欲にまみれた楽しい冒険者生活

393見張り棟

ゴルゴとサブが王都に戻った数日後、国王がバラン将軍、ヨギ魔導士と兵士、魔導士を連れてやって来た。
ＯＺやエチゴ達やワンガ達冒険者は頭を下げて迎えたのだが

「顔を上げろ。魔獣が居る様な場でその様な礼は必要ない。」

国王に言われて全員が顔を上げる。

「素晴らしいな。これが王都を守る壁か。皆、良くやってくれた。
　所で拓殿、一つ頼まれてくれないか？」

国王から受けた依頼は見張り棟の作成だった。
拓が了承すると、以前開拓地で手伝ってくれた土系の魔導士や他にも数人が前に出て来た。

「拓殿、宜しくお願いします。」

改めて拓と挨拶をすると、ヨギ魔導士が指示を出す。

「バラン将軍、拓殿の造った壁を使って魔獣討伐の指揮を頼む。
　ワンガ達冒険者は塔を作る間、拓殿と魔導士を守って欲しい。」

それぞれが配置に着くと、ヨギ魔導士は真ん中の安全地帯の後ろに巨大な円を描き始めた。
見た目、開拓地の石の塔の２倍近いサイズが有りそうだ。

「ヨギ魔導士、余りにも巨大すぎる気がするのですが？」
「高さは１０ｍも有れば良い。これだけの人数で行うのなら、もっと高く出来るだろう。」

唖然とする、拓と魔導士達。

「骨は拾ってやるから、限界までやってみると良い。」

拓は大きく息を吐くと、掌を地面に向けて土の魔力を流し込む。
大量の魔力が地面に浸透するのを待って、魔道士達が魔力を練り上げ岩の棟を作り上げた。
拓の護衛をしていた冒険者達は周囲に気を配るのを忘れ呆然とその様子を眺め
騎士団や魔道士団ですら、見入ってしまっていた。

｢お前達、ここは魔獣との戦いの場だ。気を抜くんじゃない。｣

バラン将軍に怒鳴られ、我に返ると全員が再び魔獣に向き合う。
拓と土魔法を使った魔道士は、その場に座り込んでしまい冒険者達に背負われ安全地帯へと運ばれた。

｢話には聞いていたが、これ程の魔法を見れるとは思わなかったぞ。
　おかげで、王都の強力な防衛拠点が出来た。感謝する。｣

国王が拓達に話し掛けてくるが、まだ上までの階段を作る必要が有る。
どちらにしろ、魔力を使い切った今は出来ないので後日の対応となる。

国王は明日には帰るのかと思っていたが、出来上がるまでここに泊まるらしい。
一部の兵士達が安全地帯に天幕を張ろうとするので、ＯＺやエチゴ達が自分達のテントを退けようとすると

「そのままで良い。天幕はその横に張らせて貰う。」

国王が言って、並びに国王の天幕やバラン将軍や団長クラスの兵士のテントが用意された。

「何だか場違いの様な気がするけど。」
「この壁は拓の魔力があって出来た物だからな。こうなるのも、当然の事なのかも知れないな。」

拓の呟きに、ガラもため息交じりに答えていた。


その日の夜、国王の天幕では今日の魔獣との戦いについて話し合われていた。

「今までとは比べものになりません。これなら、安全で的確な防衛が出来ます。」
「それに見張り棟が在れば、瘴気の吹きだまりの影響を確認できます。」

軍の会議でも瘴気の吹きだまりが移動していることが問題視されていた。
更には魔獣の動きから、大森林の奥に未だ発見されていない瘴気の吹きだまりが有る可能性も出てきている。
国にとって拓が作り上げた壁や見張り棟は、重要性が高い物となっていた。

「拓殿に国に仕えて貰うことはできないでしょうか？」

魔道士団から提案される。
貴族だけでなく、軍からも拓を勇者達と同等の立場として迎え入れたらどうかと話が上がっている。

「それは、拓殿が望んでいない。今の免責札を持っている状態が丁度良い。」

拓を知る国王、バラン将軍、ヨギ魔道士によって止められていた。
拓自身がそれを全く望んでいないのが分かっているからだった。
拓の好意をはき違えてしまえば、この国から出て行ってしまうだろう。

更には、ホワイトジャック、アンディ・ジョーンズを登用してはとの話も上がっている。
この２人に対しては国としては何処に要るのかも判明していない。
それどころが、何者かすらも掴めていなかった。