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21話 カインツからの誘い その2
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私達は貴族街から降りて、下界と呼ばれる場所に移動することになった。カインツさんとの待ち合わせ場所があるのだ。
貴族街は標高が高い台地に作られている。そのため、一般の街の見学は下界と呼ばれるところまで降りなくてはならない。
「よう、待たせてしまったか?」
「カインツさん。大丈夫ですよ、ほとんど待っていません」
「そうか、それならいいんやけど」
本日はアルバート様と時と同じようにパメラ屋を休みにしている。不定休にしているのでなんとか調整したいところだけど。
「それではカインツ殿。護衛の方をお願いします」
「ああ、任せてくれや」
カインツさんと私の護衛が言葉を交わした。護衛役の交代を意味している。自称凄腕冒険者のカインツさんがこの先は護衛役になってくれたわけだ。
「お嬢様もお気を付けて」
「ありがとう、シャザ」
シャザというのは私の護衛役を務めてくれている人だ。屋敷では執事の役割もこなしている。カインツさんのことは知っているようで、彼なら安心です、と言っていたかな。私に挨拶をしてシャザは離れて行った。
「んじゃ、さっそくロークタウンに行こか。ここからやったらそこが一番近いし」
「そうですね、行きましょうか」
ロークタウンは王都の城下町であり、王家の直轄領でもあった。下界の中でも賑わっている街のはずだ。市場調査をするにはちょうど良い街というわけである。
-------------------------
「わわ、すごい人ですね……」
「ロークタウンは各地から人が集まる街やからな」
ロークタウンに入ってからというもの、人が一気に増えたような気がした。貴族街よりも人通りは多い印象だ。カインツさんから離れてしまったら大変かもしれないわね。
「おっと」
「あ、すみません……!」
大柄の人にぶつかってしまった。すぐに謝ったけれど、向こうは私の顔をマジマジと見ている。
「謝って許される問題じゃないんだよな、嬢ちゃん。名前は?」
えっ? 私はなんで名前を聞かれているんだろうか? 咄嗟のことで警戒したけれど答えてしまった。
「アリッサ・マクレガーと言いますけど……」
「なんだか随分上品な名前だな。その格好からしてまさか、貴族のお嬢さまか?」
「……」
「へへへ、図星みたいだな」
私は無言を貫いたけれどその男にはバレバレだったようだ。これはひょっとして因縁をつけられているのだろうか?
「俺と一緒に飲もうぜ。そうしたらぶつかった件はチャラにしてやるよ」
やっぱりだ……ナンパにしては柄が悪い気がするし。どうしよう……こういうところは温室育ちのデメリットが出てしまっている気がする。貴族街ではまずこういう場面には遭遇しないし……貴族の住んでいるところは色々と保護的な環境なのだ。
「困ります……」
「おいおい、ぶつかっておいて逆ギレかよ? いいから一緒に来いってんだよ!」
そう言いながら男は私の腕を掴んだ。これは相当にマズい……そう思っていた時、すぐに離された。
「そこまでや、兄ちゃん。それ以上はあかんで」
カインツさんが男の首を掴んでいたのだ。男はたまらず手を離したというわけで。
貴族街は標高が高い台地に作られている。そのため、一般の街の見学は下界と呼ばれるところまで降りなくてはならない。
「よう、待たせてしまったか?」
「カインツさん。大丈夫ですよ、ほとんど待っていません」
「そうか、それならいいんやけど」
本日はアルバート様と時と同じようにパメラ屋を休みにしている。不定休にしているのでなんとか調整したいところだけど。
「それではカインツ殿。護衛の方をお願いします」
「ああ、任せてくれや」
カインツさんと私の護衛が言葉を交わした。護衛役の交代を意味している。自称凄腕冒険者のカインツさんがこの先は護衛役になってくれたわけだ。
「お嬢様もお気を付けて」
「ありがとう、シャザ」
シャザというのは私の護衛役を務めてくれている人だ。屋敷では執事の役割もこなしている。カインツさんのことは知っているようで、彼なら安心です、と言っていたかな。私に挨拶をしてシャザは離れて行った。
「んじゃ、さっそくロークタウンに行こか。ここからやったらそこが一番近いし」
「そうですね、行きましょうか」
ロークタウンは王都の城下町であり、王家の直轄領でもあった。下界の中でも賑わっている街のはずだ。市場調査をするにはちょうど良い街というわけである。
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「わわ、すごい人ですね……」
「ロークタウンは各地から人が集まる街やからな」
ロークタウンに入ってからというもの、人が一気に増えたような気がした。貴族街よりも人通りは多い印象だ。カインツさんから離れてしまったら大変かもしれないわね。
「おっと」
「あ、すみません……!」
大柄の人にぶつかってしまった。すぐに謝ったけれど、向こうは私の顔をマジマジと見ている。
「謝って許される問題じゃないんだよな、嬢ちゃん。名前は?」
えっ? 私はなんで名前を聞かれているんだろうか? 咄嗟のことで警戒したけれど答えてしまった。
「アリッサ・マクレガーと言いますけど……」
「なんだか随分上品な名前だな。その格好からしてまさか、貴族のお嬢さまか?」
「……」
「へへへ、図星みたいだな」
私は無言を貫いたけれどその男にはバレバレだったようだ。これはひょっとして因縁をつけられているのだろうか?
「俺と一緒に飲もうぜ。そうしたらぶつかった件はチャラにしてやるよ」
やっぱりだ……ナンパにしては柄が悪い気がするし。どうしよう……こういうところは温室育ちのデメリットが出てしまっている気がする。貴族街ではまずこういう場面には遭遇しないし……貴族の住んでいるところは色々と保護的な環境なのだ。
「困ります……」
「おいおい、ぶつかっておいて逆ギレかよ? いいから一緒に来いってんだよ!」
そう言いながら男は私の腕を掴んだ。これは相当にマズい……そう思っていた時、すぐに離された。
「そこまでや、兄ちゃん。それ以上はあかんで」
カインツさんが男の首を掴んでいたのだ。男はたまらず手を離したというわけで。
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