山と海と空と果てと



あの日、僕は山にいた。

大好きだったお婆ちゃんが、行方不明になった日に。



高校を卒業して、家を継ぐことになった木下ユウスケ。

彼は学生時代に、いじめられた過去を持っていた。

人と馴染めない日々。

バラバラになった家族。

そんな彼の元に、1通の手紙が届く。

遠方に住んでいる祖母からだった。

『もし貴方が良ければ、いつでも遊びに来なさい』

住む場所も、行くあてもなく、祖母の家に足を運んだ彼は、それから10年間、彼女の家に住むことになった。

生きるとはどういうことか、夢を持つとはどういうことか、祖母は教えてくれた。

いつか、家族と、——みんなと笑い合える日々を取り戻したい。


彼女はいつも願っていた。

山の麓にある海の店。

かつて家族と共に過ごしていた小さな店に、海で溺れた娘がいたこと。

あの日の出来事を変えることができないとしても、前を向こう。

あの子の分まで笑っていよう。

——そう、口ずさんで。
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