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47. 天秤
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十一月も半ばを過ぎた日の風呂上がり。
あとはもう寝るだけという状況で俺はソファーに寝転びながら、そろそろ次のヒート開始の予定日を確認しようと俺はスマホの管理アプリを開いた。
管理アプリはネックガードとデータ連携していて、一番安定している朝の体温が自動記録されるようになっている。
発情すると体温が上がるから、徐々に朝の体温が上がっていたりするともうすぐヒートが来るという目安になったりするし、そのままヒート中もネックガードを外さないままでいれば、ヒート開始と終了も自動判定して記録してくれる優れものだ。
と言っても販売されているすべてのネックガードにこの検温機能がついてるわけじゃない。病院で勧められて購入し使っていたネックガードは、毎回ヒートのたびに宏樹に噛まれまくって悲惨な状態になっていた。
今使っているのはその悲惨な状態のネックガードを見た尚樹さんにプレゼントされたもので、アルファの犬歯にも耐えられる頑丈さが売りらしい。実際、前回のヒートでは宏樹に噛まれまくったものの、傷一つついてなかった。
アプリを起動すると、しっかり前回のヒートの開始と終了が表示されており、その上には一番目立つ大きさであと何日で次のヒートが始まるかの目安がどデカく書いてある。次回は十二月に入ってすぐあたりの予測だ。
中旬以降じゃなくてひとまずほっとした。年末年始の休みに向けて抑制剤やアフターピルの処方を求める患者が集中するから、中旬以降はなるべく休みたくない。心理士の俺の業務が増えるわけではないけれど、細々とした雑用だけでも手伝えたら嬉しい。
(ヒートの時期、連絡しないとだよなぁ……)
ラインを開くと、前回作った四人のグループのトーク部分に未読を知らせるバッヂが二つついていた。開かなくても、誰が送ったのかわかる。
俺も宏樹も尚樹さんも見るだけだけど、泰樹くんは日記なのかなっていうレベルでちょこちょこと送ってくる。
内容は「今日は寒いですね」とか「今からランチです」とか取り留めもないものばかりだけど、たまに宏樹が「うざ」と送れば、ショックを受けてるウサギのスタンプが返信されたりして、読んでるだけで楽しい。
個別で俺にラインを送ってこないのは、一応宏樹や尚樹さんに遠慮しているかららしい。二人で会った時に、そこまで気にしなくても……と言ったら「真緒ちゃんはもうちょっと自覚した方がいいです」と、ため息混じりでアドバイスをされたのはつい最近だ。
今日のこの未読も泰樹くんだろうと思ってトークを開いたら案の定。
大学院の受験を控えている彼は、ちょうど今が追い込みの時期。実家は来客が多くて落ち着かないからと図書館へ来た短い報告と、その受験の日程が書かれたホームページのスクショ画像が一枚。
(――あ。受験、来月中旬だ。ヒートとは被ってないけど……)
この時期の彼を一週間も俺のヒートに付き合わせていいのだろうか。多分言えばきっと彼は俺のヒートを優先してくれる気がする。
でも、どう考えても俺のヒートと受験を天秤にかければ重いのは受験だ。
俺はうつ伏せに寝返りを打ってスクショ画面を何度も拡大して眺めては、どうしようかとクッションに顔を埋めた。
あとはもう寝るだけという状況で俺はソファーに寝転びながら、そろそろ次のヒート開始の予定日を確認しようと俺はスマホの管理アプリを開いた。
管理アプリはネックガードとデータ連携していて、一番安定している朝の体温が自動記録されるようになっている。
発情すると体温が上がるから、徐々に朝の体温が上がっていたりするともうすぐヒートが来るという目安になったりするし、そのままヒート中もネックガードを外さないままでいれば、ヒート開始と終了も自動判定して記録してくれる優れものだ。
と言っても販売されているすべてのネックガードにこの検温機能がついてるわけじゃない。病院で勧められて購入し使っていたネックガードは、毎回ヒートのたびに宏樹に噛まれまくって悲惨な状態になっていた。
今使っているのはその悲惨な状態のネックガードを見た尚樹さんにプレゼントされたもので、アルファの犬歯にも耐えられる頑丈さが売りらしい。実際、前回のヒートでは宏樹に噛まれまくったものの、傷一つついてなかった。
アプリを起動すると、しっかり前回のヒートの開始と終了が表示されており、その上には一番目立つ大きさであと何日で次のヒートが始まるかの目安がどデカく書いてある。次回は十二月に入ってすぐあたりの予測だ。
中旬以降じゃなくてひとまずほっとした。年末年始の休みに向けて抑制剤やアフターピルの処方を求める患者が集中するから、中旬以降はなるべく休みたくない。心理士の俺の業務が増えるわけではないけれど、細々とした雑用だけでも手伝えたら嬉しい。
(ヒートの時期、連絡しないとだよなぁ……)
ラインを開くと、前回作った四人のグループのトーク部分に未読を知らせるバッヂが二つついていた。開かなくても、誰が送ったのかわかる。
俺も宏樹も尚樹さんも見るだけだけど、泰樹くんは日記なのかなっていうレベルでちょこちょこと送ってくる。
内容は「今日は寒いですね」とか「今からランチです」とか取り留めもないものばかりだけど、たまに宏樹が「うざ」と送れば、ショックを受けてるウサギのスタンプが返信されたりして、読んでるだけで楽しい。
個別で俺にラインを送ってこないのは、一応宏樹や尚樹さんに遠慮しているかららしい。二人で会った時に、そこまで気にしなくても……と言ったら「真緒ちゃんはもうちょっと自覚した方がいいです」と、ため息混じりでアドバイスをされたのはつい最近だ。
今日のこの未読も泰樹くんだろうと思ってトークを開いたら案の定。
大学院の受験を控えている彼は、ちょうど今が追い込みの時期。実家は来客が多くて落ち着かないからと図書館へ来た短い報告と、その受験の日程が書かれたホームページのスクショ画像が一枚。
(――あ。受験、来月中旬だ。ヒートとは被ってないけど……)
この時期の彼を一週間も俺のヒートに付き合わせていいのだろうか。多分言えばきっと彼は俺のヒートを優先してくれる気がする。
でも、どう考えても俺のヒートと受験を天秤にかければ重いのは受験だ。
俺はうつ伏せに寝返りを打ってスクショ画面を何度も拡大して眺めては、どうしようかとクッションに顔を埋めた。
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