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3章 初恋と失恋 ~オム玉丼~
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特製のオム玉丼か……黒島は「美味しそうですね」と口にして、そのメニューを受け入れた。オムライスではなくて、オム玉丼というネーミングに変化したことに興味が湧いたから。
「んーと、何使おうかな」
機嫌良さげに、サオが冷蔵庫から食材を取り出そうとする。「鶏肉と豚肉どっちが好き?」と聞かれたので、黒島は素直に豚肉と答えた。
「じゃあ、いいのがあるわ」
サオは冷蔵庫から、ビニールの中で醤油色の液体に漬けられている何かを取り出した。中をよく見てみると、ゴツゴツしたブロック肉のようなものが入っている。
「これは……チャーシューですか?」
黒島は頭に浮かんだ疑問をすぐに口にした。きっとチャーシューだと、僅か十九年生きただけの知識でも予測はつく。
サオは「ピンポーン」と嬉しそうに微笑み、目視でタレの染み込み加減を確認する。「大丈夫そうね」と言って中から取り出した。
「今日は焼き豚を使っていくわよ」
「オムライスに、チャーシューですか?」
「オムライスじゃなくて、オム玉丼よ。ちょっと和風っぽくしてみるわ」
切れ味抜群のセラミック製包丁で、スルスルとチャーシューを一枚ずつ切っていく。断面は白とピンクの狭間のような色をしており、味は十分に染み込んでそうだ。
そこそこ厚切りのチャーシューを三枚ほど重ねて、それを今度は微塵切りで細かく切っていく。切り終わったらもう使わないチャーシューを冷蔵庫に戻した。
そのまま玉ねぎや長ネギ、ニンニクも微塵切りにしていく。早いテンポで包丁が上下し、あっという間に切られた。
「マッシュルームは好き?」
「あ、はい」
「オッケー、じゃあそれも入れちゃお」
今度は缶詰めに入ったマッシュルームを取り出した。急に缶詰が出てきたので、黒島は「このお店にも缶詰とかあるんですね」と笑った。
「どういう意味ー? 私が美味しいと思ったものは使うわよ。この業務用のマッシュルームは味が確かだから、缶詰タイプでも仕入れてるの」
「そ、そうなんですか。てっきり食材は生のものを使うと思っていました」
「ああ、これも新鮮な素材缶よ」
全くの偏見をぶつけたことを反省する黒島。サオは気にせずに缶詰の水を切る。そのまま今回のオム玉丼で使うであろう量を掬い、別皿によけた。
「よし、下ごしらえは完了かなー。ごめんね、米がまだ炊けてなくて。炊飯器のボタン押すの忘れててさ」
「そうなんですか。大丈夫ですよ、時間は気にしていないので」
もうすっかり、サオのタメ口に慣れてしまった。しっかり者のお姉さんのような印象なのに、意外とおっちょこちょいなところがあるんだなと、心で笑う。
余裕を見せた黒島に、サオは「助かるわ」と言った後、キッチン内の隅の方にある椅子に座った。
「んーと、何使おうかな」
機嫌良さげに、サオが冷蔵庫から食材を取り出そうとする。「鶏肉と豚肉どっちが好き?」と聞かれたので、黒島は素直に豚肉と答えた。
「じゃあ、いいのがあるわ」
サオは冷蔵庫から、ビニールの中で醤油色の液体に漬けられている何かを取り出した。中をよく見てみると、ゴツゴツしたブロック肉のようなものが入っている。
「これは……チャーシューですか?」
黒島は頭に浮かんだ疑問をすぐに口にした。きっとチャーシューだと、僅か十九年生きただけの知識でも予測はつく。
サオは「ピンポーン」と嬉しそうに微笑み、目視でタレの染み込み加減を確認する。「大丈夫そうね」と言って中から取り出した。
「今日は焼き豚を使っていくわよ」
「オムライスに、チャーシューですか?」
「オムライスじゃなくて、オム玉丼よ。ちょっと和風っぽくしてみるわ」
切れ味抜群のセラミック製包丁で、スルスルとチャーシューを一枚ずつ切っていく。断面は白とピンクの狭間のような色をしており、味は十分に染み込んでそうだ。
そこそこ厚切りのチャーシューを三枚ほど重ねて、それを今度は微塵切りで細かく切っていく。切り終わったらもう使わないチャーシューを冷蔵庫に戻した。
そのまま玉ねぎや長ネギ、ニンニクも微塵切りにしていく。早いテンポで包丁が上下し、あっという間に切られた。
「マッシュルームは好き?」
「あ、はい」
「オッケー、じゃあそれも入れちゃお」
今度は缶詰めに入ったマッシュルームを取り出した。急に缶詰が出てきたので、黒島は「このお店にも缶詰とかあるんですね」と笑った。
「どういう意味ー? 私が美味しいと思ったものは使うわよ。この業務用のマッシュルームは味が確かだから、缶詰タイプでも仕入れてるの」
「そ、そうなんですか。てっきり食材は生のものを使うと思っていました」
「ああ、これも新鮮な素材缶よ」
全くの偏見をぶつけたことを反省する黒島。サオは気にせずに缶詰の水を切る。そのまま今回のオム玉丼で使うであろう量を掬い、別皿によけた。
「よし、下ごしらえは完了かなー。ごめんね、米がまだ炊けてなくて。炊飯器のボタン押すの忘れててさ」
「そうなんですか。大丈夫ですよ、時間は気にしていないので」
もうすっかり、サオのタメ口に慣れてしまった。しっかり者のお姉さんのような印象なのに、意外とおっちょこちょいなところがあるんだなと、心で笑う。
余裕を見せた黒島に、サオは「助かるわ」と言った後、キッチン内の隅の方にある椅子に座った。
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