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第十一幕

414.我が子の成長を実感するお茶会

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 ヴィンフリーゼの淹れたお茶を飲みながら、フリードリヒのマナーを確認する。基本的な部分は終わっているはずよ。この年齢で最低限のマナーが身についていなければ、厳しく躾けないといけないもの。

 最上級の教師を選んだ結果は、優雅にカップを口元へ運ぶ所作に出ていた。テオドールも厳しかったはずだし、ある意味当然ね。私との食事でも、特に不愉快に思わなかったのだから、問題ないわ。

 パトリツィアは……そうね、注意するところばかりだけど。この年齢なら一般的に問題ない範囲かしら。王族と考えれば厳しく教えるべきだけど、この子は跡取りではないわ。次女でいずれ国内貴族に嫁に行く。政略結婚する必要もないから、幸せな結婚をすればいい。

 まあ、国内貴族といっても……いずれすべての国が併合されて国内になる予定だけれど。来年くらいからマナーの教師をつけましょう。

「とても美味しく出来たわね、立派よ。リゼ」

「本当? ありがとう、お母様」

 プライベートな時間は砕けた口調で構わない。この切り替えの早さは私に似たのかしら。察しもいいし、女王として必要な資質は十分だった。幸せなことよ。女王になる運命に生まれた子に、その才能がないほど残酷な事実はないわ。

 ヴィンフリーゼは嬉しそうにお茶に口をつける。ああ、そろそろ毒殺への対処方法を教えないといけないわね。これはテオドールが向いているかしら? 今までは周囲に毒見役を用意していた。今後は自分で用心させないと。

 娘や息子とのお茶会でも、いろいろと考えてしまうわね。腰の痛みに大きく息を吐いて、姿勢を直した。公爵夫人としてお茶会に参加したエルフリーデが、そっとタオルの位置を直す。

「ありがとう、エルフリーデ」

「バルシュミューデ公爵夫人って呼ばなくていいの?」

 フリードリヒが首を傾げる。いい質問ね。

「もし私が彼女をバルシュミューデ公爵夫人と呼ぶ場面なら、公の場所よ。フリードリヒは、私に「陛下はこう呼ばないのでしょうか?」とお伺いを立てないといけないの」

「あ、そっか」

 納得してくれたみたい。私的なお茶会というのもあるけれど、もし公式名称で呼ぶ会場なら、フリードリヒの方が先に引っかかるわ。

 手を汚しながら潰した焼き菓子を食べるパトリツィアは、ヴィンフリーゼに手を拭いてもらっていた。よく見たら顔も髪も付いてるわよ。弟妹の世話を焼くヴィンフリーゼは、今年で十ニ歳になった。フリードリヒは二つ下、パトリツィアはあと二ヶ月で二歳ね。

 ある意味、理想の出産スケジュール――テオドールの管理が怖い。男女の産み分けもそうだけど、それなりに夫婦生活があるのに、生まれるタイミングは狙ったみたいだった。いえ、絶対に狙ってる。

 ヴィンター国のハレムは滅んでしまったけれど、今のうちに産み分けやタイミング調整の技術は残しておきたいわ。帰ってきたら根掘り葉掘り聞き出しましょう。ふふっ、今頃くしゃみをしてるんじゃないかしら。
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