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8.奴隷紋
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"奴隷紋"とは…本当に厄介な品物だ。
『奴隷は奴隷らしく、一生ご主人様の命に従っていろ』
奴隷紋を付けられた際に、よく奴隷に告げられる台詞だ。
意味は、そのまま。
奴隷紋は、解除しないかぎり付けた人間を一生主人として、命令を聞き続けることになる。
そして、厄介な点が一つ。
それは、主人が側に居なくても命令は絶対と言う事だ。
要するに、今アイルは気を失ったままだが、目を覚ました時に『騎士を殺せ』と主人から命令が下っていれば、我々はアイルと戦わなければならない。
しかもそれは、アイルの気持ちとは関係なく発動される為、どんなに口で「殺したくない」と言ったとしても身体は動き続けてしまう。
だから奴隷紋がある限り、アイルは…
王宮の地下牢に収容される。
これまで、共に切磋琢磨してきた仲間を
身体を張って情報を掴んできた仲間を
拷問されて傷ついた仲間を
誰が、牢屋に入れたいだろうか。
誰もが、助ける事ができない己の無力さに唇を噛み締めていた。
「…っヘ、ヘマしてすいませんっ。団長っ」
「「「!?」」」
「アイル!気がついたのかっ!!」
弱々しい声ではあるものの、アイルの意識が戻り最初に口にしたのは己の失態を詫びる謝罪だった。
最後の連絡の際に、騎士団とは気づかれなかったのだが、外部と連絡をとっていた事に気づかれてしまい拷問を受けたとの事だった。連絡の相手が騎士団だとバレてしまえば、計画が全て水の泡となる。その為、アイルはどんなに酷い傷を負っても最後まで口を割らなかった。
例え、奴隷紋を付けてやる!と、脅されていても…
アイルは、手柄をあげたい!と言って自ら潜入調査に志願した。
そして、それを了承した団長のグレンは確かに聞いていた。
『幼馴染にプロポーズしたい』と、言ったアイルの気持ちを…
だからこそ、アイルに手柄を立てさせ、自信を持ってプロポーズに向かえるよう送り出したかった。
皆んなの前では、明るく元気に受け応えをするアイル。
『自分の詰めの甘さが原因なんで、皆んな気にしないで下さい。
万が一の事があれば、取り返しがつかなくなるんで、俺のことは地下牢に放り込んでおいて下さい。しゃーないっすよ…ははっ』
誰よりも悔しくて仕方がないはずなのに、アイルは誰よりも明るく努めようとしていた。
その姿に、誰もが悔しさを滲ませる。
出来る事なら、励ましてやりたい。
『大丈夫だ!安心しろ!すぐに解除してもらえるさ!』
そう、言えたらどんなに良かっただろうか。何の保証もなく、何の力もない自分達ではどうすることもできない。
次第に、声の掛け方すら分からなくなり、室内は静まりかえっていた。
そんな空気を断つ様に、団長であるグレンが声を上げる。
「アイル、目が覚めてよかった。とりあえず、今はゆっくり休め。」と…
そして、詳しい話はまた明日にしよう、と言ってグレンが部屋を出て行ったことをかわきりに、他の騎士達も「ゆっくり休んでくれ」「安静にな」「また、明日くるよ」と口々に声をかけて部屋を後にした。
全員が部屋を出た後、断末魔のようなアイルの悲痛な泣き声が廊下にまで響いていた。
『奴隷は奴隷らしく、一生ご主人様の命に従っていろ』
奴隷紋を付けられた際に、よく奴隷に告げられる台詞だ。
意味は、そのまま。
奴隷紋は、解除しないかぎり付けた人間を一生主人として、命令を聞き続けることになる。
そして、厄介な点が一つ。
それは、主人が側に居なくても命令は絶対と言う事だ。
要するに、今アイルは気を失ったままだが、目を覚ました時に『騎士を殺せ』と主人から命令が下っていれば、我々はアイルと戦わなければならない。
しかもそれは、アイルの気持ちとは関係なく発動される為、どんなに口で「殺したくない」と言ったとしても身体は動き続けてしまう。
だから奴隷紋がある限り、アイルは…
王宮の地下牢に収容される。
これまで、共に切磋琢磨してきた仲間を
身体を張って情報を掴んできた仲間を
拷問されて傷ついた仲間を
誰が、牢屋に入れたいだろうか。
誰もが、助ける事ができない己の無力さに唇を噛み締めていた。
「…っヘ、ヘマしてすいませんっ。団長っ」
「「「!?」」」
「アイル!気がついたのかっ!!」
弱々しい声ではあるものの、アイルの意識が戻り最初に口にしたのは己の失態を詫びる謝罪だった。
最後の連絡の際に、騎士団とは気づかれなかったのだが、外部と連絡をとっていた事に気づかれてしまい拷問を受けたとの事だった。連絡の相手が騎士団だとバレてしまえば、計画が全て水の泡となる。その為、アイルはどんなに酷い傷を負っても最後まで口を割らなかった。
例え、奴隷紋を付けてやる!と、脅されていても…
アイルは、手柄をあげたい!と言って自ら潜入調査に志願した。
そして、それを了承した団長のグレンは確かに聞いていた。
『幼馴染にプロポーズしたい』と、言ったアイルの気持ちを…
だからこそ、アイルに手柄を立てさせ、自信を持ってプロポーズに向かえるよう送り出したかった。
皆んなの前では、明るく元気に受け応えをするアイル。
『自分の詰めの甘さが原因なんで、皆んな気にしないで下さい。
万が一の事があれば、取り返しがつかなくなるんで、俺のことは地下牢に放り込んでおいて下さい。しゃーないっすよ…ははっ』
誰よりも悔しくて仕方がないはずなのに、アイルは誰よりも明るく努めようとしていた。
その姿に、誰もが悔しさを滲ませる。
出来る事なら、励ましてやりたい。
『大丈夫だ!安心しろ!すぐに解除してもらえるさ!』
そう、言えたらどんなに良かっただろうか。何の保証もなく、何の力もない自分達ではどうすることもできない。
次第に、声の掛け方すら分からなくなり、室内は静まりかえっていた。
そんな空気を断つ様に、団長であるグレンが声を上げる。
「アイル、目が覚めてよかった。とりあえず、今はゆっくり休め。」と…
そして、詳しい話はまた明日にしよう、と言ってグレンが部屋を出て行ったことをかわきりに、他の騎士達も「ゆっくり休んでくれ」「安静にな」「また、明日くるよ」と口々に声をかけて部屋を後にした。
全員が部屋を出た後、断末魔のようなアイルの悲痛な泣き声が廊下にまで響いていた。
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