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2 第一王女

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タッタッタッタッ

追いかけられてる夢を見る。
わたしは必死で逃げる。
周りの従者が、わたしを庇って次々に死んでいく。
ある部屋にポツンと小さな人影があった。

「…お姉さま?」

手を伸ばす。
届いたのに、透明でさわれない。

「お姉さまっ!」

心配そうな姉の顔。
姉は霧のように消えた。



バクバクバクッ…
鼓動が早い。
薄暗く、ふくろうの「ホッーホッー」という鳴き声がした。
まだ夜…

「はあああ」

大きなため息をつく。
虚ろうつろし、姉の気配がしないことにまた絶望した。
頭を抱え、また目を閉じよとする。

「やあ」

静かに夜空に響いた。

「うわあッ!!」

飛び起きる。
王子はわたしの声で少し驚いたようで、目を丸くしたのち可笑しそうに「クスッ」と笑った。

「そんなに驚かなくても…
ここにぼくが来ることぐらいわかってただろ?」
 
美しい顔が月夜に照らされる。
心做しか冷たく見えた。
わたしは息を「ふぅ」と付き、また夜空を見上げる。
姉がいなくて寂しいからか、「綺麗ね…」と声を出していた。
「…そうだね。」と返答が来る。

大きな月で、また姉のことを思い出した。
姉と見たこと、楽しかった思い出…
泣きそうになった。

慰めようとしてか、近くに寄ってくる。
それにビクッと反応した。

「…ぼくのこと嫌い?」

不安そうに言われた。

「いいや…」

暗い声で言う。
自分の気持ちがよくわからなかった。

「…遅れてごめんね。」

優しく笑った気配。
わたしは珍しい気がして、顔を見る。
偽物の笑顔かもしれないと思った。

「全然…かまわないわ」

無難なことを言う。
今日がわたしの命日にならないように。
内心、心を探りながら言わなきゃいけないことに辟易した。
心は遠く、話し続ける。

姉が死んたのなら…もう、生きてる意味があるんだろうか?

顔を傾け、綺麗な顔にジッと見られる。
その時はもう、心ここにあらずで、気づけずにいた。

「大切にされてるね。」

急に話が変わった。
王子は、「クスクス」と子どものように笑う。
わたしは「…?」と思い王子を見る。
王子はヒョイと高い横棒の上に乗った。
目の前に座った。

「ここに来るのが遅くなったわけだよ。
女王様と話をしていたんだ。
警告されたよ。
第2王女を絶対に傷つけるな、とね。
そしたらただじゃ置かない…とも言われた。冷徹な表情で。」

わたしの顔色を、ゆったり見ながら言う。

「…?そう。まあ母親だからね。心配してくれてるんでしょう。」

見てくる目が離れなかった。
なんの意図があるのかまったく読めない。
わたしは怪訝な顔をして、その王子を見た。

「きみは現時点で女王にとても愛されている。跡取りのはずの第一王女よりもずっとね。」

寝起きでボッーとする。
なに?なんの意図が…
……母が姉を殺したと言いたいのだろうか?

ゆっくり王子を振り返る。
王子は至近距離にいた。
その瞳は好奇心と…冷たい感じのもの。
美しい顔で嫌悪感が芽生えにくい。
わたしは少し離れた。

「母は…そんなことしないと思うわ」

静かに言う。

「…姉が恋しい?」

その言葉に心臓が凍る。
なにか知ってるのかと。

「…ええ、そりゃそうよ。」

わたしはうつむきながら答えた。

「そっか。…探してあげようか?」

ニコッとほほえむ美しい王子。
わたしはバッ!とその王子の顔を見る。
王女の強い眼差しに、僕は混乱した。
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