ハクチューム

伝説のバンド『白痴有無』。

彼らのフロントをつとめるのは、
世の中のすべてにツバを吐く男、
〝ヘーリー久都〟だ。

今夜もしずかにギターのノイズから始まり、
そしてアンプから爆音が放たれる。

バスドラの音と空気圧が最前列の心臓を叩き、
重低音のベースは鼓膜を破ろうとする。

セットリストでは2曲暴れたらMCだ。

脳ミソを掻き回すような暴力的な音の洪水のあとの、
突然の静寂。

ライブハウスに充満するガキどもの耳鳴りがおさまる前に、
弦楽器隊はアンプとチューニングを調整しだす。

ドラムは各打楽器の位置の微調整だ。

ステージに、スポットライトがぽつんと降りてくる。

アゴの下から汗をぼたぼたとたらし、
ヴォーカルのヘーリーがマイクを口に寄せる。

さて、オーディエンスからは言災(ことわざ)とも呼ばれる、
糞みたいなMCの始まりだ。
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