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第7章 イベントが多すぎる
第44話 まだ一回戦なのに
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第2試合はあっさり終わってしまったらしい。途中で待機することなく俺達は試合場へ出る。
試合場は闘技場の中の六角形に石畳を敷き詰められた場所。さっと見た資料によれば確か1辺30腕の正六角形だ。こうやって見るとかなり広い。
誰もが中央付近に陣取ろうとするのはまあ定石通り。攻撃魔法で場外へと吹き飛ばされるのを防ぐ為だ。
でも俺は人口密度が多そうな場所は苦手。それに今の術が有効なら他の攻撃魔法が通用する可能性は極めて低い。そんな訳で端近くに陣取らせてもらう。
他に3人程別の入口から女性の参加者が入って来た。彼女たちのうち1人は中央近く、残り2人は俺と同様に端に近い方へ陣取る。
『試合開始のカウントダウンを始めます。10、9、8……』
負けないとはわかっても緊張してきた。何せこういう場所、初体験だ。出来れば今回の魔法武闘会で終わりにしたいけれど。
『……2、1、試合開始!』
動きがない。定石通り他の動きを伺っているようだ。しかしそれでは面白くないしこの状態が長く続くのは俺としても不本意。だから少し場を荒らしてやろう。
『風魔法、爆裂魔法連撃12段。実行!』
無詠唱でやや軽めの爆裂魔法をあちこちで連発させてやる。一気に試合が動いた。
中央付近に陣取った連中が近くの敵の隙を攻撃しはじめる。なまじ中央付近に陣取った連中はその分他の敵と距離が近い。自然、乱戦となる。
俺にマウントをとろうとした中年おっさん、あっさり数人にボコられリタイア。やっぱりああいう方法は嫌われるんだな。呑気に観戦していると不意に俺に向けた攻撃魔法を察知。
『氷抵抗!』
一応抵抗をかけて対処する。そのままでも問題は無いだろうが、俺に攻撃が通じない事は出来るだけ隠しておいた方がいいだろう。次に来た雷撃魔法は移動して躱す。
実は俺、攻撃を受けない他にも更にチートな魔法を活用している。別名『空間操作魔法、未来視モード』だ。
未来は幾つもの選択肢が絡み合い、遠い未来ほど確定した状況を見るのは困難。しかし3秒後程度の未来なら未来視でほぼ見える。現状を感覚で処理しつつ3秒先の未来を視ながら動いたりなんて事が出来る訳だ。
だから敵からすれば不意を突いた雷撃魔法でも歩く速さで避けられる。
中央付近の敵は残り2名。端に陣取った俺を含む3名のうち1人は雷撃魔法でリタイア。4名に減ったところでいよいよ本格的に戦いが始まる。
俺と同様端に陣取った女性1名は攻撃魔法と抵抗で全てを対処する戦い方の模様。そして中心に残った2人は高速格闘タイプのようだ。
中心に残った1人のうち小柄な方の1人が俺に狙いを定めた。風魔法と炎魔法でけん制しつつ一気に俺への距離を詰める。確かにこの戦法、強そうだよな。相手が俺でなければだが。
『水魔法、水壁。起動』
まずは定石通り途中に水の壁を作って防御。その隙にちょっかいを出してきた別の敵からの雷撃魔法を3歩前進して回避。
しまった今の回避、前進でなく後退でやるべきだったかな。おかげで正面の敵との距離が更に縮まってしまった。まあそれを意図して雷撃魔法を仕掛けたのだろうけれど。
正面の敵は水壁に対し抵抗《レジスト》をかけて突っ込んでくるようだ。それならば。
『空間操作、歪曲、起動』
これは別名重力操作魔法、俺の背後へ向かう強力な重力を奴に仕掛けた。結果、敵はとんでもない勢いで俺に迫ってくる。ただでさえ水壁を抜けた直後でこっち向きに力をかけていたようだ。
俺は迫ってくる敵をぎりぎりで避ける。避けなくても当たらないのだが一応という事で。
更に背後から『空間操作、歪曲、起動』と重力操作魔法を追加起動。今度は上方向へちょい引っ張ってやった。敵は踏ん張ろうとするが重力操作のせいで足を踏ん張れない。結果として場外へ一直線に吹っ飛んでいく。
そのまま場外へ落ちたのを確認。
さて向こうはどうなった。ちょうど俺の視線が向いた瞬間、左方場外へと男が吹っ飛んでいくのが見えた。あっちの戦いは端に陣取った女魔法使いが制したようだ。
奴がこっちを向く。おっと案外可愛い。年齢は俺と同じくらいかちょい上。いかにも魔法専業という感じのローブを身にまとっている。
彼女の唇が動いて呪文を唱えるのが視える。
「召喚、白龍!」
おっと、いきなり非常識な魔法を唱えやがった。抵抗出来ない例外魔法の一つ、召喚魔法だ。
召喚魔法は個人の相性によって召喚できる魔物と召喚出来ない魔物がいる。自分が召喚できる魔物は抵抗出来るがそれ以外は抵抗不可能。魔物がこっちのいう事を聞いてくれないから。
だが、俺が視ているのは実は3秒後の映像。現実にはまだ召喚されていない。だから俺の空間操作魔法なら対処可能だ。
『空間操作、歪曲及び閉鎖、対象白龍、起動!』
実際に出現する瞬間にあわせ、白龍をそのまま歪空間でくるんで閉鎖空間に閉じ込める。
出現した直後に白龍は姿を消した。俺以外のほとんどの皆様にはそう見えただろう。俺と同等の魔法を持つ陛下には俺が何をしたかわかったかもしれないけれど。
さあこれでどうだ。
しかし女魔法使いさん、まだ戦意を失っていない模様。まだ奥の手があるのか。
俺の魔力も残りはそれほど多くない。空間操作魔法数発程度という所だろう。帰りの移動魔法分も残すなら今のような魔法は残り3~4発ってところか。
かなりぎりぎりになってしまった。負けるとは思っていないけれどちょい反省。
「我は求める、我は其を……」
女魔法使いさん、何かいかにも強烈そうな魔法を唱え始めた。召喚魔法のようだが何を喚ぶつもりだろう。
俺は空間操作魔法を召喚予想地点に起動直前状態でセットする。白竜と同様、出現と同時に即閉鎖空間送りにするつもりで。
それにしても何か不穏そうな魔法だ。呪文が妙に長い。
「……これを以て召喚呪文となる、来たれ中立古龍! 天空の使いよ!」
おい待ってくれ! そんなの1回戦で召喚するような代物じゃない!
中立古龍はこのスティヴァレでも伝説級の魔物。百年前に出現した際は、軍の精鋭魔法騎士団1個連隊でよってたかって3昼夜戦ってやっと撃退したという化け物だ。
こんなの闘技場にかかっている魔法で抑えられるのだろうか。観客がパニックを起こすぞ間違いなく。
俺も本気で魔法を起動する。
『対象中立古龍、起動!』
セットしていた空間操作魔法を起動する。だが流石中立古龍。俺の空間操作魔法に抵抗を仕掛けてきた。
魔力の負荷が一気に高まる。ヤバい、もし抵抗《レジスト》が効くなら古龍と俺の魔力差で勝ち目は無い。
だが手ごたえは消えていない。抵抗《レジスト》は完全では無いようだ。
中立古龍と言えど空間操作魔法までは使用範囲で無い模様。おそらく似た系統の魔法の抵抗で無理やり対抗しているのだろう。ならば勝てる。
それでも思った以上に魔力を分捕られていく。しかし出現と同時位に閉鎖空間送りにしないと闘技場にまで被害が出そうだ。そんな訳で俺もマジというかもう必死。
ギリギリまで攻めあったが何とか出現と同時に閉鎖空間に押し込むのに成功。ついでにもう一つ魔法を無詠唱で起動する。
『空間操作、歪曲。起動!』
女魔法使いさんに背後やや上向きに重力魔法を起動。中立古龍が消え意識が一瞬そっちにむいた彼女が飛ばされる。そのまま場外へ飛ばされしりもちをついたのを確認。
『第3試合、勝者チャールズ・フォート・ジョウント!』
一応勝者として相手方向と国王席、客席に礼をする。国王席には疲れさせてもらった恨みを込めておいたが気付かないだろうなどうせ。
何と言うか思った以上に疲れた。移動魔法で帰る分の魔力も残っていない。疲れたから早く帰りたいのだけれど。控室辺りで魔力が戻るまで休ませてもらうとするか。
