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第十一章 懇ろな図りこと
真相は願いでた者の口から
しおりを挟む(確かに……初見の人に対して冷静さに欠けてた言動をとったかも)
「失敗はない。でも一発成功とか思って無かった。段階踏まなきゃ、って。なのに薫が茶化すのがイケナイ」
「わ、わ、私がかっ!」
「そうそう、食べ物に走って“ 賭け ”のことバラした己を責めよ」
「あっ。私がトチったのかー。メンゴメンゴ……ん?薫が先に何か言ったよね?」
「それは記憶違いでしょ。気のせい気のせい」
「そうだっけ?」
頻りに首を傾げる安川さん。
「酔っ払いは放っといて、透君。彩香はね、いつもは穏やかな子なの。今夜は酒の席ってのもあって。まっ、怒られ役はお馬鹿な薫に譲って、透君は気にしないで彩香と話して」
「いやいやいや、その役。吉冨に譲るよ」
「だが断るっ」
「ふぇ~ん。ぐすんぐすん」
「可愛くないし」
ふたりが即興漫才を始めた。 私が落ち込んでると、こうやって和ましてくれる。
(いつも感謝なのだ)
「飽くまでも『店に連れてきて欲しい』『紹介して欲しい。是が非でも』と乞うたは俺です。急かして急かして。やっとお会い出来た。真に理想的な女性に。心底嬉しいです。“ あやかさん ”」
「私の名前を?」
呼びかけられた自分の名が耳を擽った。 苛立ちは消えいて、安堵と歓びとこそばくて。 泣きたくさせる甘酸っぱいものに変貌してる。
「いきなり下の名を呼ぶのは不躾でした、すみません」
落胆の色を帯びるた声にまた切ないものを感じた。
「ご迷惑でしょうか。どなたかお付き合いしている人か、想いを寄せる方がいらっしゃるとか?」
「ナイナイ。この子は今、空き家なの!」
「透君についてだけど。まだ社会に出ていない部分が白紙状態ってだけ。あとは難癖つけようが無い感じ?ある意味いい男すぎるのが玉に瑕か。イジれないのは私的につまらないわ」
「デター!ドS発言」
「女王様とお呼びっ」
「じゃ女王様。これ頼んでいい?それとこれとこれも」
「あれだけ呑んで食べてここで更にってドンダケ?」
「始発まで時間はたっぷりあるしぃ。こっからは土日の3食と月曜の朝食分」
「くぅ……。残したら罰金ね。よし!選べ。私は同じのおかわりで」
メニュー選びに没頭してる安川さんを横目で見て、いつの間にか残り僅かになったジョッキを空にし、吉冨さんがドンとテーブルに置いた。
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