妹に婚約者も家名も奪われましたが私は王妃の遺言状を握っています 〜虐げられた公爵令嬢を捨てた王宮が、三日後に血塗れの相続争いで崩壊しました~

公爵令嬢エレノア・ヴァレンシュタインは、王太子ユリウスの婚約者として十年もの間、王宮の裏側を支えてきた。

病弱だった王妃の代理として、茶会の席次、貴族派閥の調整、外交文書の管理、孤児院基金の帳簿、王太子の失言の後始末まで――誰にも褒められず、感謝もされず、それでも国のために尽くしてきた。

だが、王妃の葬儀から七日後。

エレノアは突然、王太子から婚約破棄を告げられる。

新たな婚約者として選ばれたのは、可憐で愛らしく、誰からも守られてきた妹リリアナだった。

「君は冷たい。リリアナは人の心が分かる」

その言葉に、エレノアは泣かなかった。

父は妹を公爵家の後継に据え、母は「姉なら妹に譲るべき」と微笑み、王太子は当然のようにエレノアの居場所を奪った。

婚約者も、家名も、王宮での立場も。
すべてを奪われたエレノアは、ただ一つだけ手放さなかった。

亡き王妃から託された、黒い封蝋の遺言状を。

エレノアが王宮を去った翌日、王宮の茶会は崩壊した。
二日目、隣国大使が激怒した。
三日目、王妃の遺産と孤児院基金を巡る不正が露見し始めた。

誰も知らなかった。

王宮を支えていたのは、愛される妹ではなく、冷たいと蔑まれた姉だったことを。

そして、冷徹宰相と呼ばれる王弟カインは、追放されたエレノアの前に現れる。

「君を王宮に戻しに来た。王太子の婚約者としてではない。この国を裁く、王妃の証人としてだ」

王妃の遺言状に記されていたのは、王位継承を揺るがす秘密。
公爵家の裏切り。
王宮財務官の横領。
そして、エレノアこそが王妃に選ばれた最後の後継者であるという真実だった。

妹は泣けば許されると思っていた。
父は娘を道具として売れると思っていた。
王太子は捨てた婚約者が戻ってくると思っていた。

けれどもう、遅い。

これは、奪われ続けた公爵令嬢が、涙ではなく証拠で王宮の嘘を暴き、自分を正しく見つけた冷徹王弟に深く愛されるまでの物語。
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