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婚約者編
友好の架け橋
しおりを挟むアマリリスとマーガレットは、水着になり、浮き輪の中に入り、海にぷかぷか浮いている。その横を、気持ちよさそうにクゥーが泳いでいる。
(おかしいわね。私もクゥーの真似をしたはずなのに沈んでしまったわ。もしかして、クゥーの体には、浮き輪でも入っているのかしら)
アマリリスたちの浮き輪と水着は、イベリス侯爵が準備してくれた。海をもつ隣国から入手したそうだ。
「気持ちいいわね」
アマリリスとマーガレットは、目を細め、静かに波に揺られていた。
砂浜では、レオナードとアレルがコーリキュラから泳ぎ方を教わっている。それ以外にイベリス領の護衛達がコーリキュラの従者から泳ぎ方を教わっている。アマリリスとマーガレットも泳ぎ方を学びたかったが、却下された。アマリリスたちは、泳げなくていいのだそうだ。溺れてもレオナードたちが助けてくれるからだそうだ。
しばらくすると、レオナードとアレルが泳いで、アマリリスたちのところへ来た。浮き輪に捕まる。
「さすがね。もう、泳げるようになったのね。気持ちよさそう」
浮き輪に捕まっているレオナードにアマリリスは、微笑む。濡れた髪に太陽の光が当たり、キラキラして綺麗。
「あぁ、泳ぐのは気持ちいい。コーリーのおかげで、泳げるようになった。もう、溺れることはない。リリーが溺れることがあっても私が助けられる」
レオナードとアマリリスは、微笑みあう。アマリリスは、頼もしいレオナードを誇りに思う。レオナードとアレルは、その後、楽しそうにアマリリスたちの周りを泳いでいた。
海で泳いだ後、アマリリスたちは、海沿いを散歩した。波の音が心地いい。すると、岩場に乗り上がっている黒い物体を見つけた。
「あれ何かしら?」
アマリリスが不思議そうに聞く。コーリキュラは、目を細め、あっと呟く、知っているようだ。
「クジラが、座礁しているな。けがか病気でもしたのかもしれない」
(まぁ、けがか病気なんてかわいそう)
アマリリスは、なんとか助ける方法はないか考え、思いつく。このイベリス領には、エビスシア国が攻めてきた時のための騎士向けに用意した薬が沢山ある。それを持ってきて、クジラの治療を行おうと考えた。
クジラの大きさにアマリリスやレオナード、アレル、マーガレットは驚く。クジラは、初めて見る。アマリリスたちとコーリキュラとコーリキュラの従者達で、手分けして、クジラに薬を飲ませたり、傷があれば、傷に薬を塗った。そして、一頭ずつ元気になり、海に戻って行った。二〇頭ぐらいいただろうか。全頭、海に戻って行った。気付いたら、日も暮れていた。クジラたちが、元気になり、アマリリスは、ほっとした。
そして、その日の夜、砂浜で、アマリリスは、ホープを演奏している。コーリキュラから頼まれた。
エビスシア国の大陸にも海風に乗って聴こえるだろうから、弾いてほしいと……。エビスシア国の民達の心を癒してほしいと言われた。コーリキュラは、命の恩人。アマリリスは、快く承諾した。
ポロン、ポロン、ポロポロポロン……
ポロポロ……
きれいで、透き通るような、心地いい音色。メロディーに合わせて暖かい優しい海風が吹いている。
その海風に合わせて、波が静かに近づいたり、遠のいたりする。
(エビスシア国の皆さんの心が癒され、穏やかになりますように……)
という思いを込めて、アマリリスは演奏した。
座礁していたクジラたちも小さな色とりどりの魚たちも砂浜近くまで来て聴いてくれていた。
(うふふ、良かったわ。喜んでもらえて)
翌日、
砂浜にエビスシア国の大陸から来た船が止まっている。そこには、アマリリスとレオナード、アレル、マーガレット、クゥー、ぴーちゃん、コーリキュラ、コーリキュラの従者がいる。そして、アマリリスたちの目の前には、
