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ガーナの街にて
治癒師では無いけれど
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リカルドさんの症状を見る前に清々と窓を開ける。持ってきた掃除道具の出番だ。
ハタキでざっとベッド周りや壁をパタパタして『居なくなれ~。綺麗になれ~。』と黒いモヤをどかす。
その後、ササッと床を掃く。壁とかも雑巾掛けしたかったけど、それは後でしっかりやる事にする。今はリカルドさんの肩を見ないとね。
まぁ、いきなりリカルドさんの体じゃなくて、掃除を始めたから二人はちょっと呆気に取られていたけど。
リカルドさんには座ったままで、肩に力を入れないでダラリと腕を下ろしてもらう。それからリカルドさんの右手と肘の辺りに手を添えて、肘を曲げた状態にする。
そこから右手に添えていた手を右肩にそっと置いて、肘を肩の高さまでゆっくりと横に上げていくと、肩の高さになる前にリカルドさんがしかめ面になる。
うん、痛そうだねぇ。そのままの状態で何度か、上下に動かしたりゆっくり肩を回してみた。だいぶ固くなっているなぁ。
「えーと、一応、確認ですが、腕が上がらなくなる前に、酷く肩をぶつけたとか急に肩に負担が掛かるような重い荷物を持ったとかありませんでした?」
「・・・・それは無い。医者にも骨に異常は無いと言われてる。もう分かっただろう!問題は無いが、俺の腕はもう使い物になんねぇんだよっ。」
「リカルドさん、腕が、特に利き手の方の腕が動かないのは辛いとは思います。
自棄になるのも分からなくもないですが、私からすれば勝手に諦めて、周りに当たり散らしたりお酒に逃げるのは良くないと思います。」
リカルドさん、黒いモヤの影響かも知れないけれど、ルーナさんたちに心配掛けている自覚を持って欲しい。
結局、ルーナさんたちに甘えているんだよね。このままだと何もせずにどんどん悪くなる一方だ。
「はっ!今度は説教かよ?結局、原因が分からないから説教で誤魔化そうってのか?どうせもう俺の腕はダメなんだよ!」
「リカルド、、、。」
ルーナさんが涙目になっている。自分が不貞腐れている間にルーナさんがどんな気持ちになっているのか、もう本当に気づいて欲しいよ。
「さっき言った通り、私は医者でも治癒師でもないただの素人です。だから断言する事は出来ません。
けれど私はリカルドさんの腕を確認してみて、私が思っている病名だったとしたら、腕は治ると思いましたよ。」
私の言葉に二人の視線が一気に私に向いた。
「そ、そんな適当な事言って、、、、。」
リカルドさんが疑り深そうにするのも分かる。だって正確に本当の病気を言い当てるなんて素人の私には出来ない。
「もしかしたら、私が予想しているのと違う病気なのかも知れません。
けれど今、何も分からない、何もしていないなら、ちょっと私の言葉に耳を貸してみるのも良いんじゃないですか?
治ると断言は出来ませんし保証もないですけど。」
「はっ、、、、いい加減、だな。で、なんて言う病気なんだよ。」
相変わらず投げやりな言い方だけれど、それでも少しは心を動かされているのかな。
「リカルドさんのその腕の症状は、四十肩という病気の症状によく似ています。」
「「は?しじゅうかた?」」
流石、夫婦!息ピッタリだったね。目が点になっている表情も心なしか似ている気がするよ。
「はぁ~?何だそりゃ!そんな病名なんて聞いた事もねぇ!巫山戯るのもいい加減しろ!」
リカルドさんが顔を真っ赤にして、左手でダンっとテーブルを叩いた。
あぁ~、やっぱり四十肩はこの世界では認知されてなかったか。
「本気ですよ?因みに50歳代で同じ病気になったら、五十肩って言うんです。
本当の病名はちゃんとあるのですが、私の国では一般的な言い方として、四十肩、五十肩がよく使われています。」
本当の病名は肩関節周囲炎、というんだよね。私が説明を受けた訳ではないから、詳しくは覚えていないけど、骨の周りの筋?腱板だっけ?
兎に角、それに亀裂が入る感じで傷ついたのがきっかけで関節の動きが悪くなって、肩の周りが固くなって、思うように動かなくなってしまう病気らしい。
なんで私が知っているのか、というと母が四十肩になった事があるから。
最初は『ちょっと肩が痛いかな』、『まさか四十肩じゃ無いよね~』なんて家族で笑っていたんだよね。
それから1ヶ月もしない内にどんどん痛みが増して、肩の関節だけじゃなくて肘の辺りまで痛くなり、後ろに手を回すだけで痛くて、母はとうとう下着のホックも自分でつけられなくなってしまった。
『整形外科に行くべき?鍼灸院?』なんて、迷っている内に、寝ているだけでも痛くなるぐらいに悪化してしまったのだ。
40代で四十肩になってしまった、というのも何かお年寄りになったみたいで、病院に行くのにも抵抗があったみたい。
市販の薬や湿布では全然治らなくて、重い腰を上げて病院に行って見れば、治療としては、痛み止めの薬とヒアルロン酸の注射を打つだけ。
後は日常生活の工夫や体操をするしかなかったんだよね。治るまで結構、時間が掛かっていた。
「も、もし、俺の病気がその四十肩?というやつだったとしたら、どうすればいいんだよ。」
リカルドさんの気持ちがちょっと上向きに傾いたかな。
「えーと、少し説明をさせて貰いますね。」
私はそう言ってリカルドさんの後ろに回って、両肩に手を置いた。
ハタキでざっとベッド周りや壁をパタパタして『居なくなれ~。綺麗になれ~。』と黒いモヤをどかす。
その後、ササッと床を掃く。壁とかも雑巾掛けしたかったけど、それは後でしっかりやる事にする。今はリカルドさんの肩を見ないとね。
まぁ、いきなりリカルドさんの体じゃなくて、掃除を始めたから二人はちょっと呆気に取られていたけど。
リカルドさんには座ったままで、肩に力を入れないでダラリと腕を下ろしてもらう。それからリカルドさんの右手と肘の辺りに手を添えて、肘を曲げた状態にする。
そこから右手に添えていた手を右肩にそっと置いて、肘を肩の高さまでゆっくりと横に上げていくと、肩の高さになる前にリカルドさんがしかめ面になる。
うん、痛そうだねぇ。そのままの状態で何度か、上下に動かしたりゆっくり肩を回してみた。だいぶ固くなっているなぁ。
「えーと、一応、確認ですが、腕が上がらなくなる前に、酷く肩をぶつけたとか急に肩に負担が掛かるような重い荷物を持ったとかありませんでした?」
「・・・・それは無い。医者にも骨に異常は無いと言われてる。もう分かっただろう!問題は無いが、俺の腕はもう使い物になんねぇんだよっ。」
「リカルドさん、腕が、特に利き手の方の腕が動かないのは辛いとは思います。
自棄になるのも分からなくもないですが、私からすれば勝手に諦めて、周りに当たり散らしたりお酒に逃げるのは良くないと思います。」
リカルドさん、黒いモヤの影響かも知れないけれど、ルーナさんたちに心配掛けている自覚を持って欲しい。
結局、ルーナさんたちに甘えているんだよね。このままだと何もせずにどんどん悪くなる一方だ。
「はっ!今度は説教かよ?結局、原因が分からないから説教で誤魔化そうってのか?どうせもう俺の腕はダメなんだよ!」
「リカルド、、、。」
ルーナさんが涙目になっている。自分が不貞腐れている間にルーナさんがどんな気持ちになっているのか、もう本当に気づいて欲しいよ。
「さっき言った通り、私は医者でも治癒師でもないただの素人です。だから断言する事は出来ません。
けれど私はリカルドさんの腕を確認してみて、私が思っている病名だったとしたら、腕は治ると思いましたよ。」
私の言葉に二人の視線が一気に私に向いた。
「そ、そんな適当な事言って、、、、。」
リカルドさんが疑り深そうにするのも分かる。だって正確に本当の病気を言い当てるなんて素人の私には出来ない。
「もしかしたら、私が予想しているのと違う病気なのかも知れません。
けれど今、何も分からない、何もしていないなら、ちょっと私の言葉に耳を貸してみるのも良いんじゃないですか?
治ると断言は出来ませんし保証もないですけど。」
「はっ、、、、いい加減、だな。で、なんて言う病気なんだよ。」
相変わらず投げやりな言い方だけれど、それでも少しは心を動かされているのかな。
「リカルドさんのその腕の症状は、四十肩という病気の症状によく似ています。」
「「は?しじゅうかた?」」
流石、夫婦!息ピッタリだったね。目が点になっている表情も心なしか似ている気がするよ。
「はぁ~?何だそりゃ!そんな病名なんて聞いた事もねぇ!巫山戯るのもいい加減しろ!」
リカルドさんが顔を真っ赤にして、左手でダンっとテーブルを叩いた。
あぁ~、やっぱり四十肩はこの世界では認知されてなかったか。
「本気ですよ?因みに50歳代で同じ病気になったら、五十肩って言うんです。
本当の病名はちゃんとあるのですが、私の国では一般的な言い方として、四十肩、五十肩がよく使われています。」
本当の病名は肩関節周囲炎、というんだよね。私が説明を受けた訳ではないから、詳しくは覚えていないけど、骨の周りの筋?腱板だっけ?
兎に角、それに亀裂が入る感じで傷ついたのがきっかけで関節の動きが悪くなって、肩の周りが固くなって、思うように動かなくなってしまう病気らしい。
なんで私が知っているのか、というと母が四十肩になった事があるから。
最初は『ちょっと肩が痛いかな』、『まさか四十肩じゃ無いよね~』なんて家族で笑っていたんだよね。
それから1ヶ月もしない内にどんどん痛みが増して、肩の関節だけじゃなくて肘の辺りまで痛くなり、後ろに手を回すだけで痛くて、母はとうとう下着のホックも自分でつけられなくなってしまった。
『整形外科に行くべき?鍼灸院?』なんて、迷っている内に、寝ているだけでも痛くなるぐらいに悪化してしまったのだ。
40代で四十肩になってしまった、というのも何かお年寄りになったみたいで、病院に行くのにも抵抗があったみたい。
市販の薬や湿布では全然治らなくて、重い腰を上げて病院に行って見れば、治療としては、痛み止めの薬とヒアルロン酸の注射を打つだけ。
後は日常生活の工夫や体操をするしかなかったんだよね。治るまで結構、時間が掛かっていた。
「も、もし、俺の病気がその四十肩?というやつだったとしたら、どうすればいいんだよ。」
リカルドさんの気持ちがちょっと上向きに傾いたかな。
「えーと、少し説明をさせて貰いますね。」
私はそう言ってリカルドさんの後ろに回って、両肩に手を置いた。
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