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しおりを挟むアイエス・ミカエラはミカエラ公爵家において長女として生をうけた。
その美貌は母親譲りでホシノ王国で一番と言われているほどだった。
品行方正で気品に満ちている。
そんな誰もの憧れの対象になっているのが、アイエスであった。
「今日はタナトス様に会えるのでしょうか」
アイエスは朝日の眩しい、窓側に置いてある机に向い、パタンと読書中の本を閉じる。
タナトス様、という方は彼女の婚約者だ。
彼もまた立派な殿方であり、勉学に優れ、武術の才にも満ち満ちていた。
顔つきはとても優しく、慈悲に溢れている。
正義感が強く、少しの怠惰も許さない。
自身を強く律する方でもあった。
そのような全ての殿方の鏡ともいえるようなタナトス様。
アイエスはタナトス様と婚約を交わしたことが、なによりも自身の幸せなのでした。
もう何もいらない。
タナトス様との時間がなにも奪われることがなければ、もうそれでいい。
ただそれだけで……
「本を読んでいても、ちっとも集中できないわ」
アイエスは椅子をすっと引き、机から離れる。
「少しだけ気分転換にお散歩でもいこうかしら」
アイエスはそういうと、メイドを呼びつけ、お出かけの支度をさせました。
「あなたも来たらどうかしら」
「はい、もちろんですとも」
こうしてアイエスはメイドの一人を傍に仕えさせ、カンビシャ湖から吹く風をいっぱいに浴びながら、散歩をしに外へ出るのだった。
カンビシャ湖の、太陽を反射する景色がとても美しくうつる、今朝のミカエラ公爵領。
そこには何もかわることのない、美しい自然があったのでした。
「ほらっはやくっ!!」
「お嬢様! すこしだけお待ちになってください。あまりそのようにはしゃがれてはなりません……」
季節は夏。
まだそのときの私には、ただの夏でした。
今までの、そのままの夏だったのです……
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