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平穏な時間
夢魔はじめました。
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一緒にいたい。
危険であっても、弱点になっても、不安でも。
離れなくていい。
そう気持ちを確かめ合った私達は、それからは安心して、順調に旅を続けた。
ライアンはますます私に甘くなって、すぐキスをしたり、抱きしめたりするけど、逆にそれ以上の触れ合いはしなくなった。
手から精を摂取できるようになったから、誰からでももらえるようになったけど、ライアンが嫌がるから、相変わらず、ライアンから精をもらっている。
でも、もうフェラは必要ないから、手とキスでの補給になった。
想いが通じ合ってからの方が性的な接触がなくなるなんて、私達、順番がおかしいよね。
それがちょっとさみしいなんて思ってしまうけど、「止められなくなるから」と言われると我慢するしかない。
ちなみに、ルシードとは、あのまま別れることになるのかなと思っていたら、いつの間にかついてきていたようで、ローゼンの街に着くと、手を振って「遅かったね」と出迎えられた。
ライアンはすごい殺気を発して追い払おうとしてたけど、「夢魔として注意することがあるんだけど」というルシードの言葉にしぶしぶ宿の部屋に通した。
当然のように私を膝に乗せて座るライアンに、ルシードは笑って、「君達は相変わらずだね。あれから揉めなかったんだ?」としれっと言った。
「揉めたに決まってるだろ!っていうか、今度エマに触れたら、叩き斬るぞ!」
「わぁ、怖いなぁ。僕も女の子を泣かすのは趣味じゃないから、気をつけるよ。でも、エマがいいって言ったら仕方なくない?」
ライアンはギロリとルシードを睨みつけて、「もうそんなこと言うはずがない!」と言い切った。
それをおもしろそうに見るルシード。
「へぇ、もうないんだ」
彼の飄々とした様子に毒気を抜かれて、ライアンは溜息をついた。
ルシードはどこか憎めない。
彼なりになぜか私達に肩入れしてくれてるみたいだし。
ひどいからかわれ方をして泣いたけど、よく考えたら、あれで止めてくれたのよね。
あれを別にすれば、ルシードにはすごく助けられた。
今もわざわざアドバイスをしに来てくれてるし。
「で、注意することってなんだ?」
「あぁ、新人夢魔のエマに言っておかないと肝心な時に慌てることになりそうだと思って」
「だから、なんだ?」
「もう、せっかちだなぁ。………まず、覚えておかないといけないのが、僕達はどこからでも精を摂取できるけど、直接肌に触れないといけないってこと」
「直接肌に、ですか?」
「そう。だから、手袋とかはめられてる手に触っても、精は吸えない」
「そうだったんですね。じゃあ、あの時、見張りの人が手袋してなくてよかったです」
これはとても重要な情報だ。
敵に襲われた時、素肌の部分を探して攻撃しなきゃね。
「あと、これはライアンも知ってる話だけど、魅了はオールマイティじゃない」
「どういうことですか?」
私はルシードとライアンの顔を見上げた。
「予めわかっていたら対策できるってことだ」
ライアンが答えてくれた。
ルシードが頷く。
「そう、僕らが初めて会った時、最初はライアンも魅了されたけど、2回目はかからなかったでしょ?」
「そういえば……」
「ブロックしてたからな。精神魔法系はその対策魔法もあるってことだ。ちなみに、こいつを拘束したバインドにも対策魔法があって、昨日最後に襲ってきたヤツは対策してたから、手間取ったんだ。俺の情報が漏れてるようだな」
「ライアンみたいに自分で対策魔法が使えるか、それ用の護符や魔石を持っていたら対策されてしまうんだよ」
「そうなんですね。でも、私は魅了ができないから、今のところは関係ないですね……」
「えー、魅了してたじゃん!」
「えっ? いつですか?」
そんな覚えは全然ない。
魅了できたなら、あの時、さっさと刺客の動きを止められたのに。
「見張りに『手を握って』って言ってたじゃない」
「え、あれ、魅了になってたんですか?」
「バッチリなってたよ。そうじゃないと、いくらかわいくても、刺客が見知らぬ女の子の手を取るはずないでしょ」
「そうだったんですね……」
私にもできるんだ。
練習して、少しでもライアンの役に立てたらいいな。
そんなことを考えてたら、ライアンにほっぺたを抓まれた。
「エマは危険なことをする必要はないぞ?」
「でも、私だってできることはしたいです」
守られるばかりは嫌だ。
そういう想いを込めて、ライアンを見上げると、彼ははっとして、頷いた。
「そうだな。エマは意外と独立心が強いんだったな。一緒にいるからには、一方的じゃなくて、二人で考えていかないとな」
ライアンが理解してくれて、にっこりする。
彼も微笑んで、キスをしようとしたところに、ルシードが口を挟んだ。
「ちょっと! 二人の世界にならないで、僕も混ぜてよー」
「混ざるな!」
「えー、僕、結構役に立つよ?」
「もういいから帰れ!」
「ひどいよ!」
ルシードとライアンが戯れているのを私は笑った。
こんな感じで、ルシードはライアンに邪険にされながらも私達についてきた。
気まぐれに現れたり消えたりして。
私は彼から夢魔のあれこれを聞いて助かったし、彼の気安い性格は私の心をほぐしてくれて、話し相手としても楽しかった。
