1 / 18
1話 天国と地獄
しおりを挟む「済まないがアメリア……私とは別れてもらう」
「えっ! どういうことですか……?」
「あははははっ! 姉さま、聞いた通りよ。ラニッツ様は私が貰うから」
全く意味が分からなかった。なぜ妹のカリファが私の婚約者の隣に立っているのか……なぜ、ラニッツ・ポドールイ公爵を「貰う」などと言っているのか……全然理解出来ない。
「カリファ、意味が分からないわ。そもそもなぜ、この場所に貴方が居るの? ここはラニッツ様の部屋でしょう?」
「何言ってるんですか、姉さま? 今日からこの部屋は私とラニッツ様の部屋になるんですよ? ね、ラニッツ様」
「うむ、まあそういうことだな。悪く思わないでくれ、アメリア」
「そ、そんな……ラニッツ様!」
私は部屋中に響くくらいの音量で、彼の名前を叫んだ。ラニッツ様やカリファは心底うるさそうにしていた。
「うるさいわよ……姉さま。そんなにヒステリックにならないで頂戴」
「カリファ……どの口が言っているのかしら? ラニッツ様と浮気をしておいて!」
「浮気だなんて人聞きが悪いわよ……ねえ、ラニッツ様?」
「そうだな。ただアメリアは私の隣に立つ人物ではなかったということだ。やはり、私の隣に立つ人物はカリファくらいの美人でなければな」
そんな……やはりこれは浮気だったのか。二人ともそれを認めているようなものだ。同時に私の容姿が足りていないことも、さりげなく言われたし……。
「アメリア……そういうわけでお前とは婚約破棄をする。今すぐ荷物を纏めて出て行くんだな」
「ラニッツ様……」
最早、この方には何を言っても通じないだろう。そう確信出来る程に彼の私を見る表情は冷めきっていた。そんな……せっかく公爵様と婚約出来たというのに。妹に獲られてしまうなんて……私は人生の地獄を見た気がしてしまった。
-----------------------
「アメリア……出来れば私と、婚約して欲しい」
「ぜ、ゼラスト様……それは……!」
ラニッツ様と婚約破棄になってからしばらく経過した時、以前から交流のあったゼラスト・ファーブセン第一王子殿下が屋敷を訪ねて来たのだ。リンバーク侯爵家、始まって以来の衝撃的なことかもしれない。それは言い過ぎかな?
でも、ゼラスト様がおっしゃったことはそれにも比肩するものだった。
「こ、婚約ですか……? 私との婚約をゼラスト様が望まれていると……?」
「そういうことだ……前から君のことは気になっていた。それとも、私では迷惑だろうか?」
「そ、そんなことはありませんが……」
なんと答えて良いのか分からなかったけれど、これは天国と言えるのかもしれない。少なくとも、婚約破棄をされた時と比べれば天国に該当するのは間違いないだろう。
「ゼラスト様、私でよろしいのでしょうか?」
「ああ、君以外に考えられない」
「畏まりました、是非、お受けさせてください!」
「ありがとう、アメリア」
こうして私はゼラスト第一王子殿下と婚約を果たすことになった。当然、お父様達が断るはずもなく順調に進んでいくことになる。私は短期間の間に天国と地獄の2つを味わったのだった。
152
あなたにおすすめの小説
【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します
hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。
キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。
その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。
※ざまあの回には★がついています。
【完結】婚約者を奪われましたが、彼が愛していたのは私でした
珊瑚
恋愛
全てが完璧なアイリーン。だが、転落して頭を強く打ってしまったことが原因で意識を失ってしまう。その間に婚約者は妹に奪われてしまっていたが彼の様子は少し変で……?
基本的には、0.6.12.18時の何れかに更新します。どうぞ宜しくお願いいたします。
「お姉さまみたいな地味な人を愛する殿方なんてこの世にいなくってよ!」それが妹の口癖でした、が……
四季
恋愛
「お姉さまみたいな地味な人を愛する殿方なんてこの世にいなくってよ!」
それが妹の口癖でした。
従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです
hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。
ルイーズは伯爵家。
「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」
と言われてしまう。
その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。
そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。
虐げられた令嬢は、耐える必要がなくなりました
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私アニカは、妹と違い婚約者がいなかった。
妹レモノは侯爵令息との婚約が決まり、私を見下すようになる。
その後……私はレモノの嘘によって、家族から虐げられていた。
家族の命令で外に出ることとなり、私は公爵令息のジェイドと偶然出会う。
ジェイドは私を心配して、守るから耐える必要はないと言ってくれる。
耐える必要がなくなった私は、家族に反撃します。
私から婚約者を奪うことに成功した姉が、婚約を解消されたと思っていたことに驚かされましたが、厄介なのは姉だけではなかったようです
珠宮さくら
恋愛
ジャクリーン・オールストンは、婚約していた子息がジャクリーンの姉に一目惚れしたからという理由で婚約を解消することになったのだが、そうなった原因の贈られて来たドレスを姉が欲しかったからだと思っていたが、勘違いと誤解とすれ違いがあったからのようです。
でも、それを全く認めない姉の口癖にもうんざりしていたが、それ以上にうんざりしている人がジャクリーンにはいた。
犠牲になるのは、妹である私
木山楽斗
恋愛
男爵家の令嬢であるソフィーナは、父親から冷遇されていた。彼女は溺愛されている双子の姉の陰とみなされており、個人として認められていなかったのだ。
ソフィーナはある時、姉に代わって悪名高きボルガン公爵の元に嫁ぐことになった。
好色家として有名な彼は、離婚を繰り返しており隠し子もいる。そんな彼の元に嫁げば幸せなどないとわかっていつつも、彼女は家のために犠牲になると決めたのだった。
婚約者となってボルガン公爵家の屋敷に赴いたソフィーナだったが、彼女はそこでとある騒ぎに巻き込まれることになった。
ボルガン公爵の子供達は、彼の横暴な振る舞いに耐えかねて、公爵家の改革に取り掛かっていたのである。
結果として、ボルガン公爵はその力を失った。ソフィーナは彼に弄ばれることなく、彼の子供達と良好な関係を築くことに成功したのである。
さらにソフィーナの実家でも、同じように改革が起こっていた。彼女を冷遇する父親が、その力を失っていたのである。
妹に何もかも奪われてしまったと思っていましたが、ちゃんと見てくれる人はいたようです。隣国で、幸せになれるとは夢にも思いませんでした
珠宮さくら
恋愛
ヴェロニカは、妹によって婚約を奪われ、家を勘当されて、国も出て行くことになってしまった。
だが、そんなヴェロニカがひょんなことから王子と婚約することになり、姉妹が真逆の人生を送ることになるとは夢にも思っていなかった。
※全4話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる