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21話

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 リュークはその後も淡々と話していた。


「シエナ様に対する傷付けずに痛みだけを与える打撃……私はあれを見て背筋が凍り付きました。あれが貴族令嬢の間で行われているいじめなのかと……」

 嘘もここまで的確に淡々と言えるのは流石としか言いようがないわ。リュークは完全に妄想で言葉を出している。全てが嘘で塗り固められたことだったからだ。でも、この場でそれは真実として語られているわけで……。


「決定的だな、ミリー。これで決定的になったのだ。リュークの目撃証言で全てが決まったと言えるだろうか。お前の罪は非常に重いと言うこともな! 裁判所できっちりと悔い改めてもらうぞ! 覚悟しておけ!」

 裁判所は罪の審議を行うところであって、悔い改める場所ではないと思うけれど、そこを突っ込んでしまうとさらに怒らせそうね。私はもうボイド様の言いなりになるしかないの? そんなはずは……。


「お兄様、いじめを受けた時の私の声も周囲の使用人が聞いています。それも証拠になるんじゃないかしら?」

「なるほど、それもいいな。まったく、どこまで妹を追い込めば気が済むのか……平然としている神経がわからんよ」

「平然としている……?」

「正しいだろう? こんな場所で自分の罪が確定的になったからと言って、焦って叫び出すこともない。そこはお前の焦らない性格がいい方向に出たのかな?」

 いい方向ってそんなわけないでしょ? 何を言っているのよ、この人は……私はこれだけ焦っているというのに。自分の罪を確定的にされて焦らない人間なんているわけない。さらにそれが嘘の罪ならなおさらだ。


「裁判所で戦うことになるのか……しかし、ボイド殿。自分達の意見ばかりが通ると思われても困るんだが」

「ルシエド……様。なぜですかね」


 ちょっと敬称を付けるか迷ったボイドだった。

「私はミリーがシエナをいじめていないと確信している。彼女はそんな人間じゃないし、彼女の発言も信用に値するものだからだ。まったくの嘘を吐いているのはどっちなのか、もう一度よく考えた方がいいぞ。ボイド殿、あなたは利用されているのだから」

「利用されている? 馬鹿な……なぜ私が利用される必要があるんですか」


 ボイド様はシエナ様に顔を向けて笑っていた。彼を利用しているのは、目の前の最愛の妹なんだけどね……。これはボイド様のためにも真実を追求する必要があるわ。


「……もう、無理です……」

「ん? リュークどうかしたの?」


 そんな時だった。さっきまでは能面のような存在だったリュークが苦しみだしたのは。いえ、苦しみだしたというか耐えられなくなったと言うべきかしら?
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