刺客の気配は今のところなく、私達はシュトラーセ教国の国境のひとつ手前の街へ着こうとしていた。
危険であっても、弱点になっても、不安でも。
離れなくていい。
そう気持ちを確かめ合った私達は、それからは安心して、順調に旅を続けた。
ライアンはますます私に甘くなって、すぐキスをしたり、抱きしめたりするけど、逆にそれ以上の触れ合いはしなくなった。
手から精を摂取できるようになったから、誰からでももらえるようになったけど、ライアンが嫌がるから、相変わらず、ライアンから精をもらっている。
でも、もうフェラは必要ないから、手とキスでの補給になった。
想いが通じ合ってからの方が性的な接触がなくなるなんて、私達、順番がおかしいよね。
それがちょっとさみしいなんて思ってしまうけど、「止められなくなるから」と言われると我慢するしかない。
ちなみに、ルシードとは、あのまま別れることになるのかなと思っていたら、いつの間にかついてきていたようで、ローゼンの街に着くと、手を振って「遅かったね」と出迎えられた。
ライアンはすごい殺気を発して追い払おうとしてたけど、「夢魔として注意することがあるんだけど」というルシードの言葉にしぶしぶ宿の部屋に通した。
当然のように私を膝に乗せて座るライアンに、ルシードは笑って、「君達は相変わらずだね。あれから揉めなかったんだ?」としれっと言った。
「揉めたに決まってるだろ!っていうか、今度エマに触れたら、叩き斬るぞ!」
「わぁ、怖いなぁ。僕も女の子を泣かすのは趣味じゃないから、気をつけるよ。でも、エマがいいって言ったら仕方なくない?」
ライアンはギロリとルシードを睨みつけて、「もうそんなこと言うはずがない!」と言い切った。
それをおもしろそうに見るルシード。
「へぇ、もうないんだ」
彼の飄々とした様子に毒気を抜かれて、ライアンは溜息をついた。
ルシードはどこか憎めない。
彼なりになぜか私達に肩入れしてくれてるみたいだし。
ひどいからかわれ方をして泣いたけど、よく考えたら、あれで止めてくれたのよね。
あれを別にすれば、ルシードにはすごく助けられた。
今もわざわざアドバイスをしに来てくれてるし。
「で、注意することってなんだ?」
「あぁ、新人夢魔のエマに言っておかないと肝心な時に慌てることになりそうだと思って」
「だから、なんだ?」
「もう、せっかちだなぁ。………まず、覚えておかないといけないのが、僕達はどこからでも精を摂取できるけど、直接肌に触れないといけないってこと」
「直接肌に、ですか?」
「そう。だから、手袋とかはめられてる手に触っても、精は吸えない」
「そうだったんですね。じゃあ、あの時、見張りの人が手袋してなくてよかったです」
これはとても重要な情報だ。
敵に襲われた時、素肌の部分を探して攻撃しなきゃね。
「あと、これはライアンも知ってる話だけど、魅了はオールマイティじゃない」
「どういうことですか?」
私はルシードとライアンの顔を見上げた。
「予めわかっていたら対策できるってことだ」
ライアンが答えてくれた。
ルシードが頷く。
「そう、僕らが初めて会った時、最初はライアンも魅了されたけど、2回目はかからなかったでしょ?」
「そういえば……」
「ブロックしてたからな。精神魔法系はその対策魔法もあるってことだ。ちなみに、こいつを拘束したバインドにも対策魔法があって、昨日最後に襲ってきたヤツは対策してたから、手間取ったんだ。俺の情報が漏れてるようだな」
「ライアンみたいに自分で対策魔法が使えるか、それ用の護符や魔石を持っていたら対策されてしまうんだよ」
「そうなんですね。でも、私は魅了ができないから、今のところは関係ないですね……」
「えー、魅了してたじゃん!」
「えっ? いつですか?」
そんな覚えは全然ない。
魅了できたなら、あの時、さっさと刺客の動きを止められたのに。
「見張りに『手を握って』って言ってたじゃない」
「え、あれ、魅了になってたんですか?」
「バッチリなってたよ。そうじゃないと、いくらかわいくても、刺客が見知らぬ女の子の手を取るはずないでしょ」
「そうだったんですね……」
私にもできるんだ。
練習して、少しでもライアンの役に立てたらいいな。
そんなことを考えてたら、ライアンにほっぺたを抓まれた。
「エマは危険なことをする必要はないぞ?」
「でも、私だってできることはしたいです」
守られるばかりは嫌だ。
そういう想いを込めて、ライアンを見上げると、彼ははっとして、頷いた。
「そうだな。エマは意外と独立心が強いんだったな。一緒にいるからには、一方的じゃなくて、二人で考えていかないとな」
ライアンが理解してくれて、にっこりする。
彼も微笑んで、キスをしようとしたところに、ルシードが口を挟んだ。
「ちょっと! 二人の世界にならないで、僕も混ぜてよー」
「混ざるな!」
「えー、僕、結構役に立つよ?」
「もういいから帰れ!」
「ひどいよ!」
ルシードとライアンが戯れているのを私は笑った。
こんな感じで、ルシードはライアンに邪険にされながらも私達についてきた。
気まぐれに現れたり消えたりして。
私は彼から夢魔のあれこれを聞いて助かったし、彼の気安い性格は私の心をほぐしてくれて、話し相手としても楽しかった。
刺客の気配は今のところなく、私達はシュトラーセ教国の国境のひとつ手前の街へ着こうとしていた。
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