平行線上のゲシュタルト

人の魂が成仏するには、現実世界との縁を断ち切らなければならない。

魂が浄化し、「無」へと還ることで初めて、生と死が循環する均衡を保つことができる。

人が死んだ後、魂は「無間地獄」と呼ばれる霊界に運ばれ、現世との縁を切るための旅路を、49日間行うことになる。

しかし、魂の中には現世との未練が断ち切れず、現世にとどまってしまう者たちがいた。

彼らは「放浪者(ゴースト)」と呼ばれ、瘴気をもたらす災いとして古くから忌み嫌われていた。

ゴーストを放置しておけば、いずれ現世は瘴気に満たされ、生と死の均衡は保たれなくなる。

除霊士養成学校に所属する見習い除霊士啄木鳥レイコは、ひょんなことから退学処分を喰らってしまう。

途方に暮れていたある日、ある事故がきっかけで、未練が解消されないまま現世にとどまろうとしているはぐれもののゴーストと出会うことになった。

除霊士の端くれとしてそのゴーストを成仏させることもできたが、レイコはそうしなかった。

なぜならそのゴーストが、彼女に取って“見覚えのある人“だったからだ。


「電車、待ってるの」


ゴーストは言う。


「行き先は?」


レイコは訊ねた。


その“行き先”が、2人が永遠に触れられない距離を、生むとしても。
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