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2話 振られた後で
しおりを挟む「もう……最低。どうしてあんな人間に尽くしたいなんて思ったのかしら……?」
私は自分の屋敷に帰った後、激しく後悔をしてしまった。セルンがあんなひどい人間だと見抜くことができなかったのだから……これは私の落ち度でしかない。シェール家の名にも傷を付けてしまった。
「セルン殿は最初はやさしく振舞っていたからな。お前が騙されてしまうのも無理はない」
「お父さん……でも」
「でもではない。騙されたことを悔やんでも仕方ないぞ?」
「う、う~~ん……そうかもしれないけれど……」
父であるアルバ・シェールが私を慰めてくれていた。現在、私は自分の部屋に入っている。私の落ち度……子爵令嬢でしかない為に、結婚を焦っていたというのもあるかもしれない。私は18歳だからまだ遅いというほどではないけれど、早い人は14歳くらいで婚約者を見つけているし。
子爵家というのも絶妙に婚約者を見つけにくい環境ではあった。だから、セルンが最初、結婚をしたいと言ったときは非常に嬉しかったわけで。
「私はこの後、どうすればいいのか……それがわからなくて」
セルンは悪い噂を流すと言っていた。一般の貴族社会を見ればより権力の大きな家系の言うことを信じるのが通例だ。私が何を言っても信じてもらえないかもしれない。
「セルンは私にとって不利な噂を流しているに違いないわ。そんなことになったら、新しい縁談なんて果たしてくるのか……それが心配で」
ただ振られただけならまだなんとかなることはある。でも今回は、悪い噂まで流されるのだ。そうなっては私程度の力ではどうしようもなかった。お父さんの力に頼るとは言っても限界がある。
「うむ、心配なのはよくわかるぞ、リオナよ。まずお前は心の静養をするべきだろう。後のことは私に任せておけば良い。決して悪いようにはせぬ」
「お父さん……ありがとう」
お母さんは小さい頃に亡くなってしまった。それからはただ一人の身内だ。実際には親戚はいるけれど、それほど深い関係というわけではない。そんなお父さんがここまで言ってくれるのだから信じないわけにはいかなかった。
「ありがとう、お父さん。お父さんのこと信じているから」
「ああ、ありがとうリオナ。そう言って貰えて私はとても嬉しいよ。早速、私の交友関係を駆使してみよう」
「……?」
あまり意味が分からないところだった。一体、お父さんは何をしようとしているのかしら? まさかセルンに対して何かをしようというわけではないだろうし。セルンの父親はオメガ王国の中でも有名な伯爵家の人間だ。そんな人間の怒りを買ってしまったら、私の家系はひとたまりもない。
無茶なことをしないといいけれど……私は少し心配になってしまった。
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