俺はふらふらと来た通路を戻りはじめた。
試合場は闘技場の中の六角形に石畳を敷き詰められた場所。さっと見た資料によれば確か1辺30腕の正六角形だ。こうやって見るとかなり広い。
誰もが中央付近に陣取ろうとするのはまあ定石通り。攻撃魔法で場外へと吹き飛ばされるのを防ぐ為だ。
でも俺は人口密度が多そうな場所は苦手。それに今の術が有効なら他の攻撃魔法が通用する可能性は極めて低い。そんな訳で端近くに陣取らせてもらう。
他に3人程別の入口から女性の参加者が入って来た。彼女たちのうち1人は中央近く、残り2人は俺と同様に端に近い方へ陣取る。
『試合開始のカウントダウンを始めます。10、9、8……』
負けないとはわかっても緊張してきた。何せこういう場所、初体験だ。出来れば今回の魔法武闘会で終わりにしたいけれど。
『……2、1、試合開始!』
動きがない。定石通り他の動きを伺っているようだ。しかしそれでは面白くないしこの状態が長く続くのは俺としても不本意。だから少し場を荒らしてやろう。
『風魔法、爆裂魔法連撃12段。実行!』
無詠唱でやや軽めの爆裂魔法をあちこちで連発させてやる。一気に試合が動いた。
中央付近に陣取った連中が近くの敵の隙を攻撃しはじめる。なまじ中央付近に陣取った連中はその分他の敵と距離が近い。自然、乱戦となる。
俺にマウントをとろうとした中年おっさん、あっさり数人にボコられリタイア。やっぱりああいう方法は嫌われるんだな。呑気に観戦していると不意に俺に向けた攻撃魔法を察知。
『氷抵抗!』
一応抵抗をかけて対処する。そのままでも問題は無いだろうが、俺に攻撃が通じない事は出来るだけ隠しておいた方がいいだろう。次に来た雷撃魔法は移動して躱す。
実は俺、攻撃を受けない他にも更にチートな魔法を活用している。別名『空間操作魔法、未来視モード』だ。
未来は幾つもの選択肢が絡み合い、遠い未来ほど確定した状況を見るのは困難。しかし3秒後程度の未来なら未来視でほぼ見える。現状を感覚で処理しつつ3秒先の未来を視ながら動いたりなんて事が出来る訳だ。
だから敵からすれば不意を突いた雷撃魔法でも歩く速さで避けられる。
中央付近の敵は残り2名。端に陣取った俺を含む3名のうち1人は雷撃魔法でリタイア。4名に減ったところでいよいよ本格的に戦いが始まる。
俺と同様端に陣取った女性1名は攻撃魔法と抵抗で全てを対処する戦い方の模様。そして中心に残った2人は高速格闘タイプのようだ。
中心に残った1人のうち小柄な方の1人が俺に狙いを定めた。風魔法と炎魔法でけん制しつつ一気に俺への距離を詰める。確かにこの戦法、強そうだよな。相手が俺でなければだが。
『水魔法、水壁。起動』
まずは定石通り途中に水の壁を作って防御。その隙にちょっかいを出してきた別の敵からの雷撃魔法を3歩前進して回避。
しまった今の回避、前進でなく後退でやるべきだったかな。おかげで正面の敵との距離が更に縮まってしまった。まあそれを意図して雷撃魔法を仕掛けたのだろうけれど。
正面の敵は水壁に対し抵抗《レジスト》をかけて突っ込んでくるようだ。それならば。
『空間操作、歪曲、起動』
これは別名重力操作魔法、俺の背後へ向かう強力な重力を奴に仕掛けた。結果、敵はとんでもない勢いで俺に迫ってくる。ただでさえ水壁を抜けた直後でこっち向きに力をかけていたようだ。
俺は迫ってくる敵をぎりぎりで避ける。避けなくても当たらないのだが一応という事で。
更に背後から『空間操作、歪曲、起動』と重力操作魔法を追加起動。今度は上方向へちょい引っ張ってやった。敵は踏ん張ろうとするが重力操作のせいで足を踏ん張れない。結果として場外へ一直線に吹っ飛んでいく。
そのまま場外へ落ちたのを確認。
さて向こうはどうなった。ちょうど俺の視線が向いた瞬間、左方場外へと男が吹っ飛んでいくのが見えた。あっちの戦いは端に陣取った女魔法使いが制したようだ。
奴がこっちを向く。おっと案外可愛い。年齢は俺と同じくらいかちょい上。いかにも魔法専業という感じのローブを身にまとっている。
彼女の唇が動いて呪文を唱えるのが視える。
「召喚、白龍!」
おっと、いきなり非常識な魔法を唱えやがった。抵抗出来ない例外魔法の一つ、召喚魔法だ。
召喚魔法は個人の相性によって召喚できる魔物と召喚出来ない魔物がいる。自分が召喚できる魔物は抵抗出来るがそれ以外は抵抗不可能。魔物がこっちのいう事を聞いてくれないから。
だが、俺が視ているのは実は3秒後の映像。現実にはまだ召喚されていない。だから俺の空間操作魔法なら対処可能だ。
『空間操作、歪曲及び閉鎖、対象白龍、起動!』
実際に出現する瞬間にあわせ、白龍をそのまま歪空間でくるんで閉鎖空間に閉じ込める。
出現した直後に白龍は姿を消した。俺以外のほとんどの皆様にはそう見えただろう。俺と同等の魔法を持つ陛下には俺が何をしたかわかったかもしれないけれど。
さあこれでどうだ。
しかし女魔法使いさん、まだ戦意を失っていない模様。まだ奥の手があるのか。
俺の魔力も残りはそれほど多くない。空間操作魔法数発程度という所だろう。帰りの移動魔法分も残すなら今のような魔法は残り3~4発ってところか。
かなりぎりぎりになってしまった。負けるとは思っていないけれどちょい反省。
「我は求める、我は其を……」
女魔法使いさん、何かいかにも強烈そうな魔法を唱え始めた。召喚魔法のようだが何を喚ぶつもりだろう。
俺は空間操作魔法を召喚予想地点に起動直前状態でセットする。白竜と同様、出現と同時に即閉鎖空間送りにするつもりで。
それにしても何か不穏そうな魔法だ。呪文が妙に長い。
「……これを以て召喚呪文となる、来たれ中立古龍! 天空の使いよ!」
おい待ってくれ! そんなの1回戦で召喚するような代物じゃない!
中立古龍はこのスティヴァレでも伝説級の魔物。百年前に出現した際は、軍の精鋭魔法騎士団1個連隊でよってたかって3昼夜戦ってやっと撃退したという化け物だ。
こんなの闘技場にかかっている魔法で抑えられるのだろうか。観客がパニックを起こすぞ間違いなく。
俺も本気で魔法を起動する。
『対象中立古龍、起動!』
セットしていた空間操作魔法を起動する。だが流石中立古龍。俺の空間操作魔法に抵抗を仕掛けてきた。
魔力の負荷が一気に高まる。ヤバい、もし抵抗《レジスト》が効くなら古龍と俺の魔力差で勝ち目は無い。
だが手ごたえは消えていない。抵抗《レジスト》は完全では無いようだ。
中立古龍と言えど空間操作魔法までは使用範囲で無い模様。おそらく似た系統の魔法の抵抗で無理やり対抗しているのだろう。ならば勝てる。
それでも思った以上に魔力を分捕られていく。しかし出現と同時位に閉鎖空間送りにしないと闘技場にまで被害が出そうだ。そんな訳で俺もマジというかもう必死。
ギリギリまで攻めあったが何とか出現と同時に閉鎖空間に押し込むのに成功。ついでにもう一つ魔法を無詠唱で起動する。
『空間操作、歪曲。起動!』
女魔法使いさんに背後やや上向きに重力魔法を起動。中立古龍が消え意識が一瞬そっちにむいた彼女が飛ばされる。そのまま場外へ飛ばされしりもちをついたのを確認。
『第3試合、勝者チャールズ・フォート・ジョウント!』
一応勝者として相手方向と国王席、客席に礼をする。国王席には疲れさせてもらった恨みを込めておいたが気付かないだろうなどうせ。
何と言うか思った以上に疲れた。移動魔法で帰る分の魔力も残っていない。疲れたから早く帰りたいのだけれど。控室辺りで魔力が戻るまで休ませてもらうとするか。
俺はふらふらと来た通路を戻りはじめた。
応援ありがとうございます!
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