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「ファックファックファックファックファック! ファァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアック!! ちーがーうーだーろー! 違うだろ!」
「す……すみません」

 槍を教える時のドワールはまさに人が変わったかのようだった。
 鬼の形相となり、言葉使いは聞くに堪えれらないほどに醜く、平気で私を怒鳴りつける。

 私はドワールの変貌に怯えながら、庭で槍を振るう。
 背後でお母さまがオロオロと慌てていた。
 あまりの言葉使いに一度ドワールに文句を言ったお母さまであったが、槍に関しては絶対に折れない人で、「教えると決めたからにはとことん教えるんだよ、ファック!」とやはり汚い言葉をお母さまに言い放った。
 
 それ以降、お母さまはドワールのことが怖くなり、あまり話しかけることができなくなったようで、今もこうして慌てているだけというわけだ。

「おい! 何無駄なこと考えてやがる! 槍を握っている時は槍のこと以外考えてんじゃねえ! 槍に対して無礼だろうだ!」

 どういう理屈だ?  
 と思うが、ドワールが怖くて私はただ素直に従うのみ。
 
 ドワールは怖いが、しっかり槍を教えてくれた。
 私から言い出したことだし、途中でやめるつもりもない。
 やると決めたのは私だ。 
 ドワールと約束したのは私だ。
 今更投げ出すものか。

 意地を張っていたということもあるだろう。
 だけど私は槍を続けた。
 それは毎日ひたすら続く。

 雨の日も。
 風の日も。
 近くで爆発事件が起きた時も。

 休むことなく、毎日槍の訓練が続いた。
 
 ドワールはとにかく怖く厳しかったが、槍のことを抜きにしたら、穏やかな人である。

「お嬢様。お勉強の方はどうですか?」
「ええ。悪くないわ。槍ほどではないけれど、しっかりやっています」
「なら言うことはありませんな。槍の所為で勉学がおろそかになったら、旦那様や奥様に合わせる顔がない」
「ドワールはいつもそんな風に考えてくれていたのですね……」

 ドワールの優しい気持ちに心がポカポカする。
 彼は本当にいい人だ。
 強く優しく、尊敬に値する人。
 この人からは槍以外にも学ぶべきことが多い。
 これから彼を手本にして生きていこう。

「ファーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーック!! なんだその小さな声は! 突く時はもっと気合入れて叫べ!」
「え、えい!」
「違う違う違う! もっと心の中から叫んで突くんだよ!」
「フ、ファック……ファーック!」

 私がそう叫ぶと、背後でお母さまが倒れる音が聞こえた。
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