公爵家が没落したのでお別れするはずが、元お嬢様が当然のように実家についてきた
急進的な改革を断行する若き皇帝に婚約を破棄され、名門ハイデルベルク公爵家は没落した。
未来の皇后となるはずだったグロリアお嬢様は、婚約者も財産も身分も、住む家さえも失った。
そして私、クラウス・アルウェルニ(28歳)も、ついでに職を失った。
仕方がないので実家に帰ろうと思ったのだが――。
「では、お嬢様。お元気で」
「何を言っているの。行くわよ」
「……どちらへ?」
「あなたの家に決まっているでしょう」
私はもう、あなたの使用人ではないのですが。
こうして、再就職活動中の無職男と、元公爵令嬢の奇妙な同居生活が始まった。
家事はできない。物価は知らない。世間の常識も通用しない。
それなのに、没落したという自覚だけは一向に芽生えず、態度は相変わらず公爵令嬢のまま。
おまけに私の就職活動は、どうにも上手くいかない。
仕事は決まらない。お嬢様は帰らない。紅茶の好みだけは、どちらも譲らない。
そんな騒がしい日々を送るうちに、二人の関係は少しずつ変わり始めて――。
これは、何もかも失ったのに偉そうなお嬢様と、何も望んでいないのに面倒事ばかり引き受ける元使用人の物語。
主従関係は終わった。
けれど、どうやら二人の縁は、まだ終わっていないらしい。
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