」
そこは可愛らしく「私も……」と、言えればよかったのに。生憎生粋の素直になれない部分が表に出てしまって、私は視線を下げながらそう言うことしか出来ない。
それでも、燎さんには十分だったらしい。彼の指が、すっと私の頬に移動する。……撫でられているようで、身体が昂るような感覚だった。
「そうか。……あんたも同じ気持ちで、嬉しいよ」
……そんなことをおっしゃるなんて、反則過ぎる。こんなにも、ドキドキさせるなんて――。
(男の人って、すごいっ……!)
今までろくに男性とかかわってきた経験がない所為で、異性に対する免疫はマイナスの私。……もう、やられたい放題だったのかもしれない。
「顔、真っ赤だけど?」
私の顔を覗き込んでこられた燎さんが、茶化すようにそうおっしゃる。……そんなの、自分が一番理解している。だから、言わないで――……!
「言わないで、くださいっ」
自分の顔を手で覆って、私は震える声でそう言う。そうすれば、燎さんが笑ったのがわかった。
……からかわれた。
それを理解するのに、時間はかからなくて。私は、指の隙間から燎さんを見つめる。……男らしい、顔立ちの人。
「こんなにも可愛らしい嫁を貰えるなんて、俺は幸せだ」
「……か、からかわ、ないでっ!」
「俺は、本気だけれど?」
そんな余裕たっぷりで、そんなことを言われると――私の心臓が、破裂しそうになる。
それほどまでに、心臓が音を鳴らして、収まってくれない。
(燎さんのバカ! バカっ!)
これは一種の八つ当たりだ。知ってる。けど、そうしないと、やっていられなかった、のかも、しれない。
こうして、私は燎さんとの結婚が、この日のうちに決まってしまったのです――……。
燎さんにそう告げて、慌てて駆けだそうとする私。けれど、燎さんはそんな私の手首をつかんでこられた。
驚いて、彼のほうに視線を向ける。彼の目には、とても温かい感情が宿っているようだった。
「……あんたは、俺との結婚、嫌か?」
「……え」
唐突にそう問いかけられて、私がきょとんとする。燎さんは、ただ真剣な面持ちで私のことをじぃっと見つめていらっしゃった。
(嫌なわけ、ないじゃない……)
もしも嫌だったら、私は結婚を前提に付き合うことに、了承したりしない。
そう、そうで――。
「嫌なわけ、ないじゃないですかっ……!」
彼の目をしっかりと見つめて、そう言う。すると、彼は肩をすくめられた。
「じゃあ、別に止める必要はない」
その言葉の意味がわからなくて、私はきょとんとする。燎さんは、私の唇をその指でなぞった。
……少しささくれた、男の人の指。……私の胸が、ドキッとする。
「俺は、あんたと今すぐにでも結婚していいって、思ってるから」
ふっと口元を緩めて、色っぽい表情で燎さんがそう言ってくださる。
……ドキドキと、早鐘に鼓動が鳴る。もう、私の顔は真っ赤で見るに堪えない状態だろう。
それは、わかる。
「……わ、わたし、は」
正直なところ、まだ全然知らない人との結婚に、不安がないわけじゃない。もしかしたら、これは燎さんの表の姿で、裏の姿は全然違うかも――とまで思って、私は彼を見つめる。
彼の目は、真剣だった。……このお人は、私の気持ちを弄んでいるわけじゃない。瞬時に、それが伝わってくる。
私の手が、自然と私の唇をなぞる彼の指を掴む。私のとは全然違う指。……なんていうか、触れているだけでドキドキする。
「私も……その、別に、大丈夫、です……」
そこは可愛らしく「私も……」と、言えればよかったのに。生憎生粋の素直になれない部分が表に出てしまって、私は視線を下げながらそう言うことしか出来ない。
それでも、燎さんには十分だったらしい。彼の指が、すっと私の頬に移動する。……撫でられているようで、身体が昂るような感覚だった。
「そうか。……あんたも同じ気持ちで、嬉しいよ」
……そんなことをおっしゃるなんて、反則過ぎる。こんなにも、ドキドキさせるなんて――。
(男の人って、すごいっ……!)
今までろくに男性とかかわってきた経験がない所為で、異性に対する免疫はマイナスの私。……もう、やられたい放題だったのかもしれない。
「顔、真っ赤だけど?」
私の顔を覗き込んでこられた燎さんが、茶化すようにそうおっしゃる。……そんなの、自分が一番理解している。だから、言わないで――……!
「言わないで、くださいっ」
自分の顔を手で覆って、私は震える声でそう言う。そうすれば、燎さんが笑ったのがわかった。
……からかわれた。
それを理解するのに、時間はかからなくて。私は、指の隙間から燎さんを見つめる。……男らしい、顔立ちの人。
「こんなにも可愛らしい嫁を貰えるなんて、俺は幸せだ」
「……か、からかわ、ないでっ!」
「俺は、本気だけれど?」
そんな余裕たっぷりで、そんなことを言われると――私の心臓が、破裂しそうになる。
それほどまでに、心臓が音を鳴らして、収まってくれない。
(燎さんのバカ! バカっ!)
これは一種の八つ当たりだ。知ってる。けど、そうしないと、やっていられなかった、のかも、しれない。
こうして、私は燎さんとの結婚が、この日のうちに決まってしまったのです――……。
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