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第三章

子供の悲哀

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    リゾート工事の基礎部分が終われば、後は計画をそれぞれの職人に投げて終わり。
    工事完了後、リゾートで働く人員の教育も、計画段階は私も参加したけど、実際に教育するの人は別に雇っている。

    日本の常識レベルの知識はあっても、専門知識なんてない。細かい部分はこちらの専門家に及ばないのだから、そこは専門家に任せるしかない。

    「だから、その間に私は私にしか出来ない事をするのよ!」

    リゾートに人を呼び寄せる為の宣伝。
    パンフレットを作り、大陸に出店した料理店やスイーツのお店に置くとか。

    「……一番効率的なのは社交界で噂を流すことなんだけど」
    私、まだ社交デビューしてないんですよね、子供だから。て言うか社交なんて面倒臭いし。だけどこんな時はそれが足枷になる。
    「せめて親が協力的なら……」
    前世で読んだと思われるラノベの、社交的で主人公に優しいお母様でも居れば悩む必要なかったのにね。

    まぁ、無いものを嘆いても仕方あるまい。
    無いなら在るものを使うまでだ。

   「ねぇ、私の婚約者様とそのご両親に贈り物をしたいんだけど、どうしたら良いかしら?」
    と、家令は仮の姿の影さんに尋ねてみた。

    ……私がこの婚約を好意的に見ていると思われるリスクがあるからこれまで選ばなかった手段だけど、せめて最初の一組を呼ばない事には口コミも広まらない。

    その最初の一組が王族なら箔付けにもなる。

    まずはご機嫌伺いに島の名産品でも心付けとして差し入れる。その為に。ウチのパイプ役スパイに尋ねた。

    「……定期報告の際に共に送っておきます」

    家令は疲れた顔で了承してくれた。
    私はグレストに依頼して、贈答用特産品セットを用意して貰う。

    「仮にお嬢様の婚約者様がいらした場合、あの無自覚無礼男は何処かに閉じ込めておきましょう。ノア様は寛大にお許し下さいましたが、普通はお咎めを受けるでしょう。彼自身の為にも王族の前に出してはなりません」
    「……そうね。本当なら私に対しても許されないんだけど。そろそろちゃんと教育しておかないと、うっかり何かの拍子にウチの家族がこの島にやって来る気になったときに困りそうだわ」

   「――お任せください、流石に一日二日では無理でしょうが、きっちり躾ておきます」
   「……ほ、程々にね」

    ――実際。王族が利用し他貴族が来るようになって話題になれば、流行りに乗り遅れたくないあの人達も来るだろう。

    そのリスクを覚悟してでも。

    「私はお飾りの貴族の奥方になんてなりたくない。政略結婚はまぁ仕方ないにしても、領政から離れたくない」
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