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8話 オムニ視点

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(オムニ視点)


「オムニ様良かったんですの? フィリアと別れて私と付き合うなんて……」

「構わないよ、シズハ。私はお前のことを愛しているからね」

「ふふ、ありがとうございます。でも、悪い人ですわ……私と一緒になる為に男爵令嬢のフィリアとは別れたのでしょう?」

「まあ、間違ってはいないが……」


 私の部屋の目の前には美しい伯爵令嬢のシズハがいた。私は彼女と付き合う為にフィリアとは別れたのだ。


「最初から私を選んでくださるのなら、わざわざ男爵令嬢と付き合う必要なんてなかったのでは? 手間がかかりますわ」

「伯爵と言う立場になると色々と面倒なんだよ」

「そうなんですの?」


 シズハには分からないだろうが、伯爵になると対外的な面子というのも大事になってくる。パーティーなどでの周囲の貴族との連携は当然として、婚約者を得るにしても色々と根回しが必要なのだ。

 私としては伯爵令嬢であるシズハを最初から婚約者にしても問題はなかった。しかし、ただ単に彼女を婚約者にするのでは普通過ぎるというものだ。私の立場を最大限に引き上げる為にはここに一工夫が必要になってくるのだ。


「シズハと結果的に付き合えて良かったよ。やはり、男爵令嬢と付き合うのは無理があるからな……」

「ふふ、そうですわね。やはり伯爵ともあろうお方はそれ相応の人と付き合う必要がありますわ」

「ああ、そうだな」


 シズハの外見は美人ではあるが、フィリアには及ばないと言えるだろう。そういう意味では彼女のレベルは非常に高かった。パーティーなどでフィリアを婚約者として紹介できればそれは別の意味で自慢になったのだ。

 私はフィリアの身持ちがもう少し柔らかければ、そのまま付き合っても良かったと思っている。それほどに彼女は魅力的だったからだ。だが、彼女は典型的な貴族令嬢だった。結婚が正式に行われるまで処女を貫き通す……古い慣習に囚われている人物だったのだ。

 身体の関係になるのは随分先になる……それでは、私の性癖を満たすことはできなかった。だからこそ私はシズハを選んだのだ。彼女とは既に肉体関係にある。肉体的な意味合いではフィリアは非常に惜しかったが……致し方あるまい。

 伯爵と言う立場で男爵令嬢を婚約者に選んだ……この事実は私の評価を上げるきっかけになるはずだ。フィリアにはその犠牲になってもらうことにした。私の立場を引き上げてくれる存在としてフィリアは非常に役立ってくれた。身体の関係になれなかったのは惜しいがまあ良いだろう。

 トントンの収益という収益を考えれば、むしろ+になるかもしれないな。フィリアほどではなくとも美しいシズハを迎え入れられたのだから。
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