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王城に着くと私はそのまま一室を与えられ保護された。
両親であるガネシヤ侯爵夫妻が呼び出され、現国王、宰相親子、グレイアム殿下と共に秘密会議に参加する運びとなる。

「一時は奇跡の乙女と呼ばれながら神の導きによりシスターとなったアマリアが、あのような惨い最期を迎えるなど、誰も想像していなかったであろう」

国王陛下も深刻な声音に悲しみを滲ませる。

「許せない」

どんな時も穏やかに慈愛の微笑みを浮かべていたアライアンスが、憎しみも顕わに歯軋りしている。
私は泣き腫らした目で次の発言者を見遣った。

グレイアム殿下は涙を浮かべつつも憤怒の表情で呻り、片腕で私を抱き寄せた。

「シスター・アマリアを殺めた殺人犯が見つかるまで、我が息子グレイアムと貴殿の息女コーネリアの結婚は延期とする。異論はないな?」
「はい、陛下」

国王と父が短く了承を交わす。
私もそれどころではないと理解できた。ただそれとは別に、このように残酷な運命が私の命を奪おうと忍び寄っている、結婚延期はその一手段なのだと考えてしまう。

恐怖で震える私をグレイアム殿下が抱きしめてくれた。

「コーネリア。君はここで暮らしたらいい。宮殿なら安全だし、私たちが離れることもない」
「殿下……」

そんな話をしていると部屋の外から幾らか騒がしい気配がして、勢いよく扉が開かれた。

「!」

その人物の顔を見て、私は心底怯えた。

血相を変えた残虐なエリオット殿下がメイプル神父を引き連れて現れたのだ。
子を持たないメイプル神父であろうとも、孤児を育て上げ紛れもない養父の人格を培っていた。メイプル神父は悲壮感の溢れた顔で、私と同じように泣き腫らした目をしていた。

「エリオット……!」

大公になる準備を既に始めて一国の王さらながに風格を備えたエリオット殿下は、国王陛下を驚かせる程度には充分、鬼気迫る表情だった。

まさか……
私がアマリアを殺したとでも言い出すつもり……?

私は更に怯え、自らグレイアム殿下にしがみ付いた。
グレイアム殿下の胸に顔を埋め、超高速で尤もな弁明を考える。

もしこの場で私がアマリアを殺したと決めつけられたりしたら、処刑ルート確定だ。

死にたくない……
恐い……

痛いのはもう嫌……!

「父上。大変な事態です。これを」

エリオット殿下がそう言って国王陛下に何かを渡す気配がした。

「む……なんと……!」
「殺されたシスターが神父に宛てた置手紙です」

え?
なに?

私を愛してしまったとか、そういうことが書いてあるの?

「これは……どういうことだ、メイプル神父!」
「?」

どうも私は関係なさそうな雰囲気に私はおずおずと顔を上げ、国王陛下の方に目を向けた。
今度は国王陛下まで鬼気迫る表情をしている。親子だから、よく似ている。

「アマリアは孤児ではなかったのか……!?」
「陛下!神に誓って申し上げます。私も存じ得なかったことで、その手紙で今朝初めて知ったのでございます!」

メイプル神父が必死に弁明している。

「……?」

何の話?
アマリアが、孤児ではない?

「コーネリア……まさかこんな真実を告げることになるとは」
「え?」

突然、国王陛下に名を呼ばれ、穏やかではない前置きをして見つめられる。

「なんですか、父上」

グレイアム殿下が守るように私を抱きしめてくれる。
そしてついに国王陛下の口からアマリアの正体が明かされた。

「アマリアは────だからそなたに取入ったのだ。年下のこどもたちに慕われていたそなたが王子と婚約したと見て、それとなく近づいた。────という──の為に」
「すべてはアマリアの計画だったということだ」

エリオット殿下が忌々しそうに言い、私を見据えた。
私は恐ろしさに言葉を失い、国王陛下と、前回は私を絞殺したエリオット殿下、そして私を抱きしめ離さないグレイアム殿下を順に見つめた。

「……そんな」

聞こえたはずなのに、理解できない。
重大な真実を打ち明けられたはずなのに、私にだけは聞こえなかった。満たすべき特定の条件を満たしていないせいかもしれない。それしか考えられない。
でもその条件がわからなかった。

どの時点で何をすべきだったのか。
どれだけ考えを巡らせてみても無駄だ。過去へは戻れない。

「……」

不穏な敗北感に体が芯から凍りつく。
私は侯爵令嬢コーネリアに死亡フラグが立ったのだと悟った。

「まさか……そんな……!」

グレイアム殿下が驚愕の声を上げた。
そこでアライアンスが感情を放棄した乾いた声を重ねる。

「ではアマリアを殺したのは誰なのです?」
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