この大陸とエビスシア国の大陸を結ぶように大きな虹がかかっていた。海では、昨日、座礁していて薬で助けたクジラたちが、頭から水しぶきを出している。その水しぶきのせいでできた虹だろう。
「わぁ、虹がかかってるわ。綺麗ね。この大陸と エビスシア国の大陸を結ぶ橋のようね」
アマリリスは、綺麗な虹にうっとりしながら、レオナードとコーリキュラに向かって笑顔で言う。
「本当だ。ぜひ、わが国と友好国になってほしい。いつか民がこの大陸とわが国の大陸を行き来できる橋を架けたいな。どうだろうか?」
コーリキュラがレオナードとアマリリスに向かって笑顔で提案する。素敵! とアマリリスは思い、レオナードの反応に期待する。
「それは、いい」
レオナードは、いい提案だと思い、笑顔で答える。
「うふふ、友好の架け橋ね」
アマリリスは、コーリキュラの提案にわくわくする。
「友好の架け橋か。いいな。ぜひ実現させよう」
コーリキュラは、レオナードに手を出してきた。これを実現できれば、争いがなくなり、行き来がなかったエビスシア国との貿易が盛んになる。とレオナードは思う。
「あぁ、実現させよう」
レオナードも手を出し握手をする。コーリキュラは、アマリリスにも手を出してくる。アマリリスは、レオナードを見る。レオナードは、頷いてる。いいってことね。とアマリリスは思い、手を出し、握手する。すると、ぐっと引っ張られ、抱きしめられる。
「こら!」
レオナードが抗議の声をあげる。アマリリスを後ろから引っ張り、抱きしめる。
「これぐらいいいだろう。レオたちは、相思相愛なんだろう。堂々としろ」
コーリキュラは、笑う。アマリリスは、突然のことで、顔が真っ赤。
「リリー、顔が赤いぞ」
レオナードが後ろからアマリリスの顔を覗き込む。
「おっ、私にもチャンスありか?」
コーリキュラが笑顔で、アマリリスをちゃかす。
「ないです」
アマリリスは、ぷいっとレオナードの方を向きレオナードを抱きしめる。レオナードが抱きしめ返す。
コーリキュラは、アマリリスを抱きしめた時、アマリリスの耳元で言った。『君は、聖女のようだな。『命の葉』を頼んだぞ』と……。
アマリリスは、振り返りコーリキュラを見る。気付いたのか笑顔で言う。
「私は、歴史が好きなんだ。口は堅いから安心してくれ」
(あっ、ライトお爺さんが、森について聞いてきた者がいたって言ってたわね。それってコーリーのことかしら。歴史が好きな者は森について知りたくなるらしいから……)
コーリキュラと従者は、迎えの船に乗り、エビスシア国の大陸へ帰って行った。アマリリスたちは、手を振って見送った。
「レオ、海に入ろう」
「リリーは、本当に海が好きだな」
アマリリスは、浮き輪の中に入り、海にぷかぷか浮かぶ。レオナードは、その浮き輪を引っ張ってくれる。今は、浮き輪に捕まって一緒に浮いている。
王は、レオナードとアマリリスが海の中で浮き輪に捕まって、仲睦しく話している姿をメルローズ公爵と砂浜から見ていた。二人の後ろには、この大陸とエビスシア国の大陸を結ぶように大きな虹がかかっている。濡れた金髪の二人は、太陽の光が当たり輝いて見えた。レオナードのアマリリスを見る愛しい優しいまなざし、それを優しい笑顔で返しているアマリリス。二人の並ぶ姿はお似合いで綺麗だった。王は、思う。
(アマリリス嬢ほどレオの妻に合う人はいないだろう。そして、レオの隣にアマリリス嬢が立ってくれれば、この国は安泰のような気がする。不思議と安心感がある)
「私たちの子供は、お似合いだな。学園を卒業したら結婚させてもいいな」
王は、優し気な笑顔を浮かべ、メルローズ公爵に声をかける。
「そうだな」
メルローズ公爵は、アマリリスの幸せそうな姿を見て、安堵し、王を見て、微笑んだ。
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