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4. 逃亡①
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「お嬢様……泣いていても何も出来ませんよ。捕らえられないように今はここを離れましょう」
「そんなこと分かってるわよ。でも、助けもなしに逃げられるわけがないわ」
溢れてしまった涙を拭きながらそう口にする私。
そんな時、門番のものとは違う、聞き慣れた低い声が聞こえてきた。
「そこにいるのはフィリアで合ってるよな?」
続けて、門の開く音が聞こえた。
「お父様……」
「馬車は用意してある。皆でグランディアに行こう」
「え……? 見捨てた訳じゃなかったの?」
希望が見えた。そう分かった瞬間、目尻が熱くなってきた。
「屋敷に入れたら魔力の痕跡とやらで父さんも匿った罪で罪人にされてしまうからね。ちょうど明日、グランディアに交渉に行く予定があったから助かったよ」
「父上、嘘はいいから早くどいてください。馬に轢かれますよ?」
馬車の中から聞こえてきたこの声は、私より三つ年上のハルトお兄様のものね。
そして次の瞬間、お父様の両脇に馬が進んできて……。
ドスンという鈍い音が聞こえ、目の前のお父様の姿が消えて馬車が現れた。
お陰で涙が溢れることは無かったけど……流石にこれは無いわ。
「おい、本当に轢くのは無いだろ」
馬車の下から聞こえるお父様の声。
いくら身体の丈夫なお父様でも無事では済まないと思うのだけど⁉︎
「早くどかないのが悪いんです。フィリア、急がないとだから早く乗って。アイリスも一緒に」
「うん……」
そう頷いた瞬間、馬車から身を乗り出したいきなり身体を抱えられて、あっという間に馬車に乗せられてしまった。
それからアイリスさんが飛び乗り、護衛さん二人はここで一旦お別れのようで屋敷に入っていった。
そしてお母様が窓から門番さんに記憶操作の魔法をかけ、その間に馬車の下から這い出てきたお父様が乗り込んだ。ちなみにお父様は無傷だった。
「こっちは終わったわよ……」
使い手が少ない記憶操作の魔法を使って、一気に疲れた様子のお母様。
「よし、出発しろ」
「はっ」
手綱の音に続けて馬車が動き出す。
「フィリア、本当に無事で良かったわ」
そう言って私を抱きしめるお母様。
その時、止まっていたはずの涙が再び溢れてしまった。
「フィリア、また泣いてんの? お母様の抱擁が強すぎて苦しかったのか?」
そんな失礼なことを口にする私より一つ年上のアレンお兄様。
「失礼ね、私にそんな力ありません」
「違うの……。みんなが私を助けてくれようとしていることが嬉しくて……」
曖昧な門番のせいで絶望を味わったこともあると思うけど、今の私は嬉し泣きしてしまうほど幸せな気持ちになっていた。
物心ついた時からだけど、私の家族はみんな私に優しすぎるのよ……。
「あっ、フィリアは魔力で追われるかもしれないから、荷室にある魔力を遮断して封じる壺に入れないと」
「そういえばそうだった。フィリア、ごめんね。兄様、そっちはいい?」
私の腕を掴みながらそう口にするアレンお兄様。
「ああ。いくぞ、せーの」
その瞬間、私はお兄様に俗に言うお姫様抱っこのような形で持ち上げられ、席の後ろにある荷物置き場にある大きめの壺の中に落とされた。
「痛っ……」
落とされた衝撃の痛みに思わず声が漏れてしまう。
大切な家族ならもっと丁寧に接するはずなのに……。
前言撤回、お兄様達は私に対して乱暴すぎます!
「そんなこと分かってるわよ。でも、助けもなしに逃げられるわけがないわ」
溢れてしまった涙を拭きながらそう口にする私。
そんな時、門番のものとは違う、聞き慣れた低い声が聞こえてきた。
「そこにいるのはフィリアで合ってるよな?」
続けて、門の開く音が聞こえた。
「お父様……」
「馬車は用意してある。皆でグランディアに行こう」
「え……? 見捨てた訳じゃなかったの?」
希望が見えた。そう分かった瞬間、目尻が熱くなってきた。
「屋敷に入れたら魔力の痕跡とやらで父さんも匿った罪で罪人にされてしまうからね。ちょうど明日、グランディアに交渉に行く予定があったから助かったよ」
「父上、嘘はいいから早くどいてください。馬に轢かれますよ?」
馬車の中から聞こえてきたこの声は、私より三つ年上のハルトお兄様のものね。
そして次の瞬間、お父様の両脇に馬が進んできて……。
ドスンという鈍い音が聞こえ、目の前のお父様の姿が消えて馬車が現れた。
お陰で涙が溢れることは無かったけど……流石にこれは無いわ。
「おい、本当に轢くのは無いだろ」
馬車の下から聞こえるお父様の声。
いくら身体の丈夫なお父様でも無事では済まないと思うのだけど⁉︎
「早くどかないのが悪いんです。フィリア、急がないとだから早く乗って。アイリスも一緒に」
「うん……」
そう頷いた瞬間、馬車から身を乗り出したいきなり身体を抱えられて、あっという間に馬車に乗せられてしまった。
それからアイリスさんが飛び乗り、護衛さん二人はここで一旦お別れのようで屋敷に入っていった。
そしてお母様が窓から門番さんに記憶操作の魔法をかけ、その間に馬車の下から這い出てきたお父様が乗り込んだ。ちなみにお父様は無傷だった。
「こっちは終わったわよ……」
使い手が少ない記憶操作の魔法を使って、一気に疲れた様子のお母様。
「よし、出発しろ」
「はっ」
手綱の音に続けて馬車が動き出す。
「フィリア、本当に無事で良かったわ」
そう言って私を抱きしめるお母様。
その時、止まっていたはずの涙が再び溢れてしまった。
「フィリア、また泣いてんの? お母様の抱擁が強すぎて苦しかったのか?」
そんな失礼なことを口にする私より一つ年上のアレンお兄様。
「失礼ね、私にそんな力ありません」
「違うの……。みんなが私を助けてくれようとしていることが嬉しくて……」
曖昧な門番のせいで絶望を味わったこともあると思うけど、今の私は嬉し泣きしてしまうほど幸せな気持ちになっていた。
物心ついた時からだけど、私の家族はみんな私に優しすぎるのよ……。
「あっ、フィリアは魔力で追われるかもしれないから、荷室にある魔力を遮断して封じる壺に入れないと」
「そういえばそうだった。フィリア、ごめんね。兄様、そっちはいい?」
私の腕を掴みながらそう口にするアレンお兄様。
「ああ。いくぞ、せーの」
その瞬間、私はお兄様に俗に言うお姫様抱っこのような形で持ち上げられ、席の後ろにある荷物置き場にある大きめの壺の中に落とされた。
「痛っ……」
落とされた衝撃の痛みに思わず声が漏れてしまう。
大切な家族ならもっと丁寧に接するはずなのに……。
前言撤回、お兄様達は私に対して乱暴すぎます!
応援ありがとうございます!
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