妹の婚約者自慢がウザいので、私の婚約者を紹介したいと思います~妹はただ私から大切な人を奪っただけ~

マルローネ

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1話 天国と地獄

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「済まないがアメリア……私とは別れてもらう」

「えっ! どういうことですか……?」

「あははははっ! 姉さま、聞いた通りよ。ラニッツ様は私が貰うから」


 全く意味が分からなかった。なぜ妹のカリファが私の婚約者の隣に立っているのか……なぜ、ラニッツ・ポドールイ公爵を「貰う」などと言っているのか……全然理解出来ない。


「カリファ、意味が分からないわ。そもそもなぜ、この場所に貴方が居るの? ここはラニッツ様の部屋でしょう?」

「何言ってるんですか、姉さま? 今日からこの部屋は私とラニッツ様の部屋になるんですよ? ね、ラニッツ様」

「うむ、まあそういうことだな。悪く思わないでくれ、アメリア」

「そ、そんな……ラニッツ様!」


 私は部屋中に響くくらいの音量で、彼の名前を叫んだ。ラニッツ様やカリファは心底うるさそうにしていた。


「うるさいわよ……姉さま。そんなにヒステリックにならないで頂戴」

「カリファ……どの口が言っているのかしら? ラニッツ様と浮気をしておいて!」

「浮気だなんて人聞きが悪いわよ……ねえ、ラニッツ様?」

「そうだな。ただアメリアは私の隣に立つ人物ではなかったということだ。やはり、私の隣に立つ人物はカリファくらいの美人でなければな」


 そんな……やはりこれは浮気だったのか。二人ともそれを認めているようなものだ。同時に私の容姿が足りていないことも、さりげなく言われたし……。

「アメリア……そういうわけでお前とは婚約破棄をする。今すぐ荷物を纏めて出て行くんだな」

「ラニッツ様……」


 最早、この方には何を言っても通じないだろう。そう確信出来る程に彼の私を見る表情は冷めきっていた。そんな……せっかく公爵様と婚約出来たというのに。妹に獲られてしまうなんて……私は人生の地獄を見た気がしてしまった。


-----------------------



「アメリア……出来れば私と、婚約して欲しい」

「ぜ、ゼラスト様……それは……!」


 ラニッツ様と婚約破棄になってからしばらく経過した時、以前から交流のあったゼラスト・ファーブセン第一王子殿下が屋敷を訪ねて来たのだ。リンバーク侯爵家、始まって以来の衝撃的なことかもしれない。それは言い過ぎかな?

 でも、ゼラスト様がおっしゃったことはそれにも比肩するものだった。

「こ、婚約ですか……? 私との婚約をゼラスト様が望まれていると……?」

「そういうことだ……前から君のことは気になっていた。それとも、私では迷惑だろうか?」

「そ、そんなことはありませんが……」


 なんと答えて良いのか分からなかったけれど、これは天国と言えるのかもしれない。少なくとも、婚約破棄をされた時と比べれば天国に該当するのは間違いないだろう。

「ゼラスト様、私でよろしいのでしょうか?」

「ああ、君以外に考えられない」

「畏まりました、是非、お受けさせてください!」

「ありがとう、アメリア」


 こうして私はゼラスト第一王子殿下と婚約を果たすことになった。当然、お父様達が断るはずもなく順調に進んでいくことになる。私は短期間の間に天国と地獄の2つを味わったのだった。
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