公女が死んだ、その後のこと
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛の予定です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。話数調整の関係でなろう版がやや先行しています。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛の予定です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。話数調整の関係でなろう版がやや先行しています。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
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感想ありがとうございます。
思い悩ませてしまってスミマセン(汗)。
王から調査を命じられた文官は、報告しろとは言われているけど「嘘偽りなく」とは言われてないんですね(爆)。そしてオフィーリアの言う「波風立たないように」ってお願いのも確かにその通りだと思ったので、結果的に玉虫色の報告になっちゃった、っていう。
しかも実状とそこまで大きく乖離してもいなかったので、それで王も納得しちゃった……っていう。
まあこれも、王がもっと報告を精査していれば違和感程度は見抜けたはずだろうと思うんですけどね。
感想ありがとうございます。
一気読み、有り難いです。
オフィーリアは「自分さえ我慢すれば全て上手く行く」って思っちゃったんですね。それで実際に上手く回っちゃってるんで、周りも気付かなかった……っていう悪循環でした。
バシレイオス王に関しては、自分のことを棚に上げて何言ってんだ、って感じではありますけどね(爆)。そもそも夜会ですぐに王が否定してれば最悪の事態は免れたはずなんで。
感想ありがとうございます。
ボアネルジェスがクズってのはその通りですが、彼は別に全部をオフィーリアに押し付けているわけではないんですね。自分の得意なこと、やりたい事はちゃんと自分でやっています。
ただまあ、比率的にはボアネルジェスとオフィーリアで2:8ぐらいなんですが(爆)。公務に余裕があるのでボアネルジェスは遊ぶこともできているんですね。
あと、ボアネルジェスを養育して王太子にしたがっているのは王ではなく王妃ですね。子育てに関して王は王妃に頭が上がらないので。
感想ありがとうございます。
母親としては、婿は婿で居なきゃダメなんですよ。
娘(オフィーリア)は次期当主(確定)だし優秀だから問題ないですが、問題は母自身が娘が襲爵できるまで生きられない(だろう)という点ですね。そうするとつなぎの代理公爵が必要になって、それは一般的に直系親族なわけです。
母アレサの中で候補はふたりです。使えない自分の婿か、大嫌いな(まだ生きてる)自分の父親(つまりオフィーリアの祖父)か、の二択です。そしてアノエートスはアレサの存命中は、不満を抱えながらも表向き逆らうような言動は特に見せてなかったんですね。
アレサがもっと長生き出来てたら良かったんですが、そうならなかったのがオフィーリアの悲劇の始まりでした。そこの点も後々の話で言及してますので、今しばらくお待ち頂ければなと思います。
感想ありがとうございます。
そこは、王がポンコツっていうよりもオフィーリアが一枚上手だったんですよ。クッソ忙しいはずなのに、王に命じられて密かに調査し報告書を上げる文官を特定して、真実をありのままに報告して後継問題を起こすより、波風立たないように収めた方がいいでしょう?って唆したんですね。
で、その後は勝手に忖度されるようになる、っていうね。
王宮内の評判も実は同じですね。なんとなくオフィーリアがボアネルジェスの尻拭いしてる疑惑はあるんだけど、オフィーリアが泥被ろうとしてるんだしその意を汲むべき、って感じだったのが、次第に「また公女がやらかしてる」に変わっていった……っていう。
オフィーリアはオフィーリアで、自分さえ我慢すれば丸く収まる……なんて思ってるので、そこも良くなかったんですね。
感想ありがとうございます。
感情移入して下さって嬉しいです。タイトルはしっくり来なくて、一応は仮題のつもりだったんですが、タイトルに惹かれたと仰って頂けるならこのまま行こうかな(^.^)
オフィーリアは頭が回りすぎたので、全てのことに意味を見出しちゃったんですよ。つまり突発的なイレギュラー(地下牢へ入れられたこと)を冷静に見抜けなかったんですね。
もしそれが出来れば、死を選ばずに済んだと思うんですけどね。
第二王子は体格が良くて自信に満ち溢れてて、カリスマ性はそれなりにあるんですよ。軍事とか外交とか得意分野もちゃんとあって決して無能ではなく、王と王妃の唯一の子だからというのもありますが、国内の支持は高いんですよ。
まあ、オフィーリアに対してはクズですけどね。しかも能力とか相性とかではなく外見で疎んでましたから、完全に女の敵ってやつですね。
ちなみに第二王子を次期王にしたがってるのは、王よりも王妃の方だったりします。
感想ありがとうございます。
可哀想に書けているか、いまいち自信がなかったので、そういうふうに悲しんで頂ければ彼女も報われるかと思います。
まあオフィーリアの場合、死んでからが本番ですけどね!
死んじゃったんでオフィーリア自身にはざまぁはできませんが、この先しばらくは虐げた奴らの自滅ターンなんで、それ見て少しでもスッキリしてもらえたらなと。
感想ありがとうございます。
バシレイオス王もボアネルジェスも、そこまで無能でもないんですけどね。単にふたりとも自分勝手なだけで(そこはやはり親子か)。
残念ですけどオフィーリアは生き返らないですね。元々この作品はなろうで「死んだと言いつつ実は死んでない詐欺」が多かった時期に、本当に死なせた上でそれでもハッピーエンドを目指すべく書き始めた作品なので。
あっところで、タグ付け忘れてたんで追加しました。一部ネタバレ含みます(爆)。
オフィーリアたん、、疲労困憊で周りがカスばっかで
1部まともな人居たけど間に合わなくて( ´⚰︎`°。)
第一王子が幸せになりますように
感想ありがとうございます!
ですねえ、もう少し周りが気にして見ていてあげたら、きっとオフィーリアも死なずに済んだと思うのですけどね。
第一王子に関しては…………今はまだノーコメントで(爆)。
翌朝(2)までを読んで
続きがとても気になります!
感想ありがとうございます!
これからしばらくは虐げた者たちの自滅ターンなので、存分にお楽しみ頂けたらなと。
あと、あくまでもオフィーリアが主人公なので、そこもお忘れなく( ̄∀ ̄)
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