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7話

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「びっくりした……うん、びっくりした……」


 翌日、私はもぬけの殻になっていた客室から出て来た。

「あ、フィリア様! おはようございます」

「おはよう、エレナさん。ライマ様は何処に行ったか知らない?」


 私に話しかけてくれたのはメイドのエレナさんだ。私より少し歳上なのでお姉さんみたいな存在かな? 私は男爵令嬢でしかないのに、しっかりと仕えてくれている。感謝しかできなかった。


「ライマ王子殿下でございますか? 既に食堂で朝食をお取りいただきました」

「あ、そうなんだ。流石は宗主国の王子殿下……行動が早いわね」

「うふふ、そうですね。ああ、それからフィリア様」

「はい? なにかしら?」


 私も食堂に向かおうと思った時、後ろからエレナさんが呼び止めた。一体、何の用事かしら?

「ライマ王子殿下のことですが……」

「ええ、どうかしたの?」

「はい。王子殿下は宗主国の王子殿下という言葉があまり好きではないかもしれませんよ? そのフレーズは使われない方が良いかと思います」

「ああ、そうなんだ。わかったわ」

「はい。よろしくお願いいたしますね」


 宗主国の王子殿下というフレーズはあまり好まない……か。それはどういう意味でだろうか? やっぱり、ライマ様くらいの立場になると人民との関係性を気にするのかしら? あまり自分を天上の人物とは捉えたくないみたいな感じ?

「でも、宗主国の王子殿下という言葉は事実なんだけどな……」


 私は独り言を言いながら食堂に向かっていた。マルスカール王国は表向きは、レヴァント王国の友好国ではあるけれど実態では宗主国の立場にある。レヴァント王国はそれくらい立場が弱いのだから。ライマ様が好んでいない理由が今一つ分からなかった。

「まあ、深く考えても仕方ないわね」


 私は気持ちを切り替えて食堂の扉をノックする。


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「やあ、フィリア。本日も綺麗だよ」

「ライマ王子殿下……いきなりどうしたんですか?」

「ははは、これは冗談ではないぞ?」

「あ、ありがとうございます……」


 ライマ様の態度は相変わらずだった。私の初恋の相手……元気をくれる相手でもあったわけで。彼は朝食を食べ終えて食後のコーヒーブレイクを楽しんでいるところだったのだ。

 私も遅めの朝食に入ることにする。

「ああ、そうだ……フィリア。今日は時間あるのかな?」

「時間ですか?」

「ああ」


 今日の予定は些末なものが多かったはずだ。ライマ様のために時間を取ることは十分に出来た。

「大丈夫ですけど……どうしましたか?」

「いや……レヴァント王国とマルスカール王国の共同で行われるレジャー施設の開発があるのだが、その視察に付き合って欲しいと思っただけだよ」

「視察ですか? はい、私でよろしければ……」

「ありがとう、フィリア。どうやら、噂のオムニ殿も来るらしいからな。この際、見ておこうと思ったのだよ」

「ああ、そういうことですか」


 昨日からライマ様はオムニ様に興味深々のようだった。これが私の今後に大きく影響しようとは……この時の私は全く考えていなかったわけで……